AI(人工知能)は今、バブル状態にある。そのバブルは深層学習を基礎とした生成AIの登場によって急速に膨張した。しかしバブルであるがゆえに、いつかそれは必ず崩壊し、そしてその瞬間は間もなく訪れる。本コラムでは書籍『AIバブルの不都合な真実』(クロサカタツヤ著、日経BP)から抜粋し、AIをめぐる現在の状況を筆者が「バブルである」と断言する理由について、根拠となる事実や数字を交えて解説する。第2回は過剰な資金流入の実態について考察を。

AIがバブルであると断言する理由2:過剰な資金流入

 第2の理由は、投資マネーが対象を吟味することなく、AI関連と名の付くあらゆるものに流れ込んでいる点である。これは典型的なバブルの兆候であり、いわば「どんな燃料でも燃やせば燃える」という状態である。

 実際、近年のベンチャー投資動向を見るとAI関連への資金集中が顕著だ。2023年以降、VCによる全体投資額が減少局面にある中でAIスタートアップへの投資だけが突出して増加している。2025年上半期の米国スタートアップ投資額は1628億ドルに達し、前年同期比で75.6%増という異例の伸びを示したが、その投資額の実に64.1%もの金額がAIセクターに集中していた注4

 これは、全スタートアップ投資の約3分の2がAI関連で占められたことを意味する。投資金額がこれほど特定分野に偏るのは極めて異例であるのと同時に、新たな価値の創造が新事業の意義だとすれば、多様性が失われている状態はスタートアップに期待される役割を果たしていないことになる。それでも偏りが発生するということは、いかに「AIなら何でも」資金が集まる風潮かがうかがえる。

 また、個別の大型資金調達も次々に報じられた。代表例がオープンAIで、2023年に米マイクロソフト(Microsoft)からの追加出資を含め巨額の資金調達を行った後、企業評価額は900億ドル(約13兆円)に達した。スタートアップであるオープンAIが、わずか数年でトヨタ自動車に匹敵する評価額に跳ね上がった計算だが、2025年8月現在ではさらに3000億ドル(約44兆円)に達しているようである。

 一方、米スタビリティーAI(Stability AI、画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元)は、2022年に1億ドル超の資金を集め企業評価額10億ドル(約1500億円)に到達したが、その後経営が揺らぎ2024年には大規模リストラに追い込まれた。驚くべきはその後で、それでもなお投資家から見放されず追加出資を受けている。これも「話題性さえあればとりあえず巨額マネーが集まる」傾向だといえよう。

 株式市場に目を転じても状況は同様だ。生成AIブームの火付け役となったエヌビディアの株価は2023年に年初から年末までで約3倍に急騰し、同社の時価総額は2023年6月に初めて1兆ドルを超えてから約1年で3兆ドル規模へと膨れ上がった。2025年7月には時価総額4兆ドル(約580兆円)を突破し、米企業史上初の快挙と報じられている。

 わずか数年でエヌビディアの企業価値は10倍以上に跳ね上がり、AI需要への過度な期待が株価をストレートに押し上げたかたちだ。同社のPER(株価収益率)は直近で50~100倍前後とも推定され、同業他社である米AMDや米インテル(Intel)の2~3倍水準に達している。

 また市場全体でも、S&P500やNASDAQ指数の上昇を支えているのは一握りのAI関連大型株だけという偏った状況だ。ECB(欧州中央銀行)の金融安定報告によれば、米国株式市場はAIブームの恩恵を受ける数社、つまりエヌビディアやマイクロソフト、米アップル(Apple)、そして米グーグル(Google)親会社の米アルファベット(Alphabet)などへの依存度を強めており、この少数の巨大企業に利益予想が裏切られた場合、同市場のバブルが崩壊するリスクが高まっていると警告注5している。

 さらに著名投資企業である米アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミストであるトルステン・スロック氏は、現在のAIブームに乗る時価総額上位10社の株価評価は1990年代末のITバブル期以上に割高であると指摘し、その証拠に上位10社の予想PERが2000年のITバブル絶頂期を上回る水準に達していると分析注6している。

 これらの事実は、AI関連であれば業績や実態以上に高値がつくという投資家の「陶酔状態」を如実に示している。すなわち「AI」と名が付けば未成熟な技術や赤字企業にまで巨額の資金が殺到し、株式市場でも実力とかけ離れた買いが入る―そうした過剰流動性がいまのブームに燃料を投下しているのだ。どんな粗悪な燃料でも炎を大きくしてしまうように、選別眼を欠いた資金がAI業界全体を猛烈な勢いで膨張させている。

投資マネーが対象を吟味することなく、AI関連に流れ込み、粗悪な燃料でも炎を大きくしてしまう(写真:Olga Miltsova/stock.adobe.com)
投資マネーが対象を吟味することなく、AI関連に流れ込み、粗悪な燃料でも炎を大きくしてしまう(写真:Olga Miltsova/stock.adobe.com)
注4 https://www.reuters.com/business/us-ai-startups-see-funding-surge-while-more-vcfunds-struggle-raise-data-shows-2025-07-15/
注5 https://www.reuters.com/world/europe/ecb-warns-bubble-ai-stocks-funds-depletecash-buffers-2024-11-20/
注6 https://gizmodo.com/wall-streets-ai-bubble-is-worse-than-the-1999-dot-com-bubblewarns-a-top-economist-2000630487

(書籍『AIバブルの不都合な真実』を基に再構成)

日経クロステック 2025年10月6日付の記事を転載]

2025年現在、世界は明らかにAIバブルのただ中にある。投資の過熱、不透明な評価、過剰な期待、未成熟な制度、そして現場の混乱……どれをとっても、2000年前後のドットコム・バブルやスマートフォンバブルと酷似している。泡がはじけ、地面が見えるからこそ、本当に根付く技術が選ばれ、その技術を「正しく使える者」が生き残る。本書はAI技術の真贋を見極め、正しく使うための視座を提供する。

クロサカタツヤ著/日経BP/2530円(税込み)