「本書で説かれるのは、自らの毎日を浪費せず、将来の大きな果実のために日々の学びや挑戦を忘れない『投資家的な未来志向』の生き方の奨励である」。こう語るのは、経済・金融メディア「TBS CROSS DIG with Bloomberg」チーフコンテンツオフィサーの竹下隆一郎さん。長年、報道の現場でビジネスの潮流とビジネスパーソンの生き方を鋭く掘り下げてきた竹下さんが、『 投資家みたいに生きろ[増補版] 』(藤野英人著/日経ビジネス人文庫)の魅力と読みどころを紹介します。
いまこそ本書を読むべき。その2つの理由
藤野英人さんはカリスマ投資家として知られる。社長を務めるレオス・キャピタルワークスは、投資信託「ひふみ」シリーズで知られ、ひふみ投信マザーファンドの運用資産残高は2025年12月に1兆円を突破。YouTube番組「お金のまなびば!」もつくり、情報発信も活発だ。
その藤野さんが書いたベストセラー『投資家みたいに生きろ』の増補版。
2019年に刊行された本書を、2026年の今こそ読むべき理由について、藤野さんが冒頭で挙げた2つのポイントを紹介したい。一つ目は、日本がデフレからインフレに転換したこと。二つ目は、生成AIの進化と普及だ。つまり、2026年の現在だからこそ、日本に住む私たちに、「投資家みたいに生きろ」と呼びかけるのである。
一つ目は分かりやすい。デフレ社会では物価が下がり続ける。投資もせず、無謀なリスクもとらず、じっとしていることが良かった。ところが、物価が上がるインフレ社会では、お金の価値は目減りするので、投資をして、将来のリターンを手に入れないと損をする。
二つ目の生成AIの普及はどうだろう。生成AIによって、一人の人間にできることが爆発的に増えた。たとえば、私の知人は、ある有名会社のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の職を得たが、未知の業界にもかかわらず、生成AIを使って2週間で必要な知識をほとんど手に入れたという。誰もが学べるということは、学ばない人はますます置き去りにされることを意味する。逆に、学べば、その成果が複利的にふくらむ。投資家とは、未来のリターンのために、学び続ける存在である。
目標はつねに具体的に。年末年始に40~50個つくる
本書で説かれる「投資家みたいに生きる」というのは、単に新NISAやS&P500に関心を持つことを指すわけではない。もちろん狭義の投資に対する知見も含む本書だが、より広く「投資」をとらえている。
それは、自らの毎日を浪費せず、将来の大きな果実のために日々の学びや挑戦を忘れない「投資家的な未来志向」の生き方の奨励である。
投資の考え方、身体のメンテナンス、時間術、と多彩なアドバイスがあふれる本書だが、秀逸なのは「年末年始に40~50個の目標をつくり、フェイスブックに投稿せよ」という助言だろう。ポイントは、「お金持ちになりたい」という曖昧な目標を設定するのではなく、具体的に決めることである。たとえば、本書では次のような藤野さんの目標が紹介されている。
・1週間に1回は体重を測る
・原則1日2食にする
・1週間に1回はジムに行く
・30分弾けるピアノのレパートリーを確保する
・映画は月に1、2本以上見る
こうした目標を書き出し、1月にSNSに投稿することで自分への小さなプレッシャーもつくる。気持ちがジメジメしがちな梅雨の6月末に目標を見直し、目標を検証することも大切なようだ。
「アフター生成AI」の世界に奮い立つ「投資家」になろう
私たちは「アフター生成AI」という人類史的にユニークな時代を生きている。日本の年金制度は「老後のセーフティーネット」と呼ばれたが、すでに前提として機能していない。
定年後にのんびり過ごす、という人生設計は過去のものとなり、70歳や80歳になっても、お金を稼いで、生成AIに使われるのではなく、自らの足で立って生成AIを「使う」側にまわらないといけない。
ChatGPT、Gemini、Claude、Midjourney、Stable Diffusion。2026年は毎日のように、こうした生成AIが「進化した」というニュースが世界を驚かせるであろう。そうしたニュースに触れたとき、たじろいでしまうのか、奮い立つのか。後者のように考えられる人こそ「投資家」であり、本書にふさわしい読者である。
