その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小林直樹さんの『 「人気No.1」にダマされないための本 』です。
【はじめに】
2016年10月に、本書の前作となる拙著『だから数字にダマされる 「若者の○○離れ」「昔はよかった」の9割はウソ』を執筆、出版しました。それから6年半後の23年4月、前作の中の一節が高校の国語教科書に採択され、掲載されています(「新編論理国語」大修館書店、令和5年度)。
掲載されたのは、「若者の海外旅行離れ」に対する反証です。「近ごろの若者は内にこもって外に目を向けない。自分が若いころは…」といった中高年のボヤキを耳にすることがありますが、今の若者(20代)は過去最高レベルで海外に出ています(新型コロナウイルス禍前のお話になりますが…)。
確かに実数は減っています。1996年に海外に出た20代は460万人を超えていました。それが2019年は380万人です。しかし96年の20代は67〜76年生まれで、その数1900万人超。一方、19年の20代は90〜99年生まれで1200万人しかいません。率にすると96年は24%、19年は約32%です。のべ人数なので1人が3回行くと3人とカウントされる点は注意が必要ですが、決して若者は引きこもってはいないことを数字は示しています。
このように数字に惑わされたり、誤解を招いたりするケースは多々あります。21年は年明けから、非公正なNo.1調査・広告が問題視されました。企業は自社商品・サービスの魅力をアピールする際に「No.1」と言える材料があると心強いもの。その足もとを見るように「No.1を取らせます」と営業を仕掛ける一部調査会社の存在と、真っ当とは言い難い調査の手口が明らかになりました。このカラクリは、マーケティング職に従事する人は特に、そして1人の消費者としても知っておきたいものです。第1章で説明します。
また、メディアの記者のメールアドレスには日々、ランキングやアンケート調査結果のプレスリリースが多数届きます。速報性重視のWebニュースメディアでは、リリース文面をほとんど横流しするような記事が目立ち、しっかり検証ができているとは言い難いところがあります。それゆえに、やや難アリだったり見方に注意が必要だったりするランキングやデータが記事になって話題化、拡散してしまうことが起きています。気づいたものは筆者が所属するマーケティングメディア「日経クロストレンド」でも記事にしてきましたが、こうした事例がかなり溜まってきたこともあり、このタイミングで書籍化することにしました。
本書の執筆に当たり、トランスコスモス・アナリティクス取締役エグゼクティブフェローの萩原雅之氏には多くのヒントをいただきました。萩原氏はご自身のフェイスブックで興味深いアンケート結果や「なぜこんな結果が出たのか?」と議論になりそうなランキング・データをよく投稿されていて、フォロワー仲間がコメント欄に意見していく、コミュニティーの場になっています。何の統計的素養があるわけでもない私は、ここで鍛えられたように思います。この場を借りて御礼申し上げます。
本書を通じて、数字の見方に何らかの気づきや変化が得られれば幸いです。
2023年5月末日 日経クロストレンド記者 小林直樹
【目次】



