その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は北岡伸一さん、野中郁次郎さんの『 知徳国家のリーダーシップ 』です。

【はじめに】

 リーダーシップとは、責任を取ることである。責任を取って辞めるというほうの責任ではなく、責任を持って何事かを実現するというほうの責任である。英語で「Thebuckstopshere!」という表現がある。「最終的に私が責任を取る」の意である。アメリカのトルーマン大統領が、大統領執務室に座右の銘としてプレートを掲げて有名になった。反対の表現が、「passthebuck」で、「責任転嫁する」「盥回しにする」の意である。

 本書では、明治維新から現代までの8人の政治、経済のリーダーを取り上げた。それぞれが責任を取るために、どのように考え、行動したかを、一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生との対談の形式で追った。時代背景や役割によって、責任の内容や性質は異なるが、8人のリーダーに共通する行動様式は、前例のない状況に果敢に向き合い、自ら決断し、能動的に考えて人を動かし、大きな課題を解決していったことである。それらの決断の一つひとつが国家の発展に果たした役割は、とてつもなく大きい。

 翻って、今日の日本はどうか。本対談が始まった2020年2月は、奇しくも国難と言える新型コロナウイルスの感染拡大による混乱の初期であった。同年8月まで断続的に続いた対談の過程で、全世界的なパンデミック(感染爆発)の状況下で行政の混乱が露呈し、権限の所在に基づく縦割りの弊害や、危機対応におけるリーダーシップが問われる事態が続いている。先行きの見通しが困難ななか、状況を打開するために衆知が集められているか。権限がないことが、責任逃れの方便に用いられていないか。

 リーダーには、たとえ権限が不十分であったとしても、国民や社員などから負託された責任を遂行すべく、全力を尽くす義務がある。危機時においてその義務は、歴史的使命ともいえる。国民の命を守るために、社員の生活を守るために、既存の制度の枠組みや権限を越えてでも、能動的に動き、政治経済を機能させることで、国家や組織を持続的に発展させる責任である。明治維新や太平洋戦争のような国家を揺るがす出来事は過去のものでなく、今後も天災、人災も含めた大きな危機は生じ得る。そのたびに、歴史に学び、現代に活かすことが、国家としての進化、人類としての発展につながる。こうした観点から、新型コロナウイルスによるパンデミックのタイミングで、野中先生と共に8人の傑出したリーダーの足跡を振り返ることは有意義であったと思う。

北岡伸一

【目次】

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