「嫌な仕事」は自分の能力や時間に照らし合わせて断ることも必要だ。ただし、嫌な原因が「やり方を聞けない」「味方がいない」なのであれば、相談やアドバイスを1枚の紙にまとめて求めることで解決できる場合もある。書籍『嫌な仕事のうまい断り方』(日経BP)の著者で戦略コンサルタントの山本大平さんに4回にわたって聞いた。今回は第1回。
そもそも断っていい仕事とは
社会人になって仕事をしていると、「嫌だな」「この仕事をやる意味があるのかな」と思うときがあるのではないでしょうか。若手と呼ばれる人ほど「断ったら、上司からの印象が悪くなる」などと考え、嫌々ながら引き受けてしまっているかもしれません。
でも、僕は「そもそも、嫌な仕事は断ってもいい」と考えています。
嫌な仕事にもいろいろと種類がありますが、例えば「自分の能力的に厳しい仕事」というものがあります。上司から「100メートルを8秒で走るようなレベル感の仕事をやってくれ」と言われても、それは無理ですよね。多分、現時点で世界中の誰もが成し遂げられないでしょう。
それから、「時間的に無理な仕事」。納期が急すぎる、別件が進行中といった場合も断らないと自滅します。断るときはあれこれ理由をつけずに「申し訳ありませんが今は時間的に無理です」と、シンプルに事実を伝えればOKです。
ただ、本当にその仕事が嫌なのではなく、「誰にも仕事のやり方を聞けない」「周囲に味方がいない」などといった要因で「嫌な仕事(この場合は「やり方すら分からない仕事」)」が発生しているケースもあるのではないでしょうか。
例えば、リモートワークがメインの職場で周囲とのコミュニケーションがない。あるいは直属の先輩と年が離れている。こういった職場だと、気軽にアドバイスがもらえないですよね。誰に聞けばいいかも分からない、そして悩んでいるうちに納期が近づいてくる……となると、憂鬱です。
もし、こうした理由で嫌と感じてしまう仕事があるのなら、非常にもったいない。なぜなら、「嫌な仕事」の中にも10年後の自分を助けてくれる仕事が含まれているかもしれないからです(これについては第3回でお伝えします)。
「聞くのが嫌」の末路
なぜ、「聞くのが嫌」なのかというと、「聞くのが恥ずかしい」「仕事ができないと思われたくない」といった理由が多いのではないでしょうか。でも、誰にも聞かずに自己流で進めて、まったく見当違いの結果になってしまったほうがよっぽど「恥ずかしい」し、「仕事ができないヤツ」だと思われませんか。仕事の目的ややり方が分からないまま進めるのは、問題文を読まないでテストを解くようなものです。
そうなると、やはり嫌でも仕事のやり方を聞くしかありません。一番いいのは、仕事を振られたその場で「この仕事の狙いはなんですか」あるいは「どう進めるべきですか」と確認すること。ビジネスはスピードが命ですから、その場で解決したほうがいい。
仕事を振る側も、納品される仕事が的を射た状態で欲しいわけですから、堂々と仕事の目的や納品状態を確認すればいいのです。納期の直前になって聞くと、「分かっていない上に、まだ進めていなかったのか」とも思われてしまいます。
また、日頃から、上司と能動的なコミュニケーションを重ねておくことをお勧めします。何も毎日雑談する必要はなく、廊下やお手洗いで会ったら「おはようございます」「お疲れさまです」と挨拶する程度でかまいません。そのときに、上司のほうから「あの件はどうなった?」と聞いてくれたらしめたもの。「ちょっと○○の進め方が分からなくて……」と言うことができます。
その上で、「誰かに何かを聞く」ときは観察力も必要です。例えば、上司が毎日コーヒーを飲んで休憩する人であれば、その休憩が終わるタイミングで聞きに行く。人間は誰しも気分の波がありますから、リラックスできている瞬間とそうでない瞬間があります。同じ聞くなら、リラックスしているタイミングで聞きに行ったほうがお得で、「忙しいのになんで今、聞くんだよ」と嫌われるリスクも減ります。
このときに、自分の言葉がまとまらないまま質問するのは相手にとっても迷惑ですから、1枚の紙を用意していく。僕はこの1枚手法を昔から多用していますが、A4で1枚の紙に1分で読める資料を用意し、上司にサッと目を通してもらうのです。A4で1枚の紙にまとめるのは自分の考えの整理にもなります。
一方で注意したいのは「結論から書くな」ということ。よく「資料は結論から書け」とも言われますが、冒頭に「3社コンペ、B社に決定します」と書いてあったら、上司は「そもそも何のコンペ?」となります。「タイトル」「結論」「論拠」「補足」という順番にすると、格段に相手に伝わりやすくなります。また、最後の補足(例:「この件についてはB社営業部の○○さんと話しました」)は、上司がB社の○○さんと話すなど何かのときに役立つことが多いので、情報を足しておきましょう。
タイミングとコツさえつかめば、人に何かを聞くのは怖くありません。ぜひ試してみてください。
取材・文/三浦香代子 取材・構成/栗野俊太郎(日経BOOKSユニット) 写真/鈴木愛子
その仕事、やる意味あるのかな? 嫌なものは嫌。断っていいんです。つらい職場を脱出するテクニックから自分主体の人生を生きるためのキャリア構築まで、戦略コンサルタントが語ります。
山本大平著/日経BP/1650円(税込み)


