その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は長谷川博和(編著)の『 MBA サプライチェーンマネジメント 付加価値を生む変化の時代の全体最適 』です。

【まえがき】

 本書は、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターが主催し、株式会社NTTデータおよびフォーティエンスコンサルティング株式会社(旧株式会社クニエ)と連携して開講されてきた「サプライチェーンマネジメント(SCM)中核人材育成講座」の理念と実践知を社会に還元することを目的とする、実務に役立つ理論書である。研究、コンサルティングサービスを通じて蓄積された理論・実務・企業実践の知見を体系化し、「SCM変革を担う人材とは何か」「それを経営課題とどう結びつけるか」「企業の中でどう実装するか」を多面的に論じることが本書の狙いである。

 コロナ禍を経て、地政学リスク、AIの発展、カーボンニュートラル対応、関税変動、労働力不足などが同時並行で進む現代において、サプライチェーンの脆弱性は経営の根幹問題となった。もはや部分最適の積み上げでは対応できず、調達・生産・物流・販売を横断する全体最適の視点が不可欠である。SCMは単なるコスト削減の「裏方機能」ではなく、付加価値創出の源泉であり、トップマネジメントが主体的に関与すべき戦略領域である。

 本書は、以下の読者を主に想定している。第一に、製造業・流通業を中心とした中堅から大手企業の経営層および経営企画部門であり、SCMを事業ポートフォリオ再編や投資判断と結びつけて考えたい読者である。第二に、SCM部門、調達、生産、物流、販売企画の管理職および次期リーダー候補であり、現場改善を超えて組織横断的に価値を創出したい読者である。第三に、MBA・EMBAなど実務家向け教育の教員・受講者であり、理論と実務を架橋する教材として活用したい読者である。第四に、経営コンサルタント、SCM実務家、研究者、さらには地方自治体や業界団体で人材育成に携わる政策立案者である。

 なお、SCMの定義にはいろいろな見方が存在しており、各執筆者の考え方が端的に出ている箇所でもあるので、本書ではあえて画一的なものにせず各執筆者に任せている。各章ごとに各種定義が出てくるが、ご了承いただきたい。

 本書が、読者それぞれの立場において「自社のSCMとは何か」を考え直す契機となり、現場の改善を超えた戦略的変革と人材育成の実践に資することを願う。

 2026年4月

執筆者代表
早稲田大学ビジネススクール
長谷川 博和


【目次】

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