日経クロストレンドの新刊『 コンペ荒らしが実践する生成AI「超」企画術 “問いの技術”で勝ち筋を導く7つの創造ステップ 』は、広告代理店、インターネットメディア、コンサルティングファームにおける著者の経験から、企画という仕事の一連のプロセスに、生成AIをどのように組み込むかを解説。企画の現場ですぐに使えるプロンプトも豊富に紹介しています。本書籍から第2章「アイデアを磨く──企画をとがらせる『仮説破壊』」を抜粋・再編集してお届けします。その第1回。[日経クロストレンド 2026年6月15日付の記事を転載]

ありがちになる原因は「発想」ではなく「磨き方」

 企画者にとって胃の痛い話です。

 しかし、企画が「既視感のある、ありがちなもの」になるのは、発想力が足りないからではありません。磨き方の問題です。第1章で問いを設計し、論点を分解し、視点を拡張したことで、方向性のあるアイデアの種は生まれました。しかし、種はそのままでは企画になりません。

 多くの企画者は、次のようなプロセスをたどります。問いを立て、いくつかの案を出し、現実的なものに整える。この「整える」段階で、企画として人を動かす強さが失われます。

 理由は明確です。リスクを下げたい、反論を避けたい、実現可能性を優先したい。その結果、最も無難な形に収束します。

 この収束は悪ではありません。企画は実行されて初めて価値になりますし、実現可能性は重要です。しかし、何も疑わずに整えるだけでは、企画は「正しいけれど弱い」という状態になります。説明はできるのに選ばれない。会議の場で「ありがち」という評価に落ち着いてしまうのは、この状態です。

仮説を壊すことから始める

 それを脱却するためにやりがちなのが、「足すこと」。機能を足す、ターゲットを広げる、言い回しを良くする。しかし実務で企画の強度を上げるのは、足し算ではなく引き算です。

 そのために必要なのが、一度壊すことです。

 「壊す」とは、ただ企画を否定して終わることではありません。仮説の弱い前提を露出させることです。自分が「当然」と置いている前提を疑い、論点を再設定し、何を捨てるかを決める。そうして初めて、企画は強くなります。

 例えばストーリーの桑田さんの案であれば、「即時可視化は本当に継続につながるのか」「そもそもユーザーは即時性を求めているのか」「可視化が逆効果になる人はいないのか」といった問いが、磨きの入り口になります。企画の弱さは解決策ではなく、そこに至る前提に潜んでいることが多いからです。

生成AIは最高の批評役

 生成AIが批評役として優れている理由は、感情を持たないからです。私たちは自分のアイデアに愛着を持ちます。時間をかけ、思考を重ね、ようやく形にした案です。無意識のうちに守ろうとします。

 反論を受けると、説明で返そうとします。正しさを証明しようとします。しかし、生成AIはその心理を共有しません。遠慮も忖度もありません。だからこそ、容赦なく前提を揺さぶってきます。

 この冷酷さが、磨きの工程では武器になります。人間同士の議論では言いにくいことも、AIは平然と指摘します。「それは既存案の焼き直しではないか」「差別化が弱い」「そもそもニーズの仮定が曖昧ではないか」。耳が痛い。しかし、その痛みこそが、企画の強度を上げる材料です。

 ここで生成AIの使い方が変わります。第1章では、思考の整理役として使ってきましたが、第2章では、批評役として使います。自分の案を強くするために、あえて徹底的に攻撃させるのです。早速、あなたの企画書をAIに読み込ませてください。

プロンプト

「この企画案の弱点や甘い前提を厳しく指摘してください」

 この問いに対してAIは、差別化が機能レベルにとどまっていること、既存アプリとの差が曖昧であること、習慣化の障壁を過小評価していること、ユーザーの本音に踏み込めていないことなど、複数の観点から指摘を返してきます。

 ここで重要なのは、指摘をそのまま採用することではないということです。生成AIが批評してきたことすべてが妥当なわけではありません。大切なのは、自分が見落としていた視点を発見することにあります。

 生成AIを批評役として使うとき、意識すべきことが1つあります。それは、「自分のアイデアを否定する勇気」です。否定されることを恐れている限り、批評は機能しません。強い企画は、何度も壊された企画です。壊しても残るものだけが、本当に守るべき軸だからです。

失敗前提で盲点を発見する

 批評をさらに深めるには、成功前提を外します。企画者は無意識に、自分の案がうまくいく前提で説明を組み立てます。市場は受け入れてくれるはずだ、ユーザーは理解してくれるはずだ、差別化は十分なはずだ。その「はず」が積み重なることで一見、論理は整います。

 しかし、その前提が崩れた瞬間に、企画はもろくなります。まさに、こんな「はず」じゃなかったという状況です。盲点は、たいてい甘い前提に潜んでいます。だからこそ、あえて問い直します。

プロンプト

「この企画が大失敗するとしたら、最大の原因は何ですか」

 とても心痛めるプロンプトです。

 ですが、提案の場で指摘を受けて大失敗を迎えるよりもはるかにマシです。この問いに対してAIは、効果実感の定義が曖昧であること、継続動機を誤認していること、ユーザー行動の変化を過大評価していること、導入時の摩擦が設計されていないことなど、より根の深い懸念を提示するはずです。

 失敗前提で問い直すと、企画の骨組みにおける「折れやすい弱点」が見えます。磨きの第一歩は、その骨を見つけることです。

 ただし、その懸念をすぐに打ち消そうとしないことです。反射的に「いや、それはこうだから大丈夫です」と説明したくなる気持ちを、一度止めます。代わりに、「もし本当にそれが原因だとしたら、どこを変える必要があるか」と問いを重ねます。

プロンプト

「その失敗原因が事実だと仮定した場合、企画を成立させるために変更すべき設計要素は何ですか」

 この問いによって、議論は攻撃から再設計へと移ります。失敗の可能性は脅威ではなく改善の起点になります。

 さらに一段踏み込むなら、「どの失敗なら許容できるか」も考えます。すべてのリスクを排除することはできません。市場規模の限定は許容するのか、初期導入のハードルは許容するのか、機能面の弱さは許容するのか。失敗前提の問いは、優先順位を明確にします。

とがらせることは、捨てること

 企画としてエッジが立っている(とがっている)ということは、全方位を狙わないことです。「誰にでも良さそう」な案は、誰にも刺さりません。安全な企画ほど、輪郭が曖昧になります。

 あれも取りにいきたい、これもカバーしたい││。その結果、メッセージは丸くなります。丸い企画は否定されにくい代わりに、強く支持もされません。ということで、どこを削るべきかを聞いてみましょう。

プロンプト

「この企画を成立させるために、あえて捨てるべき要素は何ですか」

 AIは、ターゲットの絞り込み、機能の削減、価格帯や提供形態の限定など、輪郭をつくるための提案を返してきます。ここで見えてくるのは、企画の輪郭です。輪郭が見えた瞬間に、どこを削ぎ落とすかの差別化の議論が始まります。

 例えば、安心して続けられる設計を守るために、即効性を求める層を捨てる。自己肯定感を重視するために、数値競争型の演出を捨てる。価格を据え置くために、ハードウエアの刷新を捨てる。そんな提案が来るかもしれません。

 捨てるとは、縮小ではありません。軸を太くすることです。さらに踏み込むなら、こう問い直します。

プロンプト

「この企画が最も向いていない顧客は誰ですか」

 AIは、成果を急ぐ人、ハイパフォーマンス志向の人、価格最優先の人などを挙げるかもしれません。そこに違和感がなければ、輪郭は明確です。もし「その層も取りたい」と感じるのであれば、軸はまだ揺れています。

 機能を盛り込みがちな商材は、こんな問いかけも有効です。

プロンプト

「この企画から1つ機能を削るとしたら、どれを削るべきですか」

 ここで削れない機能こそが、本当に守るべき中核です。削っても成立する要素は、あってもなくても大した違いのない付加価値にすぎません。

 捨てることには恐怖が伴います。市場を狭めるのではないか、販売機会を逃すのではないかという不安です。しかし実際には、すべてを取りに行く企画ほど、誰にも強く支持されません。差別化とは、平均的に優れていることではなく、「明確に違う」ことです。そして明確な違いは、選択と排除から生まれます。

第2章 アイデアを磨く
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(写真:sdecoret/stock.adobe.com)
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生成AIを使えば、誰でも短時間で大量のアイデアを出せる時代になりました。一方で、「それらしい案は出るが決め手に欠ける」「独自性や説得力のある企画に仕上がらない」と感じている人も多いのではないでしょうか。本書は、生成AIを単なるアイデア出しの道具にとどめず、企画の質そのものを高めるための実践書です。

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