その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は石田淳さんの『 もう一度、学ぶ技術 』です。
【はじめに】◎「大人の学び」を成功させる科学的メソッド
アメリカのある著名な投資家が、これからの日本で伸びていく産業は「教育分野」だと述べています。私もまったく同感です。
教育分野とは、いわゆる幼児教育から大学までを指しているのではありません。ホットなのは、むしろ社会人になってからの学びです。
実際に今の20代の若者たちは、就職してからもよく勉強しています。会社に対して先の保証など求めることはできないと悟っている彼らにとって、自分の未来のために勉強を続けるのは当然のことなのでしょう。
一方で、40代以降の人たちからは、こんな声をよく聞きます。
「もし若い頃に戻れたら、本気で勉強したい」
大学時代はサークル活動に夢中で、できるだけ楽に単位が取れるカリキュラムを組んでいた。でも、そんな自分は愚かだった。せっかく高い学費を払って、時間だってたっぷりあったのだから、もっと本気で勉強していたら、人生は違ったものになったかもしれない……というわけです。
それにしても、「若い頃に戻れたら」とはどういうことなのでしょう。
なぜ、自ら学びをあきらめてしまうのでしょう。
学びは生涯続く、大切なもの
多くの企業では、50歳くらいになると早期退職などシビアな話が出てきます。60歳を過ぎて会社に残れたとしても、給料は激減するケースがほとんどです。
こうした現状があるから、ある程度の年齢になると、「もはや、学んでみたところでどうにもならない」と感じるのかもしれません。
しかし、学びとは、死ぬ瞬間まで続くものです。
江戸時代の儒学者・佐藤一斎は「荘而学老不衰、老而学死不朽(荘にして学べば老いて衰えず、老にして学べば死して朽ちず)」という言葉を残しています。
「壮年のときに学んでいれば、老年になっても衰えることがない。老年になっても学んでいれば、亡くなった後もその名が残る」。まさにその通りなのです。
セミリタイア世代はもちろん、40代ともなったら、この言葉が心に染みるのではないでしょうか。
40代以降の人は「学びの基礎」を持っている
ここで忘れてはならないのは、今の若い世代が学びを大事にしているのは、決してビジネスのためだけではないということです。
たとえば、英語のスキルが高くてマイナスになるビジネスなどありませんから、今の時代、英語を勉強するのは当たり前です。
とはいえ、若者たちにとってビジネスに役立つか否かは、おそらく第一義ではありません。彼らは、自分の人生を充実させるために学んでいるのです。
彼らの学びの対象は、投資、健康維持、SDGsを始めとする環境や社会の問題、ボランティア活動、コミュニティづくり、副業、趣味に関することなど広範囲に及んでいます。
自身のQOL(クォリティ・オブ・ライフ=人生の質)を高く保つために、まさに、社会的にも、経済的にも、肉体的にも豊かな人生を歩もうと貪欲に学んでいるのです。
そんな若者たちにしてみたら、40代以降の先輩たちはむしろ、うらやましく映るかもしれません。なぜなら、さまざまな経験を積んでおり、学びの基礎ができているからです。
さらに、セミリタイア世代ともなれば、時間もあります。
老後のお金をどう増やしていくか、これまでやったことがない遊びにどうチャレンジしていくか、健康維持にどんな運動や食生活が必要なのか……。こうしたスキルを身につけるために、若者よりもずっと有利な立場にいるのです。
にもかかわらず、もし、あなたが「若い世代と比較して自分たちには時間がない」と考えているのだとしたら、それは「大人になってからの学び方」を知らないことに原因があるのだと思います。
三日坊主は「続けるコツ」を知らないだけ
大人の学習は、子どもの頃のそれとは違います。
たとえば、算数の勉強は、足し算や引き算ができていなければ、掛け算も割り算もわかりません。だから、子どもの学習にはとても時間がかかります。
しかし、すでにあらゆる基本が身についている大人の場合、ずっと効率的に学ぶことが可能です。
大人の学習は、それまでの経験を土台にして、必要なことだけを上手に身につけていくことができるものです。
ただ、それにはちょっとコツがいります。うまく勉強を進めるための仕組みが必要なのです。勉強慣れしている若者たちは、それを知っているだけ。彼らが、先輩世代よりも真面目なわけでも優秀なわけでもありません。
もしあなたが三日坊主になってしまうとしたら、やる気や性格に問題があるのではなく、続けるコツを知らない──ただそれだけなのです。
重要なのは「どの行動を取ればいいのか」
本書では、私の専門である「行動科学マネジメント」のメソッドを使い、大人になってからの学びを成功させるコツを伝えていきます。
行動科学マネジメントは、一部の突出したハイパフォーマーに頼るのではなく、8割の普通の人たちに結果を出してもらうことを目指しています。「いつ・誰が・誰に対して・どこでやっても」同じような効果が出る、高い再現性が認められる科学的手法で、現在、国内では規模の大小を問わず1200社を超える企業で導入、さらに教育現場でも活用いただいています。
そこでは、持って生まれた能力、やる気や根性といった曖昧な要素は徹底して排除され、「どの行動を取ればいいか」を具体的に示していきます。
個人の勉強も同じで、望ましい行動を取りさえすれば、必ず結果につながります。
その手法は、外国語や資格試験、リスキリングといったかための分野はもちろん、スポーツ、趣味、健康習慣など、あらゆる新しい挑戦に共通して使えます。
本書は、2018年に刊行された『学ぶ技術』(日経BP)を時代に合わせ大幅加筆、再編集の上、文庫化したものです。
タイトルに「もう一度」と加えたのは、新たに学びを始めようとする方へのエールであり、「学びの楽しさを再度発見してほしい」という気持ちも込めています。
4つのステップで「仕組み」をつくる
本書の構成は次のようになります。
序章では、私たちを取り巻く今の環境を考察していきます。実は、「学べる人」にとってはとても面白い時代がやってきていることがご理解いただけるでしょう。
第1章は、「習慣化」についてです。人がある結果に到達できるのは、そのための「小さな行動」が積み上げられたからにほかなりません。
第2章は、行動科学のABC理論に基づき、「学びが続かない理由」を解き明かしていきます。
第3章から第6章は、実践編です。行動科学マネジメントに即して、①目的発見→②目標設定→③行動設計→④検証と4つのステップで、学びを習慣化する仕組みづくりを進めていきます。
第7章は事例編です。英語、資格試験、趣味、読書習慣、子どもの勉強法、そして家族との関係性の再構築とさまざまなケースを取り上げています。実際に学びを習慣化している人たちを、これからのあなたの参考にしていただければと思います。
終章は生涯、学びを続けるための15の心得です。これから学び続ける人生を歩んでいく上で大切な心構えや行動習慣であり、私から皆さんに送るエールでもあります。
あなたはこれから、何をやってもいいのです。
本書で紹介するメソッドを実践することで、あきらめることなくすべてを楽しみ、より充実した人生を送っていただければと思います。
2022年11月
石田 淳
【目次】





