その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は新原浩朗さんの『 日本の優秀企業研究 企業経営の原点 6つの条件(日経ビジネス人文庫) 』。「文庫化に当たって」をお届けします。

【文庫化に当たって】

 本書は、『日本の優秀企業研究』(二〇〇三年、日本経済新聞社)を文庫化したものである。この本は、筆者の当時の想像を遥かに超えた影響を世の中に与えた。率直に言って、驚きであった。特に、当時の日本経済の厳しい環境の中、企業経営の前線で悪戦苦闘しておられた名だたる経営者や中間管理職層のプロフェッショナルの皆さんから、本書の考え方を参考にして企業経営の方針を立て直して道が開けた、あるいは、役員・幹部全員に配布して読むよう指導した、といったお言葉を異口同音に多数頂戴できたのは、本当にうれしかった。

 これも、筆者の貢献というより、本書の執筆にあたりご協力頂いた企業経営層の皆さんとの突き詰めた議論の結果、本質が本書につまっていてのことと思う。改めて感謝したい。

 一方、本書のように現場の経営感覚を反映した研究書は類書があるようで実はない、との声を聞くにつけ、アナリスト、コンサルタントや学者の企業批評のあり方が、いかに現場で働いている経営者の感覚から遊離しているかという点も改めて確認したことは残念でもあった。泥だらけになって自分の足で稼ぎ、自分で考える企業研究・企業批評が我が国に確立されなければ、本当の意味で価値創造ができる企業は生まれにくくなってしまう。志を同じくする研究者の皆さんに、奮起をお願いしたい。

 今回、日本経済新聞社から、本書をより広範に、長く読んで頂けるよう、文庫化をおすすめ頂いたので喜んでお受けした。お金でない、世の中のために働こうとする規律が、実は、資本主義社会の持続性の根幹であるという本書の結論の一つが、まさに今、日本社会で問われており、本書が、その議論の解決の、わずかかもしれないが、一助になると考えたからである。

 この本には、数多あるマニュアル本のようなスキルや「形」は書かれていない。しかし、読者の皆さんには、自らの体験と重ね合わせながら考えて読むことで、是非、この本にある「本質」を読み取って頂きたい。

 本書を脱稿してから、既に三年の月日が流れたが、今回、再読して、その本質は、やはり、何も変える必要を感じなかった。しかしながら、文庫化に当たっては、新たな読者が読みやすいよう、数値、人物の肩書きなどについて、最小限の改訂を行った。

 平成一八年五月

新原浩朗

【目次】

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