人工知能(AI)をはじめ、技術が急速に発展する現在。「AIに職を奪われそう」「子どもが大きくなったら世界はどうなっているのだろう」などと、未来に不安を覚えることはありませんか。そんな不安を吹き飛ばす書籍『東大教授の超未来予測』(瀧口友里奈編著)から、宇宙人や集団意識は存在するのかといった生命の可能性について抜粋してご紹介します。語り手は東京大学大学院情報学環教授の暦本純一氏、同大学院理学系研究科教授の合田圭介氏、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)教授の野村泰紀氏の3人です。経済キャスターの瀧口友里奈氏と東京大学大学院工学系研究科特任准教授でティアフォー代表取締役CEO(最高経営責任者)の加藤真平氏が聞き手でお届けします。
結局、宇宙人はいるのか
瀧口友里奈氏(経済キャスター。以下、瀧口) 野村先生からいただきましたテーマは「宇宙人はいる?」。宇宙人はいるんでしょうか。
野村泰紀氏(カリフォルニア大学バークレー校教授。以下、野村) どこから生命というか難しいし、答えは分かりません。ただ普通に考えると、こんなに広大な宇宙でたまたま生命がいるところが地球しかないのは不自然なので、おそらくいるのでしょう。ただ、それとコミュニケーションできるかは別の話です。
というのも、光のスピードが有限で、しかも、それが自然界の最大速度だからです。星と星の距離は相当にあって、普通に100万光年といっても、その星に行くには光の速度で100万年かかるわけですよ。だからコミュニケーションはできないほうが自然。宇宙人はいるほうが自然だと、僕は思います。
カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley) 教授、東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構連携 研究員
[研究分野]素粒子論、宇宙論、量子重力
加藤真平氏(東京大学大学院工学系研究科特任准教授。以下、加藤) 地球外生命体は地球にいるんですかね。いるか、いないかでいうと、どのような諸説がありますか。
野村 それも定義によりますよね。もし今地球にいる生命が、最初に宇宙で生まれて、隕石(いんせき)によって地球に運ばれ、そこで繁栄したという説が正しいとすると、僕らはみんな「宇宙人」ですから。
瀧口 確かに隕石説ってありますよね。
合田圭介氏(東京大学大学院理学系研究科教授。以下、合田) 実際に、それを証明するデータがあります。
瀧口 合田先生は『 東大教授が語り合う10の未来予測 』(大和書房)のアンケートで好きなSF作品として、「未知との遭遇」(スティーヴン・スピルバーグ監督/1977年)、「E.T.」(スティーヴン・スピルバーグ監督/1982年)、「コンタクト」(ロバート・ゼメキス監督/1997年)など宇宙人がテーマの映画作品を挙げていらっしゃいました。そういう作品がお好きなんですか。
合田 大好きです。知性は持っていないけれど何らかの生命体がいる可能性はすごく高いと思うんですよね。実際に米航空宇宙局(NASA)も膨大な予算をかけて、木星や土星の衛星にプローブ(探査機)を送って調べています。
エンケラドゥスという土星の衛星には火山があります。そこの水蒸気のサンプルを得て調べたら、リンとか生命体に必要な分子が見つかったんですね。いわゆる火山が噴火して温かい海があると、地球の初期の状態と同じような環境です。生命がいてもおかしくないので、そこにいるかもしれない。
地球の海底火山では、火山はいろいろなケミカルを出しているので、そこにカニやエビなどの生き物が群がるんです。ひょっとしたらエンケラドゥスにもカニやエビがいるかもしれない。土星で寿司ができるかもしれない(笑)。
東京大学大学院 理学系研究科 教授
[研究分野]バイオエンジニアリング、ナノテクノロジー、光量子科学、医学
野村 地球の生命もそういう海底火山の周りで生まれたという説が一番有力ですよね。もし地球以外の星でそんなものが見つかったら、生命ができる確率の概念が大きく変わる大発見となるので、楽しみです。
暦本純一氏(東京大学大学院情報学環教授。以下、暦本) たぶん宇宙人がいたとしても、進化的に言うと、人間や哺乳類みたいに高等生物ではなく、ほぼほぼ単細胞で非常にシンプルなものの場合が確率的には高いでしょう。逆に、高等生物が割と近くにいるとすれば、まずやるのは電波を送ることじゃないですかね。UFO(未確認飛行物体)のような物質的なものを送るはるか前に、何らかの通信のチャネルをつくって、生命がいることを伝達していると思います。
それは『 三体 』(劉慈欣著/大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳/立原透耶監修/ハヤカワ文庫SF/原著は2008年刊)の話ですが、物質ではない電波的なもので情報を送ろうとします。それが来ていないということは、我々の到達範囲内にはまだ宇宙人はいない感じがします。
瀧口 本当に『三体』の世界観ですね。私は『三体』を映像作品で観たのですが、あれを観たときに、地球外生命体とコンタクトしちゃうとは「なんてことをしてくれたんだ」と思いました(笑)。
加藤 将来、少なくとも人類が火星、木星に行くことはあり得るじゃないですか。そのときに「僕は実は火星人です」とか言う人いるんですかね。
暦本 イーロン・マスクさんの最終目的は火星に住むことじゃなかったですか。
東京大学大学院 情報学環 教授
[研究分野]Human Augmentation(人間拡張)、ヒューマンコンピュータインタラクション、Human-AI Integration
加藤 そうですね。イーロン・マスクさんのように最初に宇宙へ行く人は「僕が行ったんだ」と言ったほうが得です。だけど、2番目以降の人は「いや、俺はもとから火星にいたんだ」と言ったほうがバズると思います。
瀧口 バズらせるのが目的なんですか(笑)。「実はいたんだよね」と言う人が出てきそうですね。
加藤 それで「もとからいたんだから自分のものだ」と言って土地の権利とか主張しそうですね。
ハチやアリには集団としての意識がある?
合田 「死のサイエンス」とよく言われますが、死と言っても、生命体や個体としての死であって、中の原子とか分子は死んでいないですよね。バラバラになって、それが再利用されて、また新しい生命体や個体につながるので。
野村 僕は「意識とは何なのか」に興味があります。僕の専門分野でも何でもないから、エキスパートとして貢献はできないけれど、それに光を当ててくれる研究があればと思います。
加藤 生き返ることは、もしかしたら何らかの形ではできるかもしれない、ということですよね。
暦本 ゾンビのように「形は似ているけれども、全然違うかもしれない」というSFやホラーはありますよね。
瀧口 「意識だけ抽出して保存しておくことができるのか」という話もありますよね。
暦本 そういうやり方もありますね。
野村 実際にはないと思うんですけど、もし細菌に意識があったとして、細菌よりはるかに巨大な人間のような物体がシナプスで相関していることによって意識が生まれていると思うでしょうか。たぶんそう思わない可能性が高いと僕は思います。同じことをスケールアップして考えると、たとえば、銀河などは法則に従ってある動きをしているわけです。僕らの脳も法則に従って動いています。なので、「銀河に意識がない」と言い切れるんですかね。
暦本 SF的ですね。スタニスワフ・レムの『 ソラリス 』(沼野充義訳/ハヤカワ文庫SF/原著は1961年刊)という小説は惑星全体が意識を持っているという設定です。
合田 線虫という小さな生き物がいて、ニューロン(神経細胞)の数が300個ぐらいしかないんですが、ちゃんと意思決定できるんです。300個ですが、すごいんです。
暦本 ハチやアリのニューロンは1匹で100万個ぐらいですが、集団全体として意識がある可能性がありますよね。
合田 あります。ネットワークで。
野村 普通はそれは意識ではなく、ただのパターンだと思うんでしょうけど。でも意識って本当に不思議で、僕が本当に分かっているのは僕の意識だけで、皆さんのは分からない。皆さんにある働きかけをしたら、おそらく僕がするようなレスポンスがあるから、みんなに僕と同じような意識があると思っているだけです。それが最も妥当な仮説だから。この僕が感じている何か、クオリア(感覚質)のようなものがどこにあるのか。これは大変難しいです。
加藤 壮大なネットワークに意識が宿るかどうか。
野村 でも、人間のレベルでは個体ごとに意識は切れているじゃないですか。だから普通に考えると、ハチの記憶や意識も個体に分散して存在している可能性が高い。もちろんこれはそう想像しているだけですが。
瀧口 そうですよね。「きっと人間と同じようなんだろうな」と想像しているだけですよね。
合田 人間の精神状態を機械的な観点で分析する「人間機械論」です。
野村 本当にネットワーク全体として意識があるかというと、僕らの感覚からすると人類共同体みたいな意識はないです。アリやハチも、全体ではある目的を持ってやっているように見えるけれど、個体で見ると、結構単純なパターンで動いている。「こうなったら、ここをフォローしましょう」という程度です。そうだとすると、全体への意識はない可能性が高い。我々人間のほうがよほどコーディネートして動いていますが、それでも全体としての意識がないのだから、ないんだろうという推測はできます。
瀧口 面白いですね。
暦本 予想を超えて、教養の高い議論になっている感じがします(笑)。
加藤 普通に難しいと思います。
野村 これだけの先生が集まっているから、ある程度難しい話をしないと意味ないですね(笑)。
瀧口友里奈編著/日本経済新聞出版/1980円(税込み)

