その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は橋本孝之さん、今井正彦さんの 『次世代リーダーに捧ぐ 経営の定石』 です。

【はじめに】

 当社山城経営研究所は今年2022年、創立50周年を迎えます。新型コロナウイルスの感染拡大で社会の脆弱性が可視化され、人々の価値観も大きく変わりつつあります。我々は、地球温暖化を筆頭に生物多様性の維持など、地球環境問題において待ったなしの対応を迫られている状況にあり、企業の公器としての役割・責任もますます増大しています。このような状況に対応するためにも、コロナ禍を奇貨としてこれからの日本経営の在り方を根本的に変えるよいきっかけにしなければなりません。

 本書は、「今でも」「今だからこそ」、より理解され実践されるべき故山城章が提唱した「実践経営学」を最新の社会情勢に合わせて改訂し、進行する社会の大変革に対応できる経営の在り方、並びに、経営者が発揮すべきリーダーシップに関しての基本的な知見を提供するものです。

 当社の創業者である山城章が追い求めた日本経営における実践理論では、既に地球環境をも含めたステークホルダーを「対境」という名称で定義し、その対境に対しバランスのよい価値提供と利益配分を行うことで社会の発展に貢献することが企業の存在目的であるとしていました。私たちは今にしてなお、というよりも今だからこそ、この原点を踏まえて経営に取り組まなければならないことを認識すべきではないでしょうか。

 企業の目的や経営の在り方を問い続けてきた山城章はある意味で哲学に近い要素を含ませ「経営体を貫く原理は機能主義で、当然ながら合理性・効率性の追究を本質としている」「一方経営体の行動はその組織を構成し運営する人間の行為であるから、人間の心を度外視して組織や事業を変革することはできない」と主張し、世界共通のマネジメントのよいところを吸収・消化しつつ、日本のよいところと統合し、新しい世界に通用する経営学を創造することで、あるべき経営を実現しようとしました。

 本書をきっかけに、「企業は何のためにあるのか」「経営とは何か」という根本的な命題に立ち向かうために経営について学び、よい経営者がよい会社を作り、よい会社がよい社会を創ることを理解し、その実践に取り組んでいただくことを願うものです。


【目次】

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