シリコンバレーの有名投資家、リード・ホフマン氏はChatGPTを提供するOpenAIの最初期の投資家であり、元取締役でもある。そのホフマン氏がGPT-4と対話しながら未来を予測した新刊『 ChatGPTと語る未来 』から、2回目となる今回は、人気職業の経営コンサルタントの今後について抜粋して掲載する。
経営コンサルティングの機能はAI向き
テック業界は経営コンサルティングの効果に対してきわめて懐疑的なことで知られている。それでも私は、マッキンゼーをはじめとするコンサルティングファームの優秀で誠実な多くのプロフェッショナルたちと仕事をともにしてきた経験から、経営コンサルタントはビジネスで重要な役割を果たせると信じている(とはいえ、従業員100人以下のスタートアップ企業では、なかなかそうとも言えないが)。
コンサルタントのおもな任務は、大量のデータから結論を導き出し、ベストプラクティスをベンチマークして共有し、新しいビジネスユニットを立ち上げて成長させるためのプランをつくることだ。ただ、そうした作業の多くはAI向きのように思える。ここで、その直感が正しいのか、GPT-4に聞いてみよう。
GPT-4
――AIは、データセットを分析して取るべき戦略や戦術を提案し、改善やコスト削減の余地がある箇所を特定するのに役立つ可能性があります。
――AIは、市場動向や顧客の行動など経済情勢に関する予測や分析に役立つ可能性があります。
――AIは、クライアントからのフィードバックや従業員を対象にした調査から知見を引き出し、よりターゲットを絞った、効果的な経営コンサルティングをするのに役立つ可能性があります。
――AIは、競合他社や業界の動向についてデータを収集・分析して、改善と成長が見込める分野を特定するのに役立つ可能性があります。
――AIは、戦略の立案や実行のプロセスを自動化・高速化し、より効率的で効果的な経営コンサルティングをするのに役立つ可能性があります。
これらの答えのなかで、GPT-4はデータを分析し、結論を導き出すことを重要視しているようだが、これはいかにも筋が通っているように思える。それこそまさに、ベイン・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループなどのコンサル各社が進めている仕事だからだ。だが、AIがこれほど多くの分析を担うとなると、人間のコンサルタントはどうなるのだろうか?
AIの影響を一番受けるのは若手のコンサルタント
GPT-4 経営コンサルティング業界へのAI導入は、現役コンサルタントの今後のキャリアに悪影響を及ぼす可能性があります。一番大きな影響を受けるのは、若手のアナリストやアソシエイトかもしれません。リサーチ、データ分析、レポート作成など、彼らが担当する多くの業務をAIが自動化できるからです。AIのシステムがより洗練されていけば、これらの業務を人間がやる必要はなくなり、結果として若手の仕事の機会が減る可能性があります。
中堅のエンゲージメントマネージャーも、AI導入の影響を受けるかもしれません。AIが戦略の立案と実行のプロセスを自動化することで、エンゲージメントマネージャーが果たしているこうした職務の重要性が低下する可能性があるからです。また、AIシステムの能力が向上すれば、クライアントの業務を観察して、アドバイスを提供するという仕事も、AIに取って代わられるかもしれません。
さらに、マッキンゼーのパートナーなどのハイレベルなエグゼクティブでさえ、AI導入の影響を受ける可能性があります。AIがビジネス上の意思決定や戦略の実行を自動化することで、パートナーの果たしている職務が必須とは言えなくなるかもしれません。加えて、AIシステムがクライアントの業務を観察してアドバイスを生成することで、パートナーがみずから、専門家としての知識を提供する必要性が低下することもありえます。
こうした回答は理にかなっているように思える。アナリストやアソシエイトが担当している、ウェブ検索やパワーポイントのスライド作成といった「力仕事」の多くはGPT-4やTomeといったツールでもできるようになるかもしれない。さらに、クライアント側としても、せっかくコンサルティングファームを雇ってもお決まりの解決策しか出てこないのであれば、AIによるデータ分析に切り替えて、本当の意味で広い視点からレビューをさせるほうがいいという結論が出てもおかしくはない。
マニュアルどおりのやり方を超える付加価値を提供できない経営コンサルタントは、今後、苦境に立たされることになるだろう。コンサルティングファームは、若いアナリストやアソシエイトに「エンジンを回させて」、彼らに払う給料の10倍もの報酬をクライアントに請求することはできなくなる。一方で、AIの導入によって浮いた時間を、斬新な知見を生み出すことに使える経営コンサルタントは、AIを味方につけて、より価値の高い作業に打ち込むことで、クライアントにこれまで以上のサービスを提供できる。
ただ、もしコンサルティングファームが、基本的な業務のために大学やビジネススクールを卒業した優秀な若者たちをあまり雇わなくなったら、次世代のパートナー候補者たちはどうやってそのような技術を学べばいいのか、という問題が出てくるかもしれない。では、AIがこの問題を解決できるかどうか見てみよう。
コンサルタントの育成にもAIは使える
GPT-4 将来的にコンサルティングファームは、駆け出しのアナリストやアソシエイトをスキルアップさせるためにAIを活用できるかもしれません。AIシステムによって現実のシナリオをシミュレートし、若いコンサルタントにバーチャルでコーチングすることで、スキルを磨き、経験を積ませる手助けができるでしょう。さらに、AIシステムによって個々のコンサルタントに合わせた研修プランを提供することで、最も成長が必要な分野に集中できるようにすることも可能です。
また、ファームはAIを活用して、駆け出しのアナリストやアソシエイトを対象にしたバーチャルなメンターシッププログラムを実施することもできるでしょう。AIは、個人に合わせたアドバイスや指導をすることで、それぞれのポジションで成功するためのスキルと知識を身につける助けになるかもしれません。さらに、経験豊富なコンサルタントと駆け出しのアナリストやアソシエイトとのあいだの知識や見識の交換を促進し、若手がベテランから多くのことを学べるような状況をつくるのにも利用できるでしょう。
AIによるシミュレーションを活用して、未来の専門家を育成するというコンセプトはいいと思う。現状、若いプロフェッショナルの多くは、学びの機会が少ないことや、メンターがいないことに不満を感じている。多少の改良は必要かもしれないが、AIはこうしたありがちな問題の解決に役立つかもしれない。
AIツールは成長や進歩も生み出す
さて、ここまできて、私もAIを使って執筆の手間を省く方法を思いついた。そう、GPT-4の力を借りて、結論を出してもらおう。
GPT-4 ここまでの話に共通して言えるのは、一部の職業はAIの影響を他業種よりも大きく受けてしまいますが、同時によい変化がもたらされる可能性も計り知れないほど大きいことです。
AIが従来のキャリアパスを揺るがす可能性に注意しておくことは重要ですが、成長や進歩のための新たな機会を生み出すことも忘れてはなりません。AIツールが普段の業務プロセスの核となる新しい時代を迎えるにあたって、生産性を高め、有意義な仕事をするために、AIがもたらすチャンスを活用することは、各分野のプロフェッショナルにとって必須となるでしょう。
井上大剛=翻訳
リード・ホフマン、GPT-4著/井上大剛、長尾莉紗、酒井章文 訳/日経BP/1980円(税込み)

