日経クロストレンドの新刊『 コンペ荒らしが実践する生成AI「超」企画術 “問いの技術”で勝ち筋を導く7つの創造ステップ 』は、広告代理店、インターネットメディア、コンサルティングファームにおける著者の経験から、企画という仕事の一連のプロセスに、生成AIをどのように組み込むかを解説。企画の現場ですぐに使えるプロンプトも豊富に紹介しています。本書籍から第2章「アイデアを磨く──企画をとがらせる『仮説破壊』」を抜粋・再編集してお届けします。その第5回。[日経クロストレンド 2026年6月19日付の記事を転載]
「違う」だけでは足りない
AIによる反論を繰り返し、企画の弱点を洗い出しました。では次に何をするべきでしょうか。
多くの企画者は、ここで弱点を補おうと「強みを足そう」とします。機能を追加し、訴求ポイントを増やし、結果、説明資料も厚くなる。しかし、それでは差別化は生まれません。
差別化とは「他がやらないこと」
多くの企画は、「他社より優れている点」を探します。機能が高い、価格が安い、デザインが洗練されている。しかしそれは比較の文脈です。比較は常に追いつかれます。
差別化とは、優れていることではありません。評価軸を変えることです。
例えば「出力が強い」という軸で勝負すれば、より強い出力を持つ製品が出た瞬間に劣勢になります。しかし「自分を責めずに続けられる」という軸に立てば、比較の土俵そのものが変わります。差別化は、単純な機能の差ではなく、文脈の差です。
比較構造を可視化する
ここで生成AIを使います。まずは比較構造を見える化するために使います。
「この企画が競合製品と比較された場合、どの軸で評価される可能性がありますか」
AIは、価格、機能、ブランド、利便性、信頼性など、一般的な評価軸を提示します。ここで重要なのは、「自分はどの軸で戦おうとしているか」を確認することです。
あるいはすでに競合の軸が分かっているのであれば、次のような聞き方もあり得ます。
「競合が機能向上を軸にしている前提で、この企画をまったく別の価値軸で再定義してください」
もし自分の企画が、既存の評価軸の中でしか語れないのであれば、それは改善であってイノベーションではありません。
評価軸そのものを問い直す
というわけで、もう一段踏み込みます。
「この市場において、まだ十分に評価軸として確立されていない視点は何ですか」
この問いに対してAIは、精神的負担の軽減、自己肯定感の維持、生活との調和、長期的習慣化設計など、従来の機能比較とは異なる軸を提示するかもしれません。ここで得られるのは、比較から外れるためのヒントです。
繰り返しになりますが、差別化とは、競合より上に立つことではありません。比較の物差しを変えることです。
捨てることで、輪郭が立つ
差別化を再設計する上で、避けられないのが「捨てる」決断です。あらゆる顧客に刺さることを目指すと、輪郭はぼやけます。
「この企画をすべての人向けにしないために、あえて切り捨てるべきターゲットや機能は何ですか」
AIは、価格感度が極端に高い層、即効性のみを求める層、ハイパフォーマンス志向の層などを提示するでしょう。ここで重要なのは、「切り捨てることへの恐れ」に向き合うことです。
すべてを取りに行く企画は、誰にも強く刺さりません。差別化とは、選ぶことであり、同時に選ばないことでもあります。
差別化を一文で言えるか
企画が弱いときの特徴があります。それは説明が長いこと。
差別化が明確であれば、一文で言えます。今考えている企画を一文で説明ができるか? AIを使ってみましょう。
「この企画の差別化ポイントを、100文字以内で表現してください」
この問いに対してAIは、短い表現を提示します。ここで見えてくるのは、言語の強度です。短く言えない、何がポイントか分からない場合は、企画が複雑かつ冗長な可能性があります。
もちろん、AIの出力をそのままキャッチコピー的に使う必要はありません。しかし、AIによる強制短文化のプロセスは、企画の分かりやすさを図るリトマス試験紙になります。

清水覚(著)/日経BP/2200円(税込み)

