私たちの生活や企業はもちろん、社会を支え、未来を切り拓く原動力の新材料・新技術。ここでは、物質・材料科学の研究を専門とするNIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)の協力のもと、注目の新材料を取り上げて紹介する。『日経業界地図 2026年版』(日本経済新聞出版)の巻頭特集から抜粋、再構成。
■FMS合金制振ダンパー
・何がすごい?
地震など外から力が加わった際に、原子の並びがちぎれて金属が壊れることのないように変形し、振動を吸収する。また、反対向きに揺れる地震の「揺り戻し」を利用して、変形しても元の原子の並びに戻る。さらに、繰り返す負荷による破壊に耐えられる回数が、従来の材料と比べ10倍も多い。
・何に使える?
高層ビルを繰り返し襲う地震による被害防止や最小化など
■液晶高分子アクチュエータ
・何がすごい?
モノの感触を振動などにより伝達するアクチュエータ。これにイオンを流す液晶を使用して、しなやかに曲がるようにした。そして、従来の金属素材では実現できなかった、力の強弱のコントロールが自在にできるようになった。
・何に使える?
将来的には、遠隔診療や仮想空間でのライブ体験、ネットショッピングでの商品の手触り確認など
■多孔性インジェクタブルゲル
・何がすごい?
インジェクタブルゲルは、体内に注入すると固まり、その場にとどまるゲル。従来はナノメートルの孔(あな)を持つゲルが主流だったが、それより大きい、細胞が育つのに適したマイクロサイズの孔のゲルを開発。また、繊維状に広がり、多くの孔を持つため、細胞の成長に必要な酸素や栄養が行き渡りやすく、細胞同士のコミュニケーションが強まる。これにより、細胞が接着し、増殖しやすくなる。
・何に使える?
病気やケガで臓器などが機能を失った場合の治療
■酸化物系全固体電池
・何がすごい?
日常的に使われているリチウムイオン電池の基本構成はそのままに、電解質のみ液体から固体に置換したものが全固体電池だ。有毒ガスが発生しないという特長を持つ。さらに充放電の繰り返しによる容量低下も起きにくい。高容量かつ長寿命化も期待される。
・何に使える?
電気自動車(EV)の航続距離の延伸
■ペロブスカイト太陽電池
・何がすごい?
100℃程度の環境下で、印刷などによって簡易な工程で製造できる太陽電池。NIMSでは新たな材料を使用して、太陽光発電で一般的な発電効率20%を維持したまま、1000時間の連続発電を可能にした。また、人体に有害な鉛ではなく、スズを用いたペロブスカイト太陽電池を独自開発。これは鉛フリーペロブスカイト太陽電池として世界で初めて、国際標準試験機関(*)から発電効率10%超の認証を得た。
・何に使える?
家庭や商業用施設などでの発電
■磁性熱動体
・何がすごい?
磁気・電気・熱のエネルギーは相互変換が可能だ。磁性熱動体とは、磁気の起源である電子のスピン(電子が持つ回転の勢いを表す量)を利用して、熱を自在に制御する機能性材料の総称のこと。熱変換、熱制御、熱移送の3本柱で研究開発中。そのうちの熱変換は熱電永久磁石として実現しつつある。今後、熱変換の高効率化、低コスト化、耐久性向上が期待できる。
・何に使える?
熱電発電・冷却
■HDD大容量化
・何がすごい?
HDDを大容量化する(1ビットあたりの体積を低減し、密度を高める)ことで、データセンターで使われるHDDの台数を減らし電力消費を削減。HDDのディスクに新たに開発した材料を使用する、ディスク1枚あたりの磁性層を増やした3D媒体を作製して各層で情報を記録するなどの方法で、大容量化を目指す。
・何に使える?
データセンターの省エネ
■MgB₂超伝導線材
・何がすごい?
本来は鉛筆の芯のように硬くてもろいMgB₂(二ホウ化マグネシウム)で、曲げても折れないしなやかな線材を開発。これにより、用途によってサイズや形状が違うコイルに巻けるように。コイルに巻いて電流を流すと強力な磁場を発生させられる。また、人の頭髪より細くし、複数本をより合わせて使うことでエネルギーロスを大幅に低減できる。
・何に使える?
電動航空機用超伝導モーター、磁気共鳴画像装置(MRI)
協力・監修・クレジットのない写真/NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)
業界の基本が1分でわかる! 『日経業界地図 2026年版』では、過去最多の201業界、4900企業・団体を収録。日経記者が総力をあげて取材し、業界ごとに企業の提携・勢力関係を図解で示します。企画や提案に役立つ巻頭特集を拡充し、業界規模グラフなどでより見やすく、より使いやすくなりました。
日本経済新聞社編/日本経済新聞出版/1980円(税込み)










