その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は勝村幸博さんの『 ランサムウエア攻撃との戦い方 セキュリティー担当者になったら読む本 』です。

【はじめに】

 組織の業務データを暗号化して身代金を要求する「ランサムウエア攻撃」が後を絶ちません。最も攻撃が盛んとされている米国では、毎日のように被害が報じられています。日本も例外ではありません。大企業が莫大な身代金を要求されたこともあります。ニュースやテレビで報じられたので、ご存じの方は多いでしょう。

 報じられるのは大企業ばかりなので、「自分のところは攻撃されない」と思っている人は少なくないでしょう。ですが、それは大きな誤解です。報じられないだけで、どのような組織も被害に遭っています。攻撃者は攻撃できるところを狙います。組織の規模や業種にかかわらず、どのような組織でも攻撃対象になります。このため組織のセキュリティー担当者は、ランサムウエア攻撃を受けることを前提に備える必要があります。

 とはいえ、ランサムウエア攻撃とは何か、どのように備えればよいのかを俯瞰的にまとめた情報はあまりありません。「何かあったらセキュリティーベンダーに丸投げするから大丈夫」と考えていたら大変なことになります。「何かあった」時点で、組織は壊滅的な打撃を受けています。そうならないために、自分たちで必要な対策を講じる必要があります。また、セキュリティーベンダーに対応などを依頼する場合でも、何をどのように依頼すればよいのか、セキュリティーベンダーの対応は妥当なのかといったことは自分たちで考える必要があります。そのためには、ランサムウエア攻撃に関する網羅的な知識が不可欠です。

 そこで本書では、ランサムウエア攻撃の現状・手口・事例・対応・対策・歴史を解説します。対象にするのは部署(現場)のセキュリティー担当者だけではありません。CISO(最高情報セキュリティー責任者)のような組織のセキュリティー責任者、組織の経営陣、セキュリティー担当者を目指す人、サイバーセキュリティーに興味のある人にも読んでいただきたいと考えています。そのため、できるだけ平易な表現を使っています。

 第1章の「現状」では、ランサムウエア攻撃の危険な現状を警察庁やセキュリティー組織、セキュリティーベンダーなどが公表しているデータを基に解説します。ランサムウエア攻撃の恐ろしさを多くの人は定性的に感じているでしょうが、この章では定量的に説明することで説得力を持たせています。ランサムウエア攻撃の深刻さを理解するためにはもちろん、経営陣などにランサムウエア対策の重要性を訴求したい場合にもこの章の内容が役に立ちます。

 第2章の「手口」では、ランサムウエア攻撃の基本的な流れを解説します。攻撃者が組織のネットワークに侵入して脅迫するまでどのように行動するのか、その典型例を説明します。この章を読めば、ニュースなどでは報じられないランサムウエア攻撃の「裏側」を分かってもらえるかと思います。

 第3章の「事例」では、ランサムウエア攻撃の被害に遭った3組織が公表した報告書を基に、それぞれのインシデント(セキュリティーに関する事件・事故)をひもときます。被害組織がその詳細を公表することは抵抗があるでしょう。自分たちの対策不足などを露呈することにもなります。ですが他の組織の参考になればと、各組織とも報告書を公開しました。頭が下がる思いです。攻撃を受けた組織はどのように対応し、収束させたのか。この章を読めば、それらを疑似体験できます。

 第4章の「対応」では、ランサムウエア攻撃を受けた場合、どのように対応すればよいのかを順を追って解説します。対応の流れは、「攻撃の認知」「対応方針の決定」「初動対応」「外部組織への相談と報告」「原因対処」「利害関係者への告知・公表」「復旧作業」の順で進みます。同時並行で進む対応もあります。それぞれでどのように対応すればよいのかを説明していきます。

 第5章の「対策」では、平時に実施すべきランサムウエア攻撃対策を解説します。対策の柱は2つ。1つは攻撃者を自組織のネットワークに侵入させない対策。もう1つは、第4章で解説した対応を円滑に進めるための対策です。これらの対策をどのように実施すればよいのか。具体例を挙げて分かりやすく解説します。

 第6章の「歴史」では、ランサムウエアの出現から被害が続出するまでの流れを解説します。ここ数年で「サイバー兵器」と呼べるほどの脅威となったランサムウエアですが、出現当初は多数あるマルウエアの1つに過ぎませんでした。なぜそれがこれほどの被害をもたらすまでになったのかを解説します。

 2018年ごろから猛威を振るい始めたランサムウエア攻撃。被害は年々増えてとどまることを知りません。攻撃を受けること自体は防げません。被害に遭わないため、あるいは被害を最小限に抑えるためには、ランサムウエア攻撃を理解することが第一です。本書がその一助になれば幸いです。

2025年8月 勝村幸博


【目次】

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