日本のビジネスの中心地、東京都千代田区丸の内に店舗を構える丸善 丸の内本店は、国内最大級の在庫数を誇る。その1階入り口を入ってすぐのところで「日経文庫70周年フェア」が行われている(2024年10月末まで)。「日経文庫は特定の分野を学ぶときの『はじめの一冊』としてうってつけで、お客さんに安心して薦めることができます」と同店・和書グループ長補佐の宗形康紀さん。本を扱うプロフェッショナルの目線で、お薦めの日経文庫を3冊選んでもらった。今回は前編。
「はじめの一冊」としてうってつけ
和書約100万冊・洋書約12万冊という国内最大級の在庫数を誇る、丸善 丸の内本店。複合商業施設の丸の内オアゾのキーテナントで、1階から4階まで続くフロアには文具売り場やギャラリー、丸善の“元祖ハヤシライス”を提供するカフェなども併設する。本との出合いだけに終わらない、いろいろな楽しみ方ができる空間だ。
その1階入り口を入ってすぐのところで「日経文庫70周年フェア」が行われている。日経文庫は2024年8月に創刊70周年を迎えた。経済、経営、法律、マーケティング、IT、実用外国語などの専門分野をテーマにし、今も昔もビジネスパーソンの必読書として親しまれている。
同店・和書グループ長補佐の宗形康紀さんは、「日経文庫はしっかりとしたエビデンスに基づいているので、新しく学ぶときの『はじめの一冊』としてうってつけです。専門性が高いため、気軽に読み飛ばせる“軽さ”はありませんが、内容に対する信頼度の高さは群を抜いています」と言う。「何を買ったらいいか迷ったら日経文庫を買えば間違いない、というイメージを持ったお客さんもたくさんいらっしゃると思います」と続ける。
イノベーションを正しく理解するための本
フェアをしている売り場では、売れ筋ランキングが分かるようになっていて、見ると「SDGs」や「フィンテック」「生成AI」などのトレンドワードが目に留まる。その隣には、日経文庫編集長のお薦めが並び、「20年以上売れ続けている定番」など、隠れた名著を見つけることもできる。「売れ筋ランキングも編集長のお薦めも、すでに魅力が知られていると思うので、それら以外でお薦めしたい3冊を選んでみました」と宗形さん。まず1冊目は、早稲田大学教授・清水洋さんの『イノベーションの考え方』(2023年1月刊)だ。
ご存じの通り、イノベーションとは「革新」や「新機軸」という意味で、これまでにない新しい技術やアイデアによって製品やサービス、仕組みを生み出し、組織や社会をよりよく変えていく、といった文脈でよく使われる。イノベーションは企業の喫緊の課題として認識されているため、関連書籍は多い。
「実際にイノベーションを起こした企業家やコンサルタントなどの経験に基づく本や、イノベーションの事例を分析する本などさまざまありますが、本書を読んで初めて、イノベーションは経験則やひらめきに頼ったものではないことを知りました。実は規則性があってパターンがあることを知り、抱いていたイメージと全然違って驚いたほどです。
また、イノベーションとは近年の概念かと思いきや、およそ100年前から研究が進められてきたそうです。そうした研究を系統立てて解説し、深掘りしていく内容なので、イノベーションについて改めて学びたい、正しく理解したいという人にお薦めです」(宗形さん)
イノベーションは、言葉としての浸透度は高い。が、そういう言葉ほど、よく使うわりに「本当の意味」が抜け落ちている可能性があるもの。読者の中にも、言われてみたら正しく理解しているとは言いがたい、いまいち自信がない、という人はいるだろう。
「本書はランキングの上位には入っていないものの、売れ行きは好調です。フェアを始めて1週間ぐらいから動きが出て、売れ行きが伸び続けています。もしかしたら、実はよく分かっていないから読んでみよう、という方が多いのかもしれませんね」と宗形さん。本書の魅力は、正しい理解を得られるだけでなく、「イノベーションを起こす側に立って考えることができる点にもあると思います」と言う。
「組織において、イノベーションについての“絵”を描くのは上層部ですが、実動部隊として実行するのは被雇用者の一般社員ですよね。イノベーションの本当の意味を理解し、上層部の立場になって考えられるほうが、求められる結果を出しやすいと思います。個人的にも、イノベーションを“わたくしごと”として考えたことがなかったのでインパクトがあり、さまざまな気づきを得られました」(宗形さん)
(後編へ続く)
取材・文/茅島奈緒深 写真/尾関祐治
イノベーションを生み出すためには、何をすればよいのだろう。そもそも、イノベーションって何のことなのだろう。このような素朴な疑問を持つビジネスパーソンや政策担当者、あるいはイノベーションの基本的なポイントを押さえておきたいと考える人に向けた入門書。
清水洋著/日本経済新聞出版/990円(税込み)




