人生設計や投資を考える時、判断の成否を分けるカギとなるのは「経済の先行きを読む力」。その「先読み力」を強化する方法の一端を、日経新聞論説フェローでWBS解説キャスターを務める原田亮介氏がわかりやすく体系的に解説した『経済の仕組み 学び直しの教科書』から抜粋・再編集して紹介する。第1回は「金利」を理解するための基本の基本。
預ける金利と借りる金利、本質は同じ
最初に基本を押さえ直しましょう。みなさんは「金利」といわれて何を思い出しますか。まずは預金金利や住宅ローンの金利でしょうか。家を買ったり老後の資金を考えたりする時にこの金利に悩まされるのですが、普段の暮らしの会話にはほとんど出てきませんね。
スマホを買い換える時に値段がいくらかは気になるし、旅行では航空機代や宿代がいくらかはすごく調べると思います。同じように金利は「お金の値段」ということができます。
100万円が1年後に110万円になる預金があるとすれば、その金利は10%です。金利は1年後にお金が何パーセント値上がりするか(増えるか)を示す値段です。預ける金利と借りる金利は違うものにみえますが本質は同じです。銀行預金は個人が銀行にお金を貸している金利で、住宅ローンは銀行が個人にお金を預けている金利と言い換えることができます。
いまの日本の大手銀行の預金金利は1年定期で0.125%程度でキャンペーンの優遇金利でも0.6%程度(2024年10月時点)と本当にわずかなものです。利息収入より現金自動預け払い機(ATM)で現金を引き出す手数料のほうが高いですね。1年間にいくらATMの手数料を払ったか調べて、預金残高で割ってみると金利に換算することができます。つまり、金利も手数料もお金の値段ということでは同じです。
お金が2倍になるまで何年かかる?
金利の応用形が株式の配当です。株式配当利回りは株の取得価格に対して何%の配当があるかを示しています。東証プライム市場の平均配当利回りは2.3〜2.4%と預金金利よりはるかに高い水準です。株価は日々変動するもので、株式にはその会社が倒産した時に株券が紙くずになるリスク(いまはリアルの株券はほとんど発行されていませんが)がありますが、値上がり期待だけで投資する必要もないのです。
何年経ってもお金の値段が上がらないというのが、30年にわたる日本経済のデフレ傾向を表してきました。ここで預金ではなく日本国債を購入した時の金利がどうか比べてみましょう。
日本国債には購入時の金利が満期まで固定されているものと変動するものがあります。個人向けの10年物変動金利国債の金利は0.57%(2024年11月時点)です。半年ごとに利払いがあり、利率は半年ごとに見直されます。仮に0.5%の金利が続いたとすると、500万円預けた時の年間の利払いは2万5000円、10年間で25万円になります(税抜きの試算)。銀行などの定期預金より金利が高いですね。なぜでしょうか。
これは金利には通常、期間が長くなれば長くなるほど高くなる性質があるからです。人にお金を貸す機会はそれほどないと思いますが、翌日返すと言われれば金利をつけて返せという人はあまりいないでしょう。しかし、100万円を貸して10年後に返すという話なら事情は変わってきます。100万円を10年間別の使い方をする選択肢を失い、預金や株式で運用して生まれる利益も得られなくなります。それに見合う金利を請求してもそれほど不合理とはいえません(人間関係は壊れるかもしれませんが…)。
私が新聞社に入社した最初の年、年末のボーナスをもらうまで月末は財布の危機が続きました。奨学金や卒業旅行の借金の返済があり、10月、11月は家賃が払えずに消費者金融からお金をつまんだ経験があります。当時のサラ金は年利で20%という高利だったのですが、顧客を増やすキャンペーン中だったのでしょう、1週間以内に耳をそろえて返済すれば無利息という条件でした。おかげで危機を乗り越えることができました。これが1週間でなく、返済まで1年かかったとすれば雪だるま式に借金が膨らんでサラリーマン人生を台無しにしていたかもしれません。
では、100万円が10年後に200万円になる預金があるとすると年利はいくらでしょう。答えを先に言います。約7.2%です。一般に複利の「72の法則」(72を金利=%で割るとお金が2倍になる年数がわかる概算法)といわれています。
原田亮介著、日本経済新聞出版、1870円(税込み)

