新刊『 妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話 』の著者、編集Yこと山中浩之氏が日経ビジネス電子版で始めた連載「数字で縛ればやる気が逃げる」。自著の取材を振り返りながら、あれこれ考えを深めていくコラムを日経BOOKプラスでも転載させてもらうことになりました。とても面白い記事なのでぜひ読んでいただきたいのですが、せっかく「本の情報」を発信する当サイトですので、元記事には収録されていないオリジナルコンテンツとして、記事の関連箇所を書籍から抜粋して掲載します。本書の主人公たる相模屋食料の鳥越淳司社長と編集Yのテンポの良いやり取り。そこで明らかになっていく「数字の罠」とその飛び越え方。記事と共に、本の魅力もしっかりお伝えできれば幸いです。第8回は「サイロ化」について考えます。(日経BOOKプラス編集部)

 前回「相模屋に数値目標がないのは『ないほうが売れるから』です」で、相模屋食料(以下、相模屋)には、工場にも営業にも「損益責任」や「数値目標」がない、数字の責任はすべて社長(鳥越淳司氏、以下鳥越社長)が取る、という話を紹介した。

 ただし、数値で責任を問われないということは、いいことばかりではない気もする。例えば権限も与えられないのではないだろうか。

 「もちろんそんなことはありません。相模屋は組織の階層が少なくて、権限も私に集中させていますが、それは『現場との意見のキャッチボール』を正確に、素早く行うためです。『こっちに情報を全部よこせ、そして考えるのは全部俺だ』という話ではないので。
 指示をするのが私だけ、ということもありません。『こうしたい』という現場の意見はどんどん来ます。でなければこんなに業績は伸びてません。最近は相談の『どうしましょう』よりも『こうしました』という報告のほうが多くなってきてます」(鳥越社長)

 であれば、社長の仕事は何になるのか。必ずしも決断そのものでないならば、バランス取りだろうか? これを問うと、答えは「権限集中はひとえに全体最適のため」とのことだった。

全体最適を阻むのは誰か

 「言い方を変えると、社内を私を媒介にして『つなぐ』ために、数字で縛らないようにして、権限を私に集めています。同じ情報でも、個々の工場、営業の担当者が、個別の最適を意識して見る場合と、相模屋全体としての最適を考えて見るのとでは、全然違う結論になる。こういうことはよくあります。そこで、『A工場はこう思うだろうし、B工場はこうしたいだろうけれど、これとこれでこうつながるから、これはC工場がやっておいて』というように、個々の事情は知りつつも、会社全体を見て個々の部署をつないでいくのが、社長である自分の仕事じゃないかと」

 個々の部署が自分の利益を最大化すべく動くとどうなるかは、読者の皆様のほうがよくご存じだ。前回もコメントでたくさんの共感をいただいたが、ここで再掲しておこう。

 これは会社員ならみな経験があるところで、組織に生きる人間のサガでもあるのだろう。責任と権限は表裏一体だから、全体最適よりも、まず自分の権益がどうしても気になるのだ。

 「そうなると必ず出てくるのが『やれと言われればやりますが』という前置き、そして『でも、できる限りですよ』という〆の文句です(笑)。そして、可能な限り自分の部署に影響のない、極小レベルで、ほとんどフリだけの協力をして、それで『やってあげた』という余計な主従関係までつくろうとする」

 たいした協力もしてもらえず、恩に着せられた部署は反発を強めるので、連携を取るどころか、会社の中が個別最適に走ってバラバラになっていく。

 「社内がバラバラだから、部署間を調整する新しい組織が必要だ、なんてことになる。すると今度は『部署間を調整する部署に、いかに正論をぶつけて抵抗するか』が、各部署のメインテーマになって、割を食うのは全体のために協力する意識があるところや、抵抗する術(すべ)を持たない組織になる。いいヤツほどひどい目に遭うということです。いや、久しぶりにこういう話をするとサラリーマン時代がよみがえりますね(笑)」

マスク氏いわく「(サイロ化は)人間の生まれつきの性質だ」

 「そして、こういう社内調整が求められると、意思決定も実行もスピードががた落ちになります。決める内容も『どこからも文句が出ないように』と、丸めたものになると思うんです。もっと言うと、どこからも文句を出さないために報告先がやたらと増えて、実動部隊の足かせになったりもします(笑)。こういうことは働く人のやる気を痛めつけるので、笑いごとじゃないんですけどね」

 決定が遅れ、しかも総花的で、現場の動きややる気も縛るとなれば、その施策が市場に与えるインパクトの薄さは推して知るべしだ。

 こうした社内の部門間の協力が難しくなる状況は、「サイロ(silo)化」といわれる。

 企業内の組織が個々の最適化を目指すあまり、閉鎖的になり、コミュニケーションが取れなくなってしまうサイロ化は、食品業界や日本企業だけでなく、世界中の経営者にとって大きな悩みの種だ。

これが「サイロ」。原料や農産物、飼料が巨大な円筒に納められている。単一の建物のように見えるが、円筒の間の行き来はできない。貯蔵庫としてはそれでいいが、各部署が個々に巨大化し、互いのコミュニケーションを遮断するようになる(サイロ化)と……。(写真:muratart/stock.adobe.com)
これが「サイロ」。原料や農産物、飼料が巨大な円筒に納められている。単一の建物のように見えるが、円筒の間の行き来はできない。貯蔵庫としてはそれでいいが、各部署が個々に巨大化し、互いのコミュニケーションを遮断するようになる(サイロ化)と……。(写真:muratart/stock.adobe.com)

 やや旧聞だが、イーロン・マスク氏がテスラ社内に向けて発信した有名なメッセージ「Communication Within Tesla」を、ご記憶の方も少なくないだろう。一部を引用する。

One final point is that managers should work hard to ensure that they are not creating silos within the company that create an us vs. them mentality or impede communication in any way. This is unfortunately a natural tendency and needs to be actively fought. How can it possibly help Tesla for depts to erect barriers between themselves or see their success as relative within the company instead of collective? We are all in the same boat. Always view yourself as working for the good of the company and never your dept.

(出典は米Inc.の記事。https://www.inc.com/justin-bariso/this-email-from-elon-musk-to-tesla-employees-descr.htmlで読める)

 「不幸なことに、(サイロ化は)人間の生まれつきの性質なので、我々は積極的にサイロ化が起きないように戦わねばならない」とマスク氏は言う。

 詳しくは原文をお読みいただきたいが、マスク氏が脱サイロで目指すのは、鳥越社長と同じく「全体最適」だろう。
 そして、考えてみれば部門別の数値管理は、サイロをつくる重要な素材だ。

 「全体で一番いい形で決定するのが、全体の長である経営者の仕事」だとしても、それを実行すると、売り上げにダメージを受ける部署があり、それが部署の評価に直結するなら、「調整」が必要になってしまう。

 「だったら、その責任は部署が負わない仕組みにしておく。数字の責任は社長の私が取る。私からお願いするのは、全体最適を意識して指示するから、それを理解して、対応してね、ということです」(鳥越社長)

 仮に「全体を意識して行動してね、でも、個別の数値目標はクリアしてね」という指示だったら、社内はどう反応するだろうか。

 「それをやったら、誰だって『ああ、社長の言う“全体最適”は、つまりタテマエなんだな』と思いますよね。そして、全体最適より自分の部署の売り上げ・収益を優先しますよね。だから、数字での責任を持たせないのはある意味当たり前なんですよ、全体最適を目指すなら」

マスク氏が率いる企業ですらサイロ化する

 もう一つ、数値目標なしで組織がコントロールできるものなのか、という疑問もある。
 「それについてはもうおっしゃる通りで、何もモチベーションを持っていない人相手だったら、成り立たないと思います。『何かを成し遂げたい!』という、強いモチベーションを持つ人が働いていることを前提として、数字で管理しない、という相模屋の経営が可能になっています」

 テスラやスペースXが、経営者であるマスク氏の強烈な個性と、火星移住まで見据えたビジョンによって、高いモチベーションを持っていることはよく知られている。そしてあのメールは「彼が率いる会社ですら、サイロ化からは逃れられないのか」と、経営者に衝撃を与えたわけだ。

 相模屋はよその星こそ目指していないが、社員に対してかなりユニークな目標設定・共有の方法を持っている。この辺りは書籍でたっぷりお読みいただきたい。

 もちろん規模(相模屋は900人前後)や、提供する製品、サービスによって、相模屋のやり方が通用しない場合も当然あるだろう。あくまで「サイロ化を防ぐための方法論」の一つとして、「社内を数字で縛らない」というものがある、と理解するのがいいかもしれない。

 そして今回引用したマスク氏のメールの中には、鳥越社長が「おお、いいですね!」と、大騒ぎしそうな文章があった。「サイロ化を脱するのは、とにかく判断、行動を迅速にするため。既存の自動車メーカーと正面から勝負したら必ず負けるから、スピードで勝つしかない(大意)」という、以下の箇所だ。

The point here is not random chitchat, but rather ensuring that we execute ultra-fast and well. We obviously cannot compete with the big car companies in size, so we must do so with intelligence and agility.

 マスク氏の言う「execute ultra-fast and well」とは、鳥越社長の言う「ジオングに脚を付けるな!」とほぼ同意だろう。マスク氏も鳥越社長も、「体力のある大企業と勝負するなら、創造的な作戦と敏しょうさ(intelligence and agility)で」という意識から来ている。そして、これを実現するには、社内がサイロだらけでは不可能だ。

 次回は、工場を例に、サイロ化を防ぐことで相模屋がどのようにアジリティを発揮できたのかを見ていきたい。

【日経BOOKプラス限定公開】
本記事に関連する箇所を書籍『妻の実家のとうふ店を400億円企業にした元営業マンの話』から抜粋してお届けします(80~91ページ)。当該部分は第3章の冒頭からのお話。「損益責任と全体最適」を頭に置きつつ、鳥越社長と編集Yのやり取りをどうぞ。

損益責任がないから実現できる工場の“三段撃ち”

売上高、利益といった数字で管理しないことで、社内がつながりやすくなる。迅速に「会社全体」のために動くことができる組織は平時はもちろん、新型コロナ禍のような緊急時すらチャンスに変える。

── もう一度確認しますけど、相模屋のマネジメントには、工場、営業、ともに「損益責任」がない。ということは、責任にくっついてくる権限もないんでしょうか?

鳥越:いや、権限委譲がないわけではもちろんありませんよ。相模屋は組織の階層が少なくて、権限も私に集中させていますが、それは「現場との意見のキャッチボール」を正確に、素早く行うためです。「全部こっちに情報をよこせ、考えるのは全部俺だ」という話ではないので。

── 「こうしたい」という現場の意見は上がってくるんですか。

鳥越:来ます来ます。もちろん来ます。それがなかったらこんなに業績は伸びてません。最近はみんながこのやり方に慣れてきて、「どうしましょう」という相談よりも「こうしました」という報告のほうが多くなってきてます。

── なるほど。でもおそらく鳥越さんは、みんなの意見を聞いてバランスを取るために権限を集中させているわけではないでしょう?

鳥越:そうですね。

── では、鳥越さんがオーナーかつ最終決定者として、権限を集中している理由は?

「全体最適」を実現するには責任と権限の集中が必要

鳥越:権限を集中させているのは、ひとえに全体最適のためだと思っています。言い方を変えると社内を「つなぐ」ためですね。

 いろいろな情報が上がってくるけれど、個々の製品や工場や営業の、個別の最適で見ていくのと、全体の最適で見るのとでは、全然違う結論になる。「これとこれでこうつながるから、これはこうやっておいて」というようにリンクをつなげるのが、社長である自分の仕事じゃないかと。

── 個別の事業部がそれぞれ独立国みたいになって、調整のために経営企画室みたいな組織ができて、でも横串を通す組織をつくると、タテの組織が「こっちにはこっちの事情があるんだ」と、情報を抱え込んで対抗する。そんな話はよくありますね。

鳥越:はい、それをやると意思決定のスピードはがた落ちになります。そして、決める内容も、「どこからも文句が出ないように」という丸めたものになると思うんです。

── 決定が遅れて、しかも総花に。

鳥越:どの部署にもいい顔を、ではなく、全体で一番いい形で決定するのが経営者の仕事。でも、それだと売り上げや収益にダメージを受ける部署がある。だったら、その責任は負わない仕組みにしておく。責任は社長の私が取る。私からお願いするのは、「全体最適を意識して指示するから、皆さんそれを理解して、対応してね」ということです。

── なるほど。もしそこに「でも、個別の数値目標はクリアしてね」と付け足したら。

鳥越:誰だって「社長の言うことはタテマエだ」と理解して、全体最適より自分の売り上げ・収益を優先しますよね(笑)。 だから、数字に責任を持たせないのは当たり前なんですよ、全体最適を目指すなら。

── なるほどそうか、いや、でも、それで組織がコントロールできるものですか。

鳥越:おっしゃる通りで、これは「何かを成し遂げたい!」という、強いモチベーションを持つ人が働いていることを前提として、初めて成り立つやり方です。

── 仕事が嫌いな人はもちろん、普通の会社員だったら、どうかな、責任がないならできる限り手を抜いて、怠けるほうに行くんじゃないかな……。

工場がすばやく陣形転換”

鳥越:先に、このやり方のメリットからお話ししますね。

 さっき触れましたけど、工場が売り上げ・収益の責任を持たないで済むことで、我々が「陣形転換」と呼んでいる、生産体制の迅速・柔軟な変更が可能になります。

── グループ会社の工場も含まれるんですね。

鳥越:はい、もちろんです。相模屋グループ全体の工場で、どの製品をどこで生産するかを調整できます。もちろん、揚げ物のラインがないところとか、物理的な限界はありますよ。

── でも、そもそも陣形転換をやるような機会がそんなにあるんでしょうか。

鳥越:「長篠の三段撃ち」ってご存じですよね。

── 織田信長が武田勝頼の騎馬武者の突撃対策に使ったやつですか。当時の鉄砲の、弾込めに時間がかかる欠点を、鉄砲隊を3組に分けて交代することで連射を可能にした、という。

鳥越:はい。相模屋の場合は各工場が主力製品、たとえば焼きとうふの第一工場、「ビヨンドとうふ」の第三工場、といった具合に、得意な商品に全力投球して、状況に応じて主攻を担うんです。金曜日までは第一工場が焼きとうふで主攻、週明けからは第三工場が主攻を交代してビヨンドとうふ、と。これが陣形転換の基本です。

── 俺たちは今週の主役だからがっつりつくろう、来週は後ろに回ってひと休み。

鳥越:はい、そんな感じです。全部ずっとやるとダレるので、陣形転換で前に出るときに得意技で頑張ればいい。そしてこれの応用として、需要に対応しきれない工場の応援があります。

── そうか、毎日注文があって、量が変動するデイリーの商品だから。

発注量の急変にも柔軟に対応

鳥越:はい、おとうふは「今日言われて今日つくって今日届ける」、まとめてつくって冷蔵庫に置いておくことができない。 いわば「在庫」という概念が、ない。そして毎日の注文量が大きく変動するんですね。セールの日玉になったりしますと、納品の6時間前に「前の日の20倍の量を持ってきて」と言われることもあります。

── えっ。

鳥越:とはいえ、こちらも前もって「セールだから増えるぞ」と予測して準備しています。スーパーさんの発注担当者が午前中に注文を出し、午後1時から3時半ぐらいまでに数字が上がってきます。発注を受けて調整し、だいたい午後6時くらいには工場を出ます。

 当社の本社工場の場合なら100万丁のおとうふを、群馬の工場を出発して、先方の物流センターにだいたい夜10時には届けなきゃいけない。昼間に受注したものを夜中に納品という、ほぼジャスト・イン・タイムみたいなものです。というわけで、「あっちが足りないからこっちでつくろう」と、陣形転換をやる機会は頻繁に訪れるんです。その意味でも、グループ化で生産設備が日本のあちこちにできてきた意味は大きいんですよね。

── 物流コストにも効いてきそうです。

コロナ禍で試された“陣形転換”の実力

鳥越:そしてこの仕組みがあると、緊急事態に強いんですよ。それが証明されたのは、新型コロナ禍のときですね。2020年の春に外出自粛の要請が出て。

── みんな買いだめに走った。

鳥越:あのときは、スーパーさんの棚から食べ物が全部なくなっちゃいました。

── 豆腐はどうだったんですか。

鳥越:はい。量は普段の3倍くらいですが、スーパーさんも我々も、とにかく需要の予測がつかなくて。「明日はどうなるんだ?」と頭を抱えていました。

── ちなみに、そういうときメーカーの社長はどんなことを考えているんですか? 稼ぎ時だ、とワクワクしました?

鳥越:そんな余裕はないですよ。「何とかここで、欠品を出さずにこらえなきゃ」と思ってましたね。他社さんの欠品が始まって、その分までうちに来る、うちは絶対おとうふの供給をつなぎ続けるぞと。そういえば、この頃ちょうど新入社員の入社式があって。13人入ってくれたんですけどね。コロナ禍で内定取り消しもあったので事前に「大丈夫でしょうか」と問い合わせが来たこともありますが、こっちは生産・配送で人手がいくらでも欲しいところでしたから「絶対来てくださいね」と(笑)。

── なるほど。

鳥越:入社式でも、いままでは校長先生みたいな話はあまりしなかったんですけど、初めて「使命」とか、言っちゃいました。こういう新型コロナが生活にパニックを起こしているときに、食品を供給しているというのは、素晴らしさというよりももはや使命だと。だから絶対つなぐぞ、俺たちが(供給を)切らしたらもう日本のおとうふは終わる。これまでは、世の中がどうとか、みんな考えてなかっただろうけれど、今日から社会人だ。社会人というのは、社会に責任を持つということなんだからね、とか話しました(笑)。いや、本当に、真面目にそんなクサい言葉を入社式で話したのは初めてですね。

── いやいや、茶化す気にならないですよ。しかし、日持ちしない豆腐って買いだめしても意味がなさそうですけど、それでも売れちゃうんですか。

鳥越:おそらくですけれども、まず冷凍食品などの賞味期限が長いものがわあーっと売れて、でも冷凍庫の大きさでもうマックス、上限になっちゃうじゃないですか。その上で、デイリーで買えるものがあったらどんどん買って、そっちから消費しよう、ということだったんじゃないかと思います。

── なるほど、冷凍食品は補給が切れたときに取っておいて、今日の胃袋を埋めるためのものを買いに来る。

鳥越:なので、いままで動かなかったサブ的な商品、品ぞろえとして置いてあった商品ががんがん動きだしました。つまり「買える食品は何でもいいから買っておけ」みたいな雰囲気になっていたんじゃないかなと。

── 豆腐は料理のバリエーションもあるし、スーパーとしてもありがたい商品でしょうね。

鳥越:これまでの売れ方とまったく変わってしまったので、スーパーさんも発注のロジックが通用しなくなって、どのくら い注文すればいいのかわからない。結果、こんな感じになりました。

── 大波小波の発注量、ブレっぶれですね。変動の幅はセールの時ほどではないようですが。

鳥越:セールの時は発注量が予想できるから大波でも対応できるんですが、このときは明日はどうなるか、スーパーさんも我々も、全然わからないという。

── なるほど、では、需要が読めない、明日はどっちだ! という場合の供給戦略とは。

鳥越:いや、基本、ひたすらつくって供給する以外にないです(笑)。

ホワイトボードに手書き+スマホで情報共有

鳥越:でも「とにかくつくれるだけつくる」とやっていたのでは、売れ残ったり、原料の豆が足りなくなったりして、たちまち欠品です。生産を柔軟に割り振って、スーパーさんの要望に対応せねばなりません。そこで今回、「災害対応ボード」 というのを導入しまして。

── おっ。

鳥越:まあ、使うのはいつものホワイトボードなんですけど。

── ガクッ。

鳥越:ホワイトボードに、発注がこれこれ、何時までに生産完了して、とか書いていく。全部私の手書きです。これをスマホで撮影して、アップルの「iMessage」で関係者全員にばっと送って状況を共有します。誰が何をど こでやっているか、何に困っているかを、私がまとめてボードに書いて撮影して送信して、共有しながら進めていく。

……かなり長くなりました。更なる詳細は本書にて。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年12月15日付の記事を転載、一部情報を追加]

「前年比」「利益率」などの数値目標がない会社が「失われた20年」で売上高23億円から400億円に急成長している。2012年に「ザクとうふ」で話題を呼んだ相模屋食料だ。率いるのは当時雪印乳業の「営業マン」だった鳥越淳司社長。普通の会社員が会社を燃える集団に変えていった20年間を、本人の言葉で語ります。

山中浩之(著)、日経BP、1870円(税込み)

●本書の内容をさらに詳しく知りたい!という皆さん、日経BOOKプラスにて「はじめに」と「もくじ」も公開しております。