データセンターについて学びたいという読者に向けて、データセンターの構築に25年以上携わってきたLXスタイル 代表取締役の杉田 正さんが良書を推薦するコラムの最終回。今回は、データセンターが社会インフラとなるために避けては通れないエネルギー問題に関して、解決策となるワット・ビット連携を取り上げた書籍を2冊紹介します。

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データセンターの建設は電力確保を併せて考える

『ワット・ビット連携』馬橋義美津、明道保衛、山田智之著、電気書院
『ワット・ビット連携』馬橋義美津、明道保衛、山田智之著、電気書院

 データセンターの需要は急速に拡大しています。それに拍車をかけるのは、前回も説明しましたが、AIの推論用途が拡大していることです。推論用途は学習用途と異なって、24時間・常時発生し、回数も桁違いに多くなると予測されます。データセンターはこれまで以上に大量かつ継続して電力を消費する存在になるという恐れがあります。

 こうした背景のもと、現在注目されているのがワット・ビット連携です。ワット・ビット連携とは、その名の通り、「電気(ワット)」と「情報処理(ビット)」を別々に考えるのではなく、一体として最適化しようという考え方です。これまでは、計算処理をどこで行うかは通信や利便性が重視され、電力は後追いで確保する発想が主流でした。しかし、AI推論が主役となる時代には、「どこで、いつ、どれだけ電気が使えるか」を前提に、データセンターの配置を考える必要が出てきたといえるのです。データセンターが、真のインフラとなるためには、ワット・ビット連携の意味や動向を正確に知る必要があります。

 ワット・ビット連携を知る入り口として紹介するのが『ワット・ビット連携』(馬橋義美津、明道保衛、山田智之著/電気書院/2025年9月刊)です。ワット・ビット連携では、電力システムと情報通信システムという異なる原理、異なる文化を持つシステムを融合させるため、さまざまな課題があります。同書では、このような課題も取り上げながら、体系的にワット・ビット連携について解説しているのが特徴です。

 ワット・ビット連携を支える基盤技術に関しても、ワット側とビット側の双方から要素を挙げて解説しています。また、歴史を振り返るとともに、国内外のワット・ビット連携の最新事例もカバーしています。2025年9月に発行されたばかりなので、ワット・ビット連携の今を知るためには、適した一冊といえるでしょう。

政府が描くデータセンターの次世代像

『ワット・ビット連携データセンター 2025-2026 AI時代に多様化・分散化するデータセンター新時代』江崎浩監修、インプレスSmartGridニューズレター編集部編集、インプレス
『ワット・ビット連携データセンター 2025-2026 AI時代に多様化・分散化するデータセンター新時代』江崎浩監修、インプレスSmartGridニューズレター編集部編集、インプレス

 最後にもう一冊紹介するのもワット・ビット連携に関する書籍です。『ワット・ビット連携データセンター 2025-2026 AI時代に多様化・分散化するデータセンター新時代』(江崎浩監修、インプレスSmartGridニューズレター編集部編集/インプレス/2025年11月刊)は、東京大学大学院 情報理工学系研究科の江崎浩教授監修のもとで、AI時代のデータセンターを実現するため、どのようにして電力・通信インフラを整備していくのかを解説した書籍です。私も、その一部を執筆していますが、執筆に携わっているのは、いずれも電力・通信業界の第一線で活躍している専門家の方々です。

 前述したようにデータセンターに必要な電力需要の問題は深刻であり、その整備は日本においても重要な政策課題となっています。このため、経済産業省および総務省は、今後のデータセンターの整備を見据え、「ワット・ビット連携官民懇談会」を2025年3月に発足し、6月には「ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0」を公表しました。江崎先生は、ワット・ビット連携官民懇談会において主査を務めています。

 同書においては、まずAI時代のデータセンターの課題を明らかにしたうえで、ワット・ビット連携官民懇談会が描くデータセンターの次世代像について紹介しています。また、データセンターにおける最新技術、ワット・ビット連携に関する最新技術も網羅しており、この一冊でワット・ビット連携の詳細が理解できるはずです。かなり高額なので、気軽に手に取ることができないかもしれませんが、将来のデータセンター像を考える意味では有益な一冊であることは間違いありません。

 これまで3回にわたってデータセンターに関連する書籍を紹介してきました。現在、データセンターは建設ラッシュを迎えているものの、建設しただけでは何の意味もありません。そこで運用するサーバー群を意味あるものとし、日本の産業の活性化に結び付けなくてはならないでしょう。そういった意味でも、多くの方にデータセンターの本質を理解していただき、AIをはじめとする各種のアプリケーションをイノベーションの創出につなげてもらいたいと感じています。

杉田 正(すぎた・ただし)
LXスタイル 代表取締役
産業技術総合研究所 情報・人間工学領域のテクニカルスタッフとして、データセンター省エネ技術研究・省エネ水排熱スパコンABCI構築に従事。それ以前は、レンタルサーバ会社にてブレードサーバ省エネデータセンターの構築に携わる。VPSサービスや省エネデータセンター構築で25年以上のキャリアを持つ。

(取材・構成:木村 知史=CocoSmile 編集者)