お金も人も不足しているが、データ活用を進めたい。いったいどうしたらいいのか? データ分析のプロジェクトは、人や予算が潤沢にある企業だけが行うものではない。メンバーが限られているほうが、スピーディーにデータ分析や活用が行えることも多々ある。少人数・低予算でプロジェクトを進める際のポイントとは? 『 データ分析のリアル まるごとQ&A 』(永田ゆかり著/日本経済新聞出版)から抜粋、再構成してお届けする。

予算も人材もない状態。どうしたら?

 お金も人も不足している状態で、データ活用を進めるためのアドバイスをするとしたら、重要な問題に集中し、小規模でのデータ分析や活用を進めることがおすすめです。

 実際、データ活用に強い関心を持つ一部の方だけで取り組むことでスピーディーに成果を上げられていることも多々あります。

 データを扱うプロジェクトでは多くの時間と労力が必要ですが、それぞれの課題に取り組む前に、もっとも重要な問題にフォーカスしてください。必要なデータ収集と分析を最小限にし、課題を解決するための最適なアプローチを見つけることができます。

 これは、一見当たり前のように見えますが、プロジェクトの進行過程で、あれもやりたい、ここまで広げなければ……となっていくことはよくありますので、特に注意が必要です。

 そこで、何をもって重要とするかが問題かと思います。どのような問題が重要なのかを考える際のポイントをまとめました。これらの要素を総合的に考慮し、ビジネス目標や戦略に最も直結し、最も大きな価値と影響を持つ問題にリソースを集中的に投入します。

■ビジネス目標と戦略
 まず、企業のビジネス目標と戦略を明確にします。どのような成果や改善が重要であり、ビジネスの成功に直結するのかを把握します。

■ビジネスニーズと課題の特定
 ビジネスニーズや課題を特定し、それらがデータ活用によって解決可能であるかを評価します。例えば、収益の向上、コスト削減、顧客満足度の向上、市場競争力の強化など、具体的な課題を明確にします。

■ビジネスインパクトの評価
 各課題や問題の解決が持つビジネスへのインパクトを評価します。どの課題が最も重要であり、解決することで最も大きな価値が生まれるのかを判断します。

■可能性と実現性の評価
 問題の解決に必要なデータの可用性、アクセス可能性、分析手法やツールの実現可能性を評価します。リソースの制約や技術的な課題がある場合、実現可能性を考慮することが重要です。

■リスクとROIの評価
 各課題のリスク要因とROI(投資利益率)を評価します。リソースの限られた状況下では、リスクが比較的低く、ROIが高い課題に重点を置くことが効果的です。

■ステークホルダーの関与と意見の収集
 ビジネス部門や関連するステークホルダーとのコラボレーションを通じて、重要な問題を特定しましょう。彼らの意見やニーズを収集し、データ活用がどのようにビジネス価値を提供できるのかを理解します。

業務時間内に学習時間を確保する

 新しいことを学んだり、ツールに習熟したりするにあたり、時間の確保は必須です。しかし、多くの会社でこの点への配慮はないがしろにされがちなのではないかと感じます。

 もちろん、スキルアップはメンバーの自助努力による部分が大きいです。上長の方と工夫して、仕事量の調整や学習時間、キャッチアップ時間の確保をするのがコツです。

 私の経験では、中核となる重要なテーマの学習やキャッチアップは業務時間内に組み込み、さらに付加的なワークショップを設ける、上級レベルの学習は任意とする、といったスタイルで行うとうまくいっていることが多い印象です。

経営層が自ら学ぶ姿勢を見せる

 研修やトレーニングを提供する側の視点でいつも思うのは、データ活用・DX(デジタルトランスフォーメーション)がうまくいっている企業ほど、役員の方や部長・課長クラスの方が一生懸命学んでいる、ということです。

 経営層・トップマネジメントの方が「自分ごと」として学んでいる姿勢を見せることで、スタッフの方たちもモチベーションが上がることが多いのです。

スキルアップは自助努力による部分が大きいので、上長と工夫して、仕事量の調整や学習時間、キャッチアップ時間の確保をする(写真/Shutterstock)
スキルアップは自助努力による部分が大きいので、上長と工夫して、仕事量の調整や学習時間、キャッチアップ時間の確保をする(写真/Shutterstock)
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専門家・伴走者をつける

 専門家、プロフェッショナルを一人でも参画させ伴走してもらったほうが、結果的にははるかに効率的に進むことが多いでしょう。

 特に最初のころは、「これをするために何をしたらいいかがわからない」という状態が多いため、具体的で正確な指示出し・タスクの切り分けが行える専門家・プロフェッショナルを、一人でもよいのでそばにおいたほうが話が早いのです。

 人も予算もない場合、視野が狭くなり、東に進むべきところで西に行ってしまっていることも多くあります。質のいい専門家は、東に行くべきときに東に進んでいることを確認する羅針盤としての機能も果たしてくれます。

最初からツールで解決しようとしない

 データ分析やデータ活用の文化を醸成するのは、新たなツールや高額なソリューション導入ではありません。

 重要なのは、事業に必要なことを考え抜き、どのようなことが理解できたり分析できたりしたら事業に寄与するのかを真剣に考えることです。

 ツールを導入しなくとも、例えば少人数でチームを作り、「いったんExcelでできる限界までやってみる」、というのも非常に価値のある試みです。「Excelで十分だった」と理解することもあるでしょう。

 事業にとって質の良いデータ分析の結果や意味のある解釈を得るには、事業をよく理解している人が理想です。

 まずは事業を理解している自分自身が分析にトライする、というのがおすすめです。ツールやソリューションはやりきってからの導入でも決して遅くありません。

データで組織を変えたい人、必読

本書はデータ分析プロジェクトの「攻略本」です。プロジェクトの検討段階から、社内への浸透・活用まで幅広くカバー! 企業内外で直面する78の課題に、Q&A形式で答えます。

永田ゆかり著/日本経済新聞出版/2750円(税込み)