その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はA.T. カーニー(編)の『 A.T. カーニー 業界別 経営アジェンダ 2025 』です。

【はじめに】

創造と変革のリーダーの時代

 2020年1月、A.T. カーニーの日本代表に就任した直後に、日本を代表する大企業20社、世界に向けて価値創造する新興企業・スタートアップ企業200社のご支援に注力する方針を掲げました。また、これらの“20社+200社”の創造と変革のために、2050年までに“2,000人の創造と変革のリーダー”に出会い、志を共有し、後押しさせて頂くことを目標としました。

 その後の5年弱の間に、“20社+200社”の経営者、役員、ミドル、若手の皆さんとの接点と対話の機会に恵まれました。そして、2050年までにより“Well-Beingな社会の創造”を実現することに繋がる、“日本を変える、世界が変わる”ための兆しを感じることができました。それらの兆しについて、人物、構想、実行の大きく3つの観点から触れておきたいと思います。

 第1に、人物の兆しです。企業は社会の公器であるという本質に立ち返って、経営を再構築する創造と変革のリーダーが着実に増えている点です。これらの経営リーダーは、短中期目線ではなく中長期目線、自社至上主義的な視点ではなくマルチステークホルダー主義的視点、地球への負荷を減らすという視点に留まらず、社会と地球を再生するという視点を持ち、経営の全てを見直すという価値観を有していると感じています。

 第2に、構想の兆しです。パーパス・ビジョン・ミッション、経営戦略・事業ポートフォリオ、R&D、新製品・サービス開発、マーケティング、サプライチェーンなどの改善に留まらず、抜本的な改革を実現するための構想に関するご相談が増えている点です。国内外のマクロ・ミクロの多様かつ急速な環境変化に対して、産業横断の戦略構想、新たなビジネスモデルの創造などの大胆かつ柔軟な構想の必要性が認識されていると感じています。

 第3に、実行の兆しです。構想の実現に必要な組織能力を客観視し、人財採用・育成・外部戦力の必要性を早期に判断し、戦力の逐次投入ではなく、必要十分な戦力を投下する事例が増えている点です。新卒採用・終身雇用・ジェネラリスト育成・自前主義といった特徴を持つクライアント企業の中にも、大胆な創造と変革の構想に呼応し、職種別採用・中途採用・外部戦力の起用などの判断をする企業が増えています。

 このような兆しを、兆しで終わらせることなく、創造と変革のリーダーの増加、大胆かつ柔軟な構想、必要十分な組織能力の強化が加速することを願っています。A.T. カーニーは、“日本を変える、世界が変わる”を実現する“創造と変革のリーダー”が、大胆かつ柔軟な構想を企て、必要十分な組織能力の強化を実行するプロジェクトでのご支援に加えて、書籍を執筆することでも微力ながらも貢献できればと考えています。

 2023年11月に上梓した『業界別経営アジェンダ2024』に対して頂戴した様々な意見や感想を踏まえ、掲載できていなかった業界について新たに執筆するなどの改訂を行いました。産業横断の戦略構想、新たなビジネスモデルの創造などの重要性も高まる現代において、自社の事業領域以外も俯瞰し、周辺事業領域の定義・認識を更新し、次世代により良い社会を引き継ぐための構想を企てるきっかけとなれば幸いです。

A.T. カーニーとは

 A.T. カーニー(グローバル・ブランドはKEARNEY)は、本質的な正しさ(Essential Rightness)を追求する創業者のアンドリュー・トーマス・カーニーのリーダーシップのもと、1926年にアメリカ シカゴに創立され、約100年の歴史を持つ世界で最も歴史がある戦略コンサルティングファームの1つです。

 グローバルでは、約5,300名の経営コンサルタントと多様な専門家・アドバイザーとのネットワークを擁し、フォーチュングローバル500企業のうち、4分の3以上をクライアント企業とし、謙虚かつ大胆に目に見える成果(Tangible Results)をお届けすることにこだわってきた結果、90%以上のクライアント企業に継続的に指名されるグローバルでも有数のコンサルティングファームです。

 世界40か国以上に拠点を有し、クライアント企業のグローバル展開をご支援するだけではなく、アメリカ ワシントンにGlobal Business Policy Council(GBPC)というシンクタンクを有し、各国の政府関係者や世界の主要企業の経営陣と共同し、Well-Being社会の創造に向けた研究をしています。また、ダボス会議での戦略パートナーを務めるなど様々な国際機関や国際会議の有力なパートナーとして、各種アイデアを発信するとともに、その実現を支援しています。

 日本では、1972年に東京にアジア初の拠点を設けて活動を開始し、半世紀以上の歴史を有しています。現在では、“Well-Being 社会の創造”というパーパスのもと、2050年までに“日本を変える、世界が変わる”というビジョンを掲げ、日本を代表する製造業・サービス業・金融業などの大企業20社、及び、世界に向けて価値創造する新興企業・スタートアップ企業200社との創造と変革のプロジェクトに注力しています。

 また、内閣府・経済産業省・金融庁などにおいて各種政府委員を務め、20社の経営者が集って創造と変革に向けた創発をする機会、200社の経営者が集まって世界への価値創造に向けた対話をする機会を定期的に主催するほか、成長産業カンファレンス(GRIC)の後援などによるスタートアップ企業と大企業による協働にも貢献しています。

 2024年5月より、日本代表に兼任する形で、アジアパシフィック代表に就任しました。日本のほかに、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、マレーシアなどからなる地域を統括することになりました。A.T. カーニーのグローバルリーダーシップチームの1人として、各国の主要企業・政府関係者とのより多様かつ深い対話の機会も得られるようになりました。国内外でのこれらの活動を通じて蓄積された最新の知見を、日本のクライアント企業の皆さまにお届けすると共に、書籍や論考という形で多くの皆さまに情報をお届けすることで、より良い未来を形づくるべく、微力ながら貢献したいと考えています。

本書の位置づけと狙い

 本書は、日本のクライアント企業の皆さまの経営課題に日々向き合っているA.T. カーニーのシニアパートナー、パートナー、プリンシパル、マネージャーが共同で執筆したものです。各プラクティス(産業軸やサービス軸で専門知識や経験を蓄積している社内組織)において、日本を代表する企業の皆さまと膨大な数のプロジェクトを毎年ご一緒させて頂く中で、大きな潮目の変化や新たな脅威などを感じることが多くあります。

 本書は、可能な限り幅広い産業・サービスをカバーし、そこで起こっている最新のトレンドを俯瞰することに重きを置いています。対象とするテーマを絞り、そのテーマに関し可能な限り、多面的に検討する形も考えましたが、激変する経営環境においては、特定テーマの深掘りよりも、産業・サービスを俯瞰して幅広い視座を提供することによって、読者の皆さまが検討を深めるきっかけとして頂くことにも価値があるのではないかと考え、このような形式を採用することにしました。

 その結果として、当初の狙いは実現される一方で、一業種・一サービスあたりに割ける文字数には限りがあり、概要・方向性の提示に留まり、具体を共有するところまで踏み込めてはいません。読者によっては物足りないと感じられることと思います。そのような場合には、各プラクティスが弊社ホームページ上で発信している論考をご覧頂ければと思います。さらに、具体の議論・対話を希望頂ける場合には、各章の著者に直接にご相談を頂けましたら幸いです。

 このような本書の特徴に基づき、読者の皆さまにおかれては、興味がある産業・サービスに関して、空き時間にクイックに目を通して、トレンドにキャッチアップする形でご活用されるのも良いですし、複数業界を連続してお読み頂くことで、それらに通底するメガトレンドやうねりを考察頂くなど、状況に応じて柔軟にご活用頂ける書籍になったのではないかと考えています。

 最後になりましたが、本書の出版にあたっては、数多くの方々にご尽力頂きました。各章の著者である、A.T. カーニーの各プラクティスのシニアパートナーからマネージャーまでの各位のみならず、その裏側では各プラクティスメンバーに各種プロジェクトの経験からの示唆をインプットしてもらいました。また、Global Researchチームの今村さん、工藤さん、竹田さんには各種調査を手伝って頂きました。加えて、秘書の方々(貝塚さん、天田さん、小林玲奈さん、小林恵さん、梶さん、青山さん、香川さん、中村さん、池田さん、新井さん、宮下さん)にも、本書作成のための時間確保や予定調整などに尽力頂きました。このように各章の著者以外の方々の献身的なサポートが無ければ、上梓することはできなかったものであり、この場を借りて心からの感謝をお示ししたいと思います。

 また、本書の構想・企画からお付き合いを頂いている日経BP社の永野様には様々なアドバイスなど多大なお力添えを頂きました。その他、本書の出版を支援してくださった全ての方に御礼申し上げます。

A.T. カーニーアジアパシフィック代表 兼 日本代表 代表取締役
関灘 茂
2024年11月

【目次】

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