日本最大のオフィス街、東京・丸の内に店舗を構える丸善 丸の内本店。ほかの大型書店と違うのは、店頭を含む1階がビジネス書を中心にした品ぞろえになっていることだ。その1階の売場長補佐でビジネス書の担当を10年以上しているのが村山美尾さん。「お客様の情報感度が本当に高いので、常に話題のニュースやキーワードをチェックするようにしています」と語る村山さんが、今お薦めしてくれるビジネス書とは?

1階の売場でビジネストレンドが読める

丸善 丸の内本店でビジネス書を担当している村山美尾さん
丸善 丸の内本店でビジネス書を担当している村山美尾さん
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 日本最大のオフィス街で、ビジネスの中心地である東京・丸の内に店舗を構える丸善 丸の内本店。複合商業施設の丸の内オアゾのキーテナントとして大きな存在感を放ち、1階から4階まで続く広々としたフロアの床には御影石が敷かれている。“街の本屋さん”とは一線を画する高級感漂う空間だ。

 丸善 丸の内本店には、ほかの大型書店とも違う点がある。それは店頭を含む1階が、ビジネス書を中心にした品ぞろえになっていることだ。同店でビジネス書の担当を10年以上している村山美尾さんによると、「通常、大型書店の1階は文芸書や新刊、雑誌やコミックが中心になりますが、立地的にビジネスパーソンが多い弊店は、お客様のニーズに合わせてビジネス書をはじめ政治や経済、法律、就職、資格についての本を置いています」という。村山さんが以前勤めていた丸善 日本橋店も、1階は話題書や雑誌、実用、地図ガイドが中心。そのことからも、丸の内本店が思い切った店づくりをしていることが分かるだろう。

日本最大のオフィス街で、ビジネスの中心地である東京・丸の内に店舗を構える丸善 丸の内本店
日本最大のオフィス街で、ビジネスの中心地である東京・丸の内に店舗を構える丸善 丸の内本店
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 「お客様の情報感度が本当に高くて、日本ではまだ話題になってないテーマの本や、『近々こういう本が出ると聞いたんだけど』と入荷の予定について聞かれることも多々あります。私も、話題のニュースやキーワードはチェックするようにしていますが、お客様からのお問い合わせで知ることも多く、お客様の情報スピードが早いと日々感じています」(村山さん)

 一部の出版関係者の間では、「ビジネスパーソンのニーズをいち早くつかみたいなら、丸善 丸の内の1階に行け」といわれている。それだけ、1階の売場を見ればビジネストレンドが読めるということだ。最近話題になっている生成AIの「ChatGPT(チャットジーピーティー)」についても、世間で話題になる今春以前から、「ChatGPTについての本はありますか?」と聞くお客さんがいたという。

出版関係者の間では、「ビジネスパーソンのニーズをいち早くつかみたいなら、丸善 丸の内の1階に行け」といわれている。1階の「新刊・話題の本」を見れば今のビジネストレンドが読める
出版関係者の間では、「ビジネスパーソンのニーズをいち早くつかみたいなら、丸善 丸の内の1階に行け」といわれている。1階の「新刊・話題の本」を見れば今のビジネストレンドが読める
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あのChatGPT本はなぜ売れているのか

 そんなトレンドの最先端を行く人をも満足させるChatGPT本が、『 先読み! IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来 』(古川渉一、酒井麻里子著/インプレス)。村山さんは3冊のお薦め本のうち、1冊目として紹介してくれた。

『先読み! IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』(古川渉一、酒井麻里子著)。一番最初に発売されて、一番売れている本
『先読み! IT×ビジネス講座 ChatGPT 対話型AIが生み出す未来』(古川渉一、酒井麻里子著)。一番最初に発売されて、一番売れている本
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 「話題が広まるにつれてChatGPT本は増えていますが、一番最初に発売されて、一番売れているのがこの本です。発売されたのはChatGPTが話題になってすぐの頃、4月初めでした。きっと、ChatGPTとはなんぞや? と知らない人も多かったときだと思います。著者の古川渉一さんは、AIライティングアシスタント「Catchy(キャッチー)」の事業責任者の方です。CatchyはChatGPTの『GPT-3』を活用した国内向けサービスで、リリース後、半年間でユーザー数が4万人を超えたそうです。そんな第一人者だからこそ、ChatGPTが話題になり始めてすぐの頃に書籍化できたのか、と。発売後すぐに売り切れて、追加注文を出したことを覚えています」(村山さん)

 村山さんがこの本をお薦めするポイントは、ChatGPTについて知らない人が詳しい人に聞く対話形式になっていて、文章が簡潔で分かりやすく、全貌をつかみやすい点だ。ChatGPTはおろか、AIって何? という人でも理解しやすいという。カラーで図解のイラストが豊富なため、文字がぎっしり並んだ印象がない。途中に入っているコラムは、箸休め的になっており、読む気力が衰えないのもうれしい点だ。

「この本のおかげで、ChatGPTの今と今後の可能性や広がりについてイメージできました」
「この本のおかげで、ChatGPTの今と今後の可能性や広がりについてイメージできました」
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 「後続の類書の中には、知識がある人向けの専門性が高いものもありますが、この本が発売から高い売上をキープしているのは、入門的な基礎知識を必要としている方が多いことを物語っていると思います」と村山さん。自身も、この本を読むまで、ChatGPTについて詳しくなく、漠然と生成AIは人の存在価値を揺るがすのではないか、とネガティブな印象を抱いていたという。

 「どんなことも、分からないことに対しては不安を覚えて、苦手意識を抱くものですが、一度全貌をつかめば解消するんですよね。この本のおかげで、ChatGPTの今と今後の可能性や広がりについてイメージできたので、ネガティブな印象はなくなりました」(村山さん)。

 丸善 丸の内本店では、この本をはじめ、ほかの類書も売上を伸ばしている。そのことから、今後しばらくの間、ChatGPTがビジネストレンドに入り続けることが読み取れる。

取材・文/茅島奈緒深 写真/尾関祐治