データ分析の領域は「理系」のイメージが強い。しかし、文系・理系は関係ないという。プロジェクトを進める上で必須の能力とは? また、適性の有無を見分けるにはどうしたらいいのか? 今いるメンバーを育成するべきか? 外から新たに採用すべきか? 書籍『 データ分析のリアル まるごとQ&A 』(永田ゆかり著/日本経済新聞出版)から抜粋、再構成してお届けする。

文系でも活躍できますか?

 文系でも活躍できます。文系/理系問わず、データ分析プロジェクトに必須な能力は「課題設定力」です。

 「データ分析」は理系のイメージがあるかもしれませんが、データ分析プロジェクトの仕事は幅が広いため、文系学部出身者が得意とする領域も多いのです。

 そして、何より重要なのが課題設定力(論理的思考力)だからです。特に日本においては、「文系=ITやテクノロジーにうとい」というニュアンスで使われることが多いため、このような質問がよく生まれるのだと思います。

 しかしながら、データ領域はそもそも文理融合領域であり、大学で学ぶ機会がなかったとしても、社会人になってからの学びで活躍されている人が非常に多い領域でもあります。

 そもそも、文系/理系の区分自体が非常に大雑把です。文系でも経済学部であれば統計や計量経済学を使い、統計ソフト「R」を扱っている場合もありますし、理系でも学部によっては、統計学が一般教養ではなく統計の基礎を学ばないところもあったりします。

 つまり、興味とやる気さえあれば、どうにでもなるというのが個人的な所感です。

理系のイメージが強いデータ領域だが、興味とやる気さえあればどうにでもなる(写真/Shutterstock)
理系のイメージが強いデータ領域だが、興味とやる気さえあればどうにでもなる(写真/Shutterstock)
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必須なのは「課題設定力」

 データ領域における課題設定力とは、具体的には以下の能力を指します。

  • 事業構造を見抜き、何の分析をすればビジネス価値があるかを見抜く力
  • 混沌とした現実の問題に対し、真のペインポイント(悩みの種)を掘り下げられる力
  • データで何ができるか、何を解決すればよいのかを特定でき、課題の高品質化を図れる力
  • 自分の理解やデータからの解釈を相手に伝わるように分かりやすく説明できる力
  • 相手の話を聞いて、さらに核心をついた問いかけを切り出せる力

 もちろん、ツールやプロダクトに長けていることや数学的積み上げが重要になる局面もありますが、上記の能力が根底にあることが前提です。

適性がある/ないの判断基準は?

 データ分析では、経済学、統計学、情報学などに関連する学部を卒業した若手を集めるのが王道です。理由としては、「データの取り扱い」に対する一定レベルの訓練を受けているためです。

 組織の中でデータ活用をこれから始めようというとき、チーム内のメンバーに学部レベルでも基礎があると、意外と話が早く進むものです。

 もちろん、出身学部だけがチーム組成の成功を決定づけるものではありません。しかし、データの部署やチームを初めて作るとき、コストがかからないシンプルな指標ですので、最初の材料の一つにして損はないでしょう。

 また、資格を保持していることが重要というわけではないのですが、次のような資格を保持している人はデータ分析/データ活用チームにフィットする可能性が高いので、参考にしてください。

■IT
  • 基本情報技術者試験(FE)
  • 応用情報技術者試験(AP)
  • 高度情報処理技術者試験
■統計・データ分析・BIツール
  • 統計検定
  • Python 3 エンジニア認定データ分析試験
  • 各種BI認定資格(Tableau、Power BIなど)
■データ分析基盤
  • データベーススペシャリスト認定試験
  • オラクル認定資格
  • AWS認定資格
  • Google Cloud認定資格
  • Microsoft Azure認定資格

一つの手段に固執してはいけない

 ある特定の分析手法が得意な分析者は、事業会社におけるデータ分析者としても、データコンサルティングの分析者/コンサルタントとしても、活躍できそうでいながら、なかなか活躍が難しいものです。これはデータ分析領域でよくある勘違いです。

 大学で長く研究していた手法がある場合、特定の手段にこだわりが強くある人も多くいます。しかし、企業ではミッションや役割があり、その人の得意な手法で有益な業務を行えるかどうかは不明です。分析結果をもとに、業務改革を起こしたり、実際に有益なアクションを起こしたりして初めて貢献できます。

 また、データコンサルティング会社の立場で言えば、その手法で解く課題や案件があるかどうかは分かりません。手段に固執してしまうと、データで解決できる問題を発見し、価値を提供するという大目的からズレてしまうことも多いのです。

 自分が得意な手法に固執せず、価値を出すことに焦点を当てて考え続けていくことが大切です。

データを扱える人材がいない場合

 今いるメンバーを育成するべきか、外から新たに採用するべきか、という質問に対しては、育成と採用の両方をやるのがよい、と答えています。

 そのためには、現在の自社のデータ領域全体を査定・評価することが必要と言えるでしょう。

 ここで言う「データ領域全体」とは、技術的成熟度、組織体制、データの品質やガバナンス、データ活用成熟度、ツール整備などの要素です。理想の姿になるために、何が足りていて、何が足りていないかを把握し、足りていない部分の戦略を立案します。

 一般的に、今いるメンバーの「育成」には相応の時間がかかります。かといって、外部から新たに人材を採用しても、組織や事業を理解するのに時間がかかり、立ち上がりがスピーディーにいく保証はありません。

 プロジェクトの初期フェーズであれば、外部の専門家を使うことで勢いをつけ、その後、体制が整ってきたら少しずつ外部の支援を減らしていき、徐々に社員でプロジェクトを回せるよう内製化するというのが一つの手です。

 また、新たに採用する場合、現組織の給与体系では、デジタルやデータに強い人材の採用ができないこともよくあります。そういった背景を受け、デジタル人材に対して給与体系の見直しを行う企業も出てきました。

 現在の組織で柔軟な給与体系の構築ができない場合は、別組織を作って別の給与体系を用意する、という手もあります。

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