「業界を把握して自社の立ち位置を知りたい」「自社と他社を比較したい」「法人営業を強化したい」といった場合に役立つビジネス・フレームワークを8点解説する。様々な業界の勢力図と提携関係をひと目で把握できる『日経業界地図 2026年版』と併せて活用することで、自社や業界についてより深く知ることができ、企画、提案、マーケティングなど幅広く業務に生かせるだろう。『日経業界地図 2026年版』(日本経済新聞出版)の巻頭特集から抜粋、再構成。

3C(4C):利害関係者の視点から考える

顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という、重要な利害関係のある3者の視点で分析をして経営戦略を構築していく。さらに協力者(Co-operator)を加えることもある(出所:『日経業界地図 2026年版』)
顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)という、重要な利害関係のある3者の視点で分析をして経営戦略を構築していく。さらに協力者(Co-operator)を加えることもある(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 ビジネスには複数の利害関係者がからんでくる。代表的なのが顧客、競合、自社だ。

 顧客の視点にはミクロ(顧客の特性、ニーズ、行動パターンなど)とマクロ(市場の規模、構造/セグメンテーション、成長率など)がある。

 競合の視点とは、ライバルの数、強さ(シェア)、経営資源、差別化ポイントなどを意味する。新たな参入が考えられる場合は、可能性や参入障壁なども入る。自社の視点とはこれらを自分の会社にあてはめたものである。

 こうしてビジネスを成功させる勝ち筋を探す。

プロダクトアウト/マーケットイン:製品を市場化する

作り手の視点で商品をつくるプロダクトアウトと、顧客の視点で商品をつくるマーケットイン。どちらの戦略をとるかによって、企業に求められるものが大きく違ってくる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
作り手の視点で商品をつくるプロダクトアウトと、顧客の視点で商品をつくるマーケットイン。どちらの戦略をとるかによって、企業に求められるものが大きく違ってくる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 商品化には主に2通りのやり方がある。1つはプロダクトアウトで、企業が培った技術やノウハウなどのシーズ(種)に基づいて商品を企画・開発し、市場に届けるやり方。企業がつくりたいものをつくるというスタイルである。先見性のあるアイデアや長期的な視点での技術開発などが大切だ。

 もう1つはマーケットインで、顧客のニーズを丹念に調べ、それを商品化して市場に提供する。プロダクトアウトとは逆に、顧客が欲しがるものをつくるやり方である。顧客との関係性やデザイン力などが求められる。

5F(ファイブ・フォース):業界の構造を分析する

新規参入者の脅威、代替品の脅威、仕入れ先の交渉力、買い手(顧客)の交渉力、同業他社との競合の5つの観点から業界の構造や市場の魅力度を分析し、自社の戦略に役立てる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
新規参入者の脅威、代替品の脅威、仕入れ先の交渉力、買い手(顧客)の交渉力、同業他社との競合の5つの観点から業界の構造や市場の魅力度を分析し、自社の戦略に役立てる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 競争に勝ち残るために、競争が緩やかで魅力的な業界(市場)を選ぶ際に用いるのがM.ポーターが考案した5F(Five Forces)だ。5つの観点から業界が魅力的かどうか、すなわち収益構造を構築できるかどうかを判断する。

 業界に働く圧力を5つの力で表現。参入障壁が低く新規参入しやすい、または代替品に市場を奪われる可能性があれば、業界の構造は変化する。

 原材料を供給する仕入れ先や買い手である顧客が、価格決定に大きな力を持っていれば、自社のコストが不利になる。また、同業他社との競合が厳しければ、苦しい戦いを強いられることになり、自社の利益を圧迫することになる。

PEST(ペスト):外部環境を分析する

事業を取り巻く外部環境を、政治的(Politics)、経済的(Economics)、社会的(Society)、技術的(Technology)の4つの視点で分析していく。上記は分析のイメージ(出所:『日経業界地図 2026年版』)
事業を取り巻く外部環境を、政治的(Politics)、経済的(Economics)、社会的(Society)、技術的(Technology)の4つの視点で分析していく。上記は分析のイメージ(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 企業やビジネスを取り巻くマクロな外部環境を把握しておくことは、ビジョンや戦略を考える上で大切だ。

 PESTでは政治、経済、社会、技術の4つの側面から外部環境を分析していく。

 政治とは政府の方針、各種政策、法改正、規制強化(緩和)などを表し、経済を見るには景気動向や成長率をはじめとするさまざまな景気指数が手がかりになる。

 社会には、人口、文化、暮らしなど社会情勢に関わる幅広いものが入り、主に新技術開発やそのための投資動向を見るのが技術である。

 これらは現在の状況だけではなく、今後の見通しや変化(トレンド)をあわせて吟味する必要がある。

7S:経営資源から組織運営を考える

企業には、3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があり、それら7つの資源をもとにして個々の企業に最適な事業戦略や組織運営を考える(出所:『日経業界地図 2026年版』)
企業には、3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があり、それら7つの資源をもとにして個々の企業に最適な事業戦略や組織運営を考える(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 さまざまな経営資源が有機的につながり、相乗効果を発揮することで企業の成果が達成できる。どれか1つだけを変えてもうまくいかず、総合的に手を打っていかなければならない。

 具体的には自社の戦略(Strategy)を見直し、組織構造(Structure)を変え、システム(System)を整えていく。さらに、企業の価値観(Shared Value)を浸透させ、組織の能力(Skill)を高め、人材(Staff)の育成を目指す。そして何よりも企業の文化(Style)を変えることが大切だ。

 マッキンゼーが開発した7Sを使うと、企業の特質が明らかになり、どこをどのように伸ばしていくか検討できる。

ビジネスモデルキャンバス:価値の仕組みを分析する

活動を通じてどのような価値をどうやって生み出しているのか、ビジネスの仕組みを分析することは、新たなモデルを検討する際に示唆に富んだ情報を与えてくれる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
活動を通じてどのような価値をどうやって生み出しているのか、ビジネスの仕組みを分析することは、新たなモデルを検討する際に示唆に富んだ情報を与えてくれる(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 ビジネスモデルキャンバスは、新しい商品やサービスを考える際に、既存の事業がどういう仕組みで成り立っているか、ビジネスモデルを分析するために有用なツールだ。

 ここでは、顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客関係、収益の流れ、リソース、主要活動、パートナー、コスト構造の順番で、9つの視点を用いてビジネスの仕組みを分析する。すべてが1枚のキャンバスに見える化され、一目で理解できるのが大きな利点だ。

 キャンバスを見ながら、本当の顧客や価値は何なのか、真の強みや弱みがどこにあるのか、どのようにビジネスモデルを革新できるのかを考えていく。

アンゾフの成長マトリクス:事業の成長戦略を考える

市場(顧客)と製品(事業・技術・サービス)、既存と新規の2つの視点を組み合わせることで、事業を成長・拡大させていくための戦略を考える。上記は飲食店のイメージ(出所:『日経業界地図 2026年版』)
市場(顧客)と製品(事業・技術・サービス)、既存と新規の2つの視点を組み合わせることで、事業を成長・拡大させていくための戦略を考える。上記は飲食店のイメージ(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 企業の成長に欠かせない事業規模の拡大には投資とリスクが伴う。そこで、既存事業とのシナジー(相乗効果)を生かした成長を考えようというのが、提唱者の名前をつけたアンゾフの成長マトリクスだ。

 既存市場で既存商品のシェアを高めるのは最も低リスクな作戦だ。他に新開発品の既存市場への投入や、既存商品の新規顧客への普及などのやり方がある。

 真の多角化戦略とは新規市場と新規商品の組み合わせだ。成功すれば飛躍的に事業拡大できるが、リスクが高い戦略であり、シナジーが発揮できるかが勘所となる。

競争戦略ポジショニング:業界での戦い方を決める

競争を勝ち抜くための3つの基本戦略を示したもの。コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略のどれかをやり抜かないと業界で生き残ってはいけない(出所:『日経業界地図 2026年版』)
競争を勝ち抜くための3つの基本戦略を示したもの。コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略のどれかをやり抜かないと業界で生き残ってはいけない(出所:『日経業界地図 2026年版』)
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 企業の戦略を業界での位置取りから考えるのが競争戦略ポジショニング。M.ポーターやP.コトラーが提唱したアプローチで、内部資源や活用能力から戦略を考えるやり方と二大潮流をなす。

 コストリーダーシップ戦略は、幅広い品ぞろえと圧倒的な低コストで、業界一のシェアを占めようとする。差別化戦略は、商品やサービスに新たな付加価値をつけ、他社と差別化することで高い利益を目指す。そして集中戦略は、特定の市場、顧客、商品に経営資源を集中させ、他社が入りこめないような状況をつくりあげるよう努める。

出典/日経文庫『ビジュアル ビジネス・フレームワーク[第2版]』 協力・監修/堀公俊

投資、企業研究、マーケティングリサーチに!

業界の基本が1分でわかる! 『日経業界地図 2026年版』では、過去最多の201業界、4900企業・団体を収録。日経記者が総力をあげて取材し、業界ごとに企業の提携・勢力関係を図解で示します。企画や提案に役立つ巻頭特集を拡充し、業界規模グラフなどでより見やすく、より使いやすくなりました。

日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)