その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は吉橋徹さんの『 外資系コンサルが教える プロジェクトリーダーの仕事 』です。
【はじめに】
プロジェクトは、思い描いた通りには進みません。むしろ、思い通りに進まないことの方が大半です。
実際に、PMI(Project Management Institute)による世界中のプロジェクトマネジメント従事者を対象にした大規模調査(2024年;n=5,751、「費やした労力と費用に対し、期待した効果は得られたか」という質問に対する有効回答)によれば、48%が成功を考えている一方で、12%が明らかな失敗、40%が成功とも失敗とも言えないという結果が出ているそうで、世界中のプロジェクトの半数以上で、終わってはいるが満足した成果が出せていない、という実態が明らかになっています。
この現実は、これまでのキャリアの中で何度も目にしてきました。
私は25年以上にわたり、コンサルティング業界に身を置き、日本だけでなく、アメリカ、アジアやヨーロッパの様々な国や地域で、業種も規模も異なるプロジェクトにかかわってきました。
そこで気がついたのは、文化や商習慣、意思決定のスタイルは国によって異なるものの、一つだけ変わらないものがあるとすれば、プロジェクトの成否を最終的に分けていたのは、常にリーダーシップだったということです。本書は、そうした長い年月の中で積み重なった経験を棚卸ししてまとめたものです。
あらかじめ断っておきたいのは、本書で語られる話の多くが、華々しい成功事例ではなかったということです。
むしろ本書で共有したいのは、なぜうまくいかなかったのか、どこで判断を誤ったのか、何を見落としていたのか、といった失敗や行き詰まりの経験であり、そこから何を学んだか、ということです。
そして大切なのは、その失敗を他者のせいにするのではなく、まずは自責として受け止めて考えること、だと考えています。
成功したプロジェクトを振り返ると、国や文化、組織の違いを超えて、共通点が見えてきます。
それは、優れた計画や高度な手法そのものではなく、人々が同じ方向を向き、前に進もうとしていたかどうか、でした。
逆に、失敗に終わったプロジェクトでは、計画や体制が整っていたとしても、目的が共有されていなかったり、意思決定が曖昧だったり、誰が方向性を示すのかが見えなくなっていたりしました。
「計画は立てた。体制も整えた。ツールやフレームワークも間違っていなかった。それでも、プロジェクトは止まった」
そういった経験を重ねる中で、私は次第に、問題の多くが「計画」や「管理」ではなく、人と方向性にあることを強く意識するようになりました。そこで必要になるのが、リーダーシップです。
本書で扱うリーダーシップとは、肩書きや権限の話ではありません。ましてや、特別なカリスマ性の話でもありません。
“不確実な状況の中で、進むべき方向を示し、人々の力を引き出しながら、変化を前に進めていく行為”
だと考えています。
本書が対象とする読者
本書は、特定の役職や肩書きを持つ人だけを対象としてはいません。
むしろ、次のような立場や悩みを抱えている人にこそ、手に取ってほしいと考えています。
□ 経営層や管理職として、「任せたはずなのに進まない」状況に直面している人
□ 専門家・コンサルタントとして、正論を述べても現場が動かないことに違和感を覚えている人
□ これからリーダーの役割を担うことを期待され、何を拠り所にすればよいか模索している人
すでに豊富な経験を積んできた人にとっては、自身の経験を言語化し整理するための材料として、これから経験を積もうとする人にとっては、遠回りを避けるための視点としてお役に立てれば幸いです。
本書の構成について
本書は、プロジェクトの流れに沿いながら、リーダーシップがどの場面で、どのように求められるのかを理論、実践、応用の大きく3つに分類して、段階的に整理した構成になっています。
理論編として、第1章では、なぜ今、プロジェクトにリーダーシップが必要なのかを、環境変化と実務の視点から問い直します。第2章では、プロジェクトマネジメントの標準知識体系として認知されているPMBOKに対する理解を深めます。第3章では、ビジョン、戦略、計画といった「方向性を定めるフェーズ」におけるリーダーの役割を扱います。
実践編として、第4章から第8章まででは、PMBOKが定義するプロジェクトマネジメントの各パフォーマンス領域(立ち上げ、計画策定、実行、監視・コントロール、終結)において、何を実践すべきか問いかけます。プロジェクトの実行段階において、人とチームをどのように導くか、ステークホルダーとの関係性や、変化に適応し続けるための視点を取り上げます。
応用編として、第9章では、グローバルプロジェクトという文脈で、多様性と不確実性に向き合うリーダーシップの在り方を考えます。最終章となる第10章では、AI時代のプロジェクトリーダーの在り方について議論していきます。
各章は独立して読める構成になっていますが、最初から通して読むことで、プロジェクト全体を貫く「思考の軸」が浮かび上がるよう設計しています。
なお、各章の冒頭に置いた名言は、結論を示すためのものではなく、異なる文化や立場、経験の中でも通用する、普遍的な問いを投げかけるための言葉だと信じています。
本書が、“プロジェクトを「管理する人」から、プロジェクトを「導く人」へと踏み出すための静かな伴走者”となれば幸いです。
2026年4月
著者
【目次】









