「人生100年時代」がバズワードになったのは記憶に新しいところですが、100歳まで生きる人が当たり前になると、次は人生130年時代がやって来るとか……。長い人生を充実させるカギは仕事と○○活動の両立にあると、人事コンサルタントの新井健一氏は唱えます。新井氏の著書『それでも、「普通の会社員」はいちばん強い 40歳からのキャリアをどう生きるか』から抜粋します。

人生130年時代が近づいている

 人生100年時代と言われるようになった。金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」に端を発した老後の生活費不足問題、その金額が2000万円と公表されて世間をざわつかせた。

 とはいえ、企業研修などで受講者に「100歳まで生きる実感はありますか?」と聞いてみると、「ない」と答える人も多いのが現状だ。

 しかしながら、令和の時代を迎えた現在、日本人の平均寿命は男性81.05歳、女性87.09歳であり、60歳くらいまで大病をせずにいる人は、90歳や100歳まで生きる時代が来ていると言われたらどうだろうか。

 総務省の統計では、夭折(ようせつ、年若くして亡くなった)した日本人も、同じ母集団に含めて平均年齢を算出するため、値を押し下げているそうだ。現に、2022年9月15日時点で、総人口1億2471万人中、80歳以上の国民は1235万人、100歳以上の国民は9万人いる。

「100歳まで生きる」と言われてもなかなか実感できないが……(写真:beeboys/stock.adobe.com)
「100歳まで生きる」と言われてもなかなか実感できないが……(写真:beeboys/stock.adobe.com)
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 そしてもう一つ。人生100年時代が当たり前の世の中になってくると、次は人生130年時代がやって来る、そう言われても100歳生きる実感がわかないだろうか。

 ちなみに「人生130年時代」と「人生100年時代」、それぞれの時代における老衰を除いた死因のナンバーワンに関する予測がショッキングだ。

 まず、人生130年時代だが、AIによる医療サービス提供コストが限りなくゼロに近づくため、病気では簡単に死ねない。そんな時代、人は天寿を全うするか、(ここでは倫理的な話は抜きにして)自ら命を絶つか選択することになるようだ。

 では次に、人生100年時代の老衰を除く死因のナンバーワンはなんだろう? これは、人生130年時代から時間を巻き戻してみると、そこにヒントが隠されている。

 まだ人生100年時代では、AIによる医療サービスコストがゼロにはならないから相応のお金がないとサービスを受けられない。

 だから、人生100年時代は、金がなくなったら死ぬ。

 やや切ない方向に話はそれたが、我々の平均寿命が延びるという方向性は確実であるとして、寿命の延びに相応する生活をどう充実させるかは、誰にとっても関心事であろう。

生きがいがある人は認知症になりにくい?

 ちなみに、厚生労働省の調査によれば、2010年で「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ(*1)以上の高齢者数は280万人であり、また当時の将来推計では、2020年には410万人、25年には470万人に達すると予測している。

 これに対し、海外のアルツハイマー型認知症の研究(*2)によれば「生きがい(人生の目的)」の有無によって認知症の進み方がまったく違うことが分かっている。生きがいがある人は認知症の進行が緩やかになるわけだ。

 日本生命が開設・運営するウェブサイト「認知症を考えるみんなのためのメディア 100年人生レシピ」では、平均80歳の男女900名を対象とした調査において、生きがいがある人はない人と比べ、約2.4倍アルツハイマー型認知症になりにくいことが分かったことを紹介している。

 また、同サイトでは、アメリカの医学雑誌によれば、「人生に生きがいを持っている人は、持たない人の約5分の1の死亡率であった」とも説明している。

*1 「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱとは、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意すれば自立できる状態を指す。
*2 Effect of purpose in life on the relation between Alzheimer disease pathologic changes on cognitive function in advanced age

仕事と○○の両立がカギになる

 それでは、当の「生きがい(人生の目的)」とは何か、何によってもたらされるのか。例えば、内閣府の調査によれば、調査対象となった日本の高齢者1239名の仕事や社会貢献活動への参加と生きがいの関係について、次のことが分かっている。

  • 性別は生きがいには影響しない。
  • 単身世帯の高齢者は、それ以外の世帯の高齢者に比べて「生きがい」が低くなる。
  • 「経済的に困っていないこと」、「健康であること」、「相談できる友人などがいること」、「他者との会話頻度が多くなること」は、「生きがい」の向上に貢献している。
  • 仕事だけでなく、社会貢献活動への参加は、「生きがい」の向上に貢献している。
  • 仕事のみと社会貢献活動のみを比較すると、社会貢献活動に参加することは「生きがい」へのプラスの影響が大きい。
仕事と社会貢献活動が生きがいを向上させるという(写真:Monet/stock.adobe.com)
仕事と社会貢献活動が生きがいを向上させるという(写真:Monet/stock.adobe.com)
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 これらの分析結果から言えることは、少なくとも日本の高齢者にとって、仕事や社会貢献活動への参加は、いずれにも参加していない者に比較して、「生きがい」の向上に貢献しており、その貢献度は次の順位となる。

■「生きがい」への貢献度
「仕事と社会貢献活動の両者に参加」>「社会貢献活動のみに参加」>「仕事のみ参加」>「いずれも参加していない」

 そして、当調査結果の分析・解説では、まとめとして仕事と社会貢献活動の関わりを次のようにまとめている。

 高齢期にも「生きがい」を持ち続けるためには、仕事を辞めても、その代わりに社会貢献活動に参加することが大事になると言える。しかし、仕事のみの生活を長期に続けていながら高齢期に仕事を辞めた直後から、社会貢献活動を新たにはじめることは難しいと考えられる。それを踏まえると、高齢期に到達する前から仕事だけでなく、社会貢献活動にも参加しておくことが大事になろう。若い時期から仕事と社会貢献活動の両者に参加しておき、高齢期に仕事を引退したあとは、社会貢献活動を継続し、社会貢献活動に軸足を移すことが「生きがい」を維持するために有効と言えよう。

出典:内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」第4章 調査結果の分析・解説まとめ

 ここで、同調査からいま一歩踏み込んでみたい。

 人は、仕事や社会貢献活動により「経済的に困っていないこと」、「健康であること」、「相談できる友人などがいること」、「他者との会話頻度が多くなること」のすべて、もしくはいくつかを充足することができるが、それらは人生の目的なのだろうか。

 確かにこれらは「生きがい(人生の目的)」を満たす手段ではあるだろうが、目的そのものではないように感じるのは筆者だけだろうか。

 ちなみに、著書『それでも、「普通の会社員」はいちばん強い』のテーマの中心にある仕事であるが、その目的も例えば「経済的に困らないようにすること」としてしまうと、「生きがい(人生の目的)」との相関という観点から、矮小(わいしょう)に過ぎるだろう。

 人生100年時代、我々は「生きがい(人生の目的)」と仕事、そして社会貢献活動とのつながりを年齢にかかわらず常に意識し、密にしておくことが極めて重要であり、そこに仕事の充実、満足、成功のカギがあると筆者は認識する。

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新井健一著/日本経済新聞出版/1760円(税込み)