その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は杉本一裕さんの『 IT職場のトラブル対処 決定版 』です。
【はじめに】
IT職場で慢性的な人手不足が解消しません。新規人材の獲得、既存の人材の定着を考えても、トラブルの少ないホワイト職場の重要性は高まるばかりです。
筆者に寄せられる職場でのトラブルの相談も年々増加し、多様化しています。最近では、働き方改革によるテレワーク勤務や副業に関する相談が増えました。
考えてみれば当然です。会社勤めでは、入社から退職まで上司や同僚と付き合うことになります。長い時間を過ごす職場では、どうしてもトラブルが起こります。上司と部下あるいは同僚同士、さらには会社と従業員の間で起こるものまで内容はさまざまです。
特に同じグループで仕事をする関わりの深いメンバー間で、気が合う、合わないといった感情のもつれが生まれがちです。人間関係のトラブルは避けられません。
会社の制度に対する不満から会社や人事部門と紛糾することもあります。一方的に会社が悪いのではなく、クレーマーのような社員による常識外れの発言や行動が問題になるケースもあります。
では、どうすればトラブルにうまく対処できるのでしょうか。
トラブルの要因は職場の中に潜在しており、ゼロにはできません。管理職や職場リーダーの対応によって顕在化することもあれば、大事に至らずに解消することもあります。深刻なトラブルに発展することが多いのは、とにかく自分が正しいと思い込んでいる上司のいる職場です。
理不尽な上司はよく「常識だ」「当社では今までこうやってきた」と感情的に話します。その言葉に、説得力はありません。上司パワーで押し通しても従業員のモチベーションは下がるだけです。会社や上司の一方的な言い分を押し通す姿勢はいただけません。「自分の考え」や「慣習」を押し付けないことです。
会社が営利組織なのは全員が知っています。絶対に自分の都合を通そうと思っているケースはまれでしょう。ただ不当な扱いを受けるのはいやなはずです。
丁寧に分かりやすく説明することで多くの従業員は納得していきます。納得するかしないかは、説明にしっかりした根拠があったかどうかが大きいのです。
根拠として最適なのは法令や社内ルール(就業規則)です。誰にでも平等に適用されるものですし、企業としてのあるべき姿、守るべき基準に沿って作られたものだからです。
特に管理職や人事部門の担当者は、トラブルの対処に当たる際には根拠のある説明を心がけてほしいと思います。これがホワイト職場への第一歩です。
10のカテゴリーに分け52の相談に回答
とはいえ、法令や就業規則を読むだけで、適切に職場のトラブルに対応できるのか不安な方も多いと思います。実際のトラブルはある程度までパターン化できます。トラブルのパターンを知っていれば、確実に対処しやすくなります。
本書は職場で起こる典型的なトラブルを、採用から退職に至る10のカテゴリーに分けて掲載しています。10のカテゴリーは次のようになります。
・採用・人事異動に関するトラブル
・労働時間に関するトラブル
・休憩や有給休暇に関するトラブル
・テレワークやフレックスタイム制など勤務制度に関するトラブル
・人事制度や賃金制度への疑問
・服務規律や懲戒処分に関するトラブル
・ハラスメントやメンタルヘルス問題
・派遣や請負に関するトラブル
・システムトラブル関連
・退職や転職に関するトラブル
それぞれのカテゴリーの合計で52の相談を取り上げていますが、最初から順に読んでいただく必要はありません。関心の強いカテゴリーから、あるいはカテゴリーにとらわれずに興味を持たれた相談から読まれても大丈夫です。
すでに記したように、トラブルの解決には説明の根拠が大きな意味を持ちます。本書は、すべての相談に対して、回答に根拠を記載することを心がけました。タイトルに「決定版」を含めたのはこのためです。より具体的で説得力のあるものにするため、回答には、できる限りトラブルの背景まで書き込むようにしました。
現実に多いのは、部下の立場である従業員側からの相談です。従業員が働きやすい職場を作るのは会社の責任です。本書は、特に部下を持つ管理職や人事部門の方に読んでもらいたい1冊です。
なお本書は、筆者が日経クロステックに連載している「職場のトラブル相談室」「IT職場のトラブルQ&A」の内容を厳選し、加筆・再編集したものになります。
杉本一裕
【目次】



