その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は香取照幸さんの『 社会保障・税一体改革の政治過程分析 』です。
【まえがき】
本書は、2020年度に上智大学大学院総合人間科学研究科(社会福祉学専攻)において行った社会保障特殊講義「社会保障の政治過程論」の資料と講義録をベースに、主として大学院(博士前期課程)で社会保障を学ぶ院生を想定して「教科書風」に書き下ろしたものです。
本書では、社会保障政策の決定過程を、2010年から2012年にかけて取り組まれた近時最大の改革であった「社会保障・税一体改革」を題材に検証しています。
社会保障・税一体改革は、自民党政権、民主党政権、そして再び自民党政権と、2回の政権交代を挟んで進んだ改革であり、この改革の過程で当時の与党民主党は与党でありながら党内分裂を起こし、最終的に政権が瓦解しました。また、自民党内でも社会保障・税一体改革を主導した人たちとは系譜の違う人たちが民主党政権後の政権を担ったことで、非常にねじれたかたちで一体改革が進められていくことになります。
社会保障政策というのは常に政治の潮流と表裏一体で動いています。このことは、実際に医療や福祉の現場で仕事をしている人たちが肌で感じることはなかなかないだろうと思います。また、こういう分野について政策研究をする社会保障学者は少なく、他方で政治過程論を研究分野とする研究者、いわゆる政局マターとしてではなく、政策形成・遂行をめぐってどのように政治が動くかを研究する学者も日本には少ないのが実際のところです。まして社会保障分野の政治過程論を扱う政治学者はあまりいません。
そこで本書では、社会保障政策の形成過程を理解・分析するにとどまらず、社会保障改革と税制改革という2つの大きな政治課題について、2度の政権交代を挟んで政治の場においてどのような議論がなされ、合意が形成されたかを、その渦中で関わった経験を交えて検証・分析し、評価することを目指しています。
「社会保障の政治過程論」と題したのは、そのような狙いからきたものです。
主として大学院生を想定して書き下ろしましたが、社会保障の基礎知識のない方々にも読んでいただけるよう、図表やデータを多く用いてわかりやすくしたつもりです。
大学生だけでなく、社会保障に関心を持つ多くの方々に手に取っていただければ幸甚です。
【目次】





