急拡大する宇宙ビジネス市場を学びたいという読者に向けて、立命館大学の中須賀真一教授が良書を推薦する2回目です。今回は主には中級者に向けて、宇宙ビジネスを進めるうえでは必須となる各種法律に関して理解が深まる書籍と、宇宙ステーションの概要を解説した書籍を紹介します。

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ビジネスを進めるうえで必須の法を学ぶ

『宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第3版』小塚荘一郎著、佐藤雅彦著、有斐閣
『宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第3版』小塚荘一郎著、佐藤雅彦著、有斐閣

 宇宙ビジネスを進めるうえで難しいのは、法律への対応です。宇宙空間は、宇宙条約により特定の国が領有できず、「誰のものでもない」場所とされています。地上の土地のように所有権が明確ではないので、衛星の位置や宇宙資源の扱いなど法律で細かく整理しなくてはなりません。また、企業が行う活動であっても最終的な責任は国が負うため、打ち上げや運用には厳しい許認可が求められます。このように宇宙ビジネスは、国際ルールと各国法規の両方を踏まえて進める必要があり、他の産業以上に法的な配慮が重要となります。

 このため、宇宙ビジネスを本格的に検討するためには、宇宙に関連する法律を学ばなくてはなりません。そういった方に向けて必読書となるのが、『宇宙ビジネスのための宇宙法入門 第3版』(小塚荘一郎著、佐藤雅彦著/有斐閣/2024年5月刊)です。宇宙での活動を規律する法律や二国間で定められている法律、日本での法律など、宇宙ビジネスを進めるうえで考慮すべき法律が網羅されています。

 同書では、宇宙に関連する法律を、適用範囲と対象により4つの領域に分けています。まず国際公法は、国家間のルールで、宇宙条約のように宇宙利用の原則を定めています。国際私法は、国境をまたぐ企業活動において、どの国の法律を適用するかなどを調整する枠組みです。国内公法は、各国が定める許認可や安全規制など、公的なルールを定めています。そして国内私法は、企業間の契約や損害賠償といった民間取引のルールであり、宇宙ビジネスの実務を支える基盤となります。企業は、自らがビジネスを行ううえで、どれを知っておくべきかを理解し、対応しなくてはなりません。

 初版が発売されたのは2015年1月です。それ以降、宇宙に関連する法律は、民間宇宙ビジネスの拡大を受けて、各国で整備が一気に進みました。例えば日本においても、2016年には宇宙活動法が制定され、ロケット打ち上げや衛星運用に許可制が導入され、安全管理や損害賠償の枠組みが整備されました。このような背景を受けて、同書も2回の改訂を行い、現在では第3版として最新の法律などを内容に反映しています。

巨大な司令塔、宇宙ステーションの役割や構造

『宇宙ステーション入門 第2版補訂版』狼嘉彰著、冨田信之著、中須賀真一著、松永三郎著、東京大学出版会
『宇宙ステーション入門 第2版補訂版』狼嘉彰著、冨田信之著、中須賀真一著、松永三郎著、東京大学出版会

 中級者向けに次に紹介する書籍は、『宇宙ステーション入門 第2版補訂版』(狼嘉彰著、冨田信之著、中須賀真一著、松永三郎著/東京大学出版会/2014年12月刊)です。ISSと呼ばれる国際宇宙ステーションは、1998年に最初のコンポーネントが打ち上げられ、その後も建設が継続されている巨大な施設です。私も執筆の一部を手掛けた本書の初版は、まだISSの本格活用が始まる2002年に発行しました。その後、改訂版には運用段階などの最新情報を加えました。

 宇宙ステーションというと、読者の方は何を想像するでしょうか? よくテレビなどで放映されるのは、ISSに滞在する宇宙飛行士が各種の実験を行うシーンです。近年では、新医薬品や新素材など、無重力環境においての実験などが盛んに行われています。もちろんISSはそういった開発に貢献する側面もありますが、その他にも生命維持システムなど宇宙に長期滞在するための技術の検証、気候変動や災害監視など地球の観測データの取得、さらには国際プロジェクトを通じた文化交流などの様々な役割を担っています。

 同書は、上記のように様々な観点で重要であるISSを体系的に紹介しています。人工衛星よりはるかに大型で複雑なISSの必要性や歴史、軌道力学、制御理論、運用システムなどについて専門家の目で解説しました。

 内容はかなり高度ですが、なるべく平易に表現しておりますので、頑張って読み進めていただけたらと思います。宇宙ビジネスにおいてISSは上記のような重要な位置を占めますので、ISSを理解することで、新たなビジネスのアイデアも湧いてくるかもしれません。

 今回は、宇宙ビジネスを学ぶ書籍を、中級者向けに2冊紹介しました。次回は、宇宙ビジネスの最終回として、私が読者の皆さんにぜひ読んでいただきたい書籍を紹介します。

中須賀 真一(なかすか・しんいち)
立命館大学 総合科学技術研究機構 教授
2026年4月より現職。2028年4月より立命館大学宇宙地球フロンティア研究科(仮称・設置計画中)研究科長就任予定。1983年、東京大学工学部航空学科卒業、1988年、同大学院博士課程修了、工学博士。日本アイ・ビー・エムで人工知能や自動化工場に関する研究を行う。1990年、東京大学航空学科講師。東京大学先端科学技術研究センター助教授、アメリカでの客員研究員を経て、2004年、東京大学航空宇宙工学専攻教授。専門分野は宇宙工学と知能工学。2003年、世界で初めての1㎏人工衛星の打ち上げ成功後、現在まで超小型人工衛星16機の打ち上げに成功。2012年~2022年まで内閣府宇宙政策委員会委員、基本政策部会長など歴任。超小型人工衛星、宇宙システムの知能化・自律化、革新的宇宙システム、航法誘導制御等の研究と教育に携わる。

(取材・構成:木村 知史=CocoSmile 編集者)