「リーダーシップ」と言われると、自分には関係ないと思いがちです。でも、チームはもちろん、自身の目標を達成させるのに、必要不可欠なスキルなのです。リーダーのための4つのチカラを学ぶ慶應義塾大学の講義「リーダーシップ基礎」は学年や学部はもちろん、理系や文系、大学院生も問わず受講希望がある人気講義です。その内容を書籍化した『日経文庫 リーダーシップのきほん 聴く 話す 決める 動かす』(田村次朗・古山彰著)から、抜粋して紹介します。第1回は、「傾聴力と必ずセットになる質問力」についてです。
私たちは何を聴き、どう質問したらいいのか?
「傾聴」とは相手の話に耳を傾けることです。つまり、「傾聴」は受動的な行為です。「傾聴」には「質問」が欠かせません。相手への「質問」は自分で考えなくてはなりません。「質問」は能動的な行為なのです。したがって、傾聴よりも質問のほうが実践するのがやや難しいかもしれません。
対話における一般的な質問について考えてみます。何について、どのように質問したらいいのか説明します。
まず、「何について」です。質問とは、相手からさまざまな情報を得るための手段の一つです。そのため、相手がどのような情報を持っているかを知ることで、何を質問すればいいのかがわかるはずです。
一般的に、相手が持っている情報は次の4つに分けることができます。
- 相手も自分も知っていること
- 相手は知っているけれども、自分は知らないこと
- 相手は知らないけれども、自分は知っていること
- 相手も自分も知らないこと
このうち③と④についての質問はおそらく成立しません。なぜなら、相手が知らないことに対してはこちらも質問できないからです。質問できるのは、「①相手も自分も知っていること」と「②相手は知っているけれども、自分は知らないこと」です。
①については、自分が知っていることを手短に紹介したうえで、相手に質問するのです。例えば、サッカーワールドカップの話題が出た時に、自分はテレビ観戦だったけれども、相手は開催地に行って観戦したというような場合には、現地での状況を質問できます。質問された相手は、現地で見聞きしたことについて喜んで話をしてくれるはずです。
②については、「そのことについてもっと知りたい」と質問すればいいのです。相手は快諾して、詳しく説明してくれるはずです。
相手の考えを明確に知りたいときは「閉じられた質問」
次に、「どのように」質問したらいいのかについてです。実は、質問の仕方には2つの基本形があります。「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」です。
「クローズド・クエスチョン」(閉じられた質問)とは、複数の選択肢を示して行う「質問」です。例えば、「次の3つのうちから選んでください」といって回答を引き出す質問の仕方です。「イエスか、ノーか」と二者択一を迫ることもあります。
このような質問の仕方のメリットは、相手の考えがストレートにわかることです。逆の言い方をすれば、相手の考えを明確に知るために「クローズド・クエスチョン」を聞くわけです。質問された相手は、3つのうちの一つ、あるいは「イエス」と答えるはずです。
「クローズド・クエスチョン」のデメリットもあります。一つは、相手が選択肢以外の答えを持っている可能性がある場合です。また、「イエス」・「ノー」の二分法では答えられない場合にもデメリットになります。人の考えは単純ではないからです。もう一つは、相手の回答を得た途端、話が途切れてしまう恐れがあることです。「クローズド・クエスチョン」を聞く時は、そのあとに何を質問するのかを考えておかなければならないということです。
相手の話を詳しく引き出すなら「開かれた質問」
「オープン・クエスチョン」(開かれた質問)とは、相手の話を引き出すための質問で、いわゆる「5W1H」です。これらは「限定的な質問」と「拡大的な質問」に分けられます。
5W1Hのうち、「WHO(誰が)」「WHEN(いつ)」「WHERE(どこで)」を「限定的な質問」と呼びます。人物や関係、時間や過程、空間や場所などについての質問です。なぜ「限定的な質問」なのかと言えば、それは相手の答え次第で話がさほど進まないケースもあるからです。例えば、「誰が」と質問すれば、「○○さん」、「いつ」と聞けば「●月×日」、「どこで」と聞けば「△△で」というように具体的な答えが返ってきます。それだけでは話が終わってしまうかもしれません。「それでどうしたの」という質問がなければ、話は先に進みません。
そこで、「WHY(なぜ)」「WHAT(何が)」「HOW(どのように)」が重要になってきます。これらは目的や理由、事象や内容、手段や程度についての質問で、「拡大的な質問」と呼ばれます。このように質問されると、相手はどう答えようかと考えます。人はとかく自分のことはすべて知っていると思いがちです。しかし実際は、自分でも見えていないことも少なくありません。質問を受けることが、自らの行動や状態を振り返るきっかけになります。「拡大的な質問」とは、相手が深く考えるための「質問」です。難しい表現を使えば、相手の「内省支援」のための質問ということ。「拡大的な質問」によって、相手の思考や感情が刺激されるわけですが、その結果として話がより広がる可能性が高まります。
また、TEDのスピーカーとして有名なサイモン・シネックは、上記に近い考え方を「ゴールデンサークル理論」と呼んでいます。彼は、 『WHYから始めよ!』(日本経済新聞出版) という著書の中で、「拡大的な質問」のうち、特に、「WHY」から始めることの重要性を説いています。すなわち、日頃、「WHAT」「HOW」に触れる機会は多くある一方で、「WHY」は省略されることが多いことを指摘しています。シネックは、人に物事を伝える時のポイントでこの理論を説いていますが、聞き手という文脈であっても、「WHY」を相手に聞くことで、相手への共感がしやすくなるかもしれません。
田村次朗・古山彰著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)

