その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日比野恭三さんの『 ホークスメソッド 勝ち続けるチームのつくり方 』です。

【はじめに】

 プロ野球の取材に携わり始めて15年になる。

 ある素朴な疑問が頭に居座るようになったのは、フリーランスのノンフィクションライターとなってから数年がたった頃だ。

 2010年に総合スポーツ誌『Number』(文藝春秋)の編集者となり、野球関連の記事を多く担当したのち、16年にライターとして独立した。その後は、編集者時代からのつながりもあって横浜DeNAベイスターズを中心に取材活動を行うようになった。

 当時のベイスターズは、12年に新たに親会社となったディー・エヌ・エー(DeNA)のもと、着実に力をつけつつあった。勝率3割台に沈むことが珍しくなかった“暗黒時代”は過去のものとなり、上位争いに加わることも増えた。

 だが、リーグ優勝にはどうしても手が届かない。シーズン終盤になると失速してしまったり、勝負どころといわれるような大事な試合に勝ち切れなかったり……。

 1998年を最後にリーグ優勝から遠ざかるチームに接しながら、こう思わずにはいられなかった。

 「いったい何が足りないのだろう。優勝できるチームと優勝できないチームの違いはどこから生まれてくるのだろう?」

 疑問をついに放っておけなくなった2024年、取材を始めることにした。

 対象に選んだのは、福岡ソフトバンクホークス。現体制となった05年から24年までの20年間でリーグ優勝7回、日本シリーズ優勝も7回を数える“常勝”チームだ。その間の通算勝率(レギュラーシーズンのみ)は5割7分0厘。12球団の中で最も高い。

 15年以降の直近10年間に絞ると、ホークスの勝率は5割8分7厘に上昇する。2位の広島東洋カープとは5分以上もの差がある、圧倒的な数字だ。そして、5割を上回るパ・リーグの球団はホークス以外にない。直近10年間のパ・リーグの“貯金”をホークスがほぼ独占している状態なのだ。

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 現代のプロ野球における最強チームはホークス――。そこに疑いの余地はない。

 本書が企画段階にあった24年の春から夏にかけてもホークスは好調を維持し、ペナントレースの先頭を快走していた。幸いにも球団の全面的な協力を得られることになり、同年の秋口から本格的な取材を始めた。福岡に幾度となく飛び、球団関係者へのインタビューを重ねていくうち、強さの裏側にあるものが徐々に浮かび上がってきた。

 ここまで読んで「ホークスが強いのはそれだけ金をかけているからだろう」と鼻で笑いたくなった読者もおられるかもしれない。

 その指摘は確かに間違ってはいない。野球データの分析などを手掛けるDELTA(東京・豊島)によれば、ホークスの選手年俸総額(24年開幕時点)は63.3億円。2位につける読売ジャイアンツの44.5億円を20億円近くも上回るダントツの数字だ。球界唯一の4軍制を導入して大量の選手を抱えているうえ、練習施設の充実度も最高クラスと評されている。

 ただし、それは要素の一つに過ぎない。

 取材を通して見えてきたのは、ホークスが多面的な組織改革を断行してきた事実だ。改革の歯車はある時期を境にして回り始め、ときに挫折を経験しながらも、その動きは加速している。

 24年のホークスは91勝49敗3分という圧倒的な戦績でパ・リーグ優勝を飾った。短期決戦の日本シリーズでセ・リーグ3位のベイスターズに敗れたものの、改革の成果を示したといえる1年だった。

 “勝ち続けるチーム”はどのように構築されたのか。勝利の可能性を1%でも高めるための変革とはいかなるものなのか。ホークスのキーパーソンへの取材を通して、主にフロントの視点からその全容を徹底解剖したのが本書である。なお、登場する方々の所属や肩書は取材時点のものとし、敬称は略させていただいた。

 ホークスは強いがゆえに、球界では“ヒール(悪役)”になりがちだ。だが、長年にわたる組織改革の内実と関係者の熱い思いを知れば、見方が変わるかもしれない。また、強い組織をつくりたいと考えるあらゆる方たちに有益な情報もきっと含まれているだろう。

 ホークスファンをはじめとするプロ野球ファンはもちろんのこと、スポーツ全般やスポーツビジネスに興味のある方、組織マネジメントに興味のあるビジネスパーソンの方々にも、ぜひ本書を手に取っていただけたら幸いである。

日比野恭三

【目次】

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