その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はクリス・ディクソン(著)、大熊希美(訳)の『 Read Write Own シリコンバレートップクラスVCが語るインターネットの次の激戦区 』。「序章」より一部を抜粋してお届けします。

【序章】より一部抜粋

 インターネットが現在の形になった理由を理解するために、歴史を大まかに振り返りたい。ここでは概要に触れ、以降の章で詳しく解説する。

 最初に伝えたいのは、インターネットの権力構造にはネットワークの設計が関係しているという点だ。ネットワークの設計はノード同士がどのようにつながり、やり取りするかを定め、全体の構造が決まる。専門的な話に聞こえるかもしれないが、これがインターネットでの権力とお金の流れを決める重要な要素である。設計段階での最初の小さな判断が、後々インターネットサービスの権力とお金の流れに大きく関わってくるのだ。

 端的に言えば、ネットワークの設計がネットワークの運命を左右する。

 これまでネットワークには競合する2つのタイプがあった。ひとつは「プロトコルネットワーク」。電子メールやウェブのように、ソフトウェア開発者のコミュニティといったネットワークのステークホルダーが制御するシステムだ。これらのネットワークは平等主義かつ民主的で、利用に許可はいらない。誰でも無料で使える。このシステムではお金と権力はネットワークの末端に流れる傾向にあり、それがネットワークを活用したサービスの成長を促進させる。

 もうひとつは「企業ネットワーク」。コミュニティではなく、企業が所有し制御している。ひとりの庭師が管理する「ウォールドガーデン(囲われた庭)」、あるいは1社の巨大テック企業が運営するテーマパークのようなものだ。企業ネットワークは中央集権型で、利用には許可がいる。この構造だから企業は洗練された機能を素早く開発し、投資家を引きつけ、成長に再投資するための利益を得られる。お金と権力はネットワークの末端を構成するユーザーや開発者から中心、つまりネットワークを所有する企業へと流れる。

 インターネットの歴史は3幕で展開すると私は考えている。それぞれの幕は支配的なネットワーク構造によって特徴付けられる。第1幕は「読み取り(リード)時代」だ。時期的には1990年から2005年頃のインターネットの初期、プロトコルネットワークが情報を民主化した。誰でもウェブブラウザに単語を入力するだけで、ウェブサイトを通じてあらゆる情報を見つけられるようになった。第2幕は、「読み取り/書き込み(リード/ライト)時代」。2006年から2020年頃、企業ネットワークが情報発信を民主化した。SNSなどのサービスに投稿することで、誰でも多くの人に向けたコンテンツを作成、公開できるようになった。

 そして、今、新しい構造を持つネットワークの登場により、インターネットの第3幕が明けようとしている。このネットワークの構造は前の2つを自然な形で融合しながら、所有権を民主化する。「読み取り/書き込み/所有(リード/ライト/オウン)時代」の幕開けだ。誰もがネットワークのステークホルダーとなり、かつて株主や従業員といった少数の関係者だけが手にしていた権力と経済的な恩恵を享受できる。この新しい時代は大手テック企業の中央集権に対抗し、インターネット本来のダイナミックなあり方を取り戻すものだ。

 人々はインターネット上で読み書きができるようになった。これからは所有できるようになる。

(中略)

 この本ではブロックチェーンの本質、つまりコンピュータとしての技術と、それで実現できることを説明したい。読者が本書を読み終える頃には、ブロックチェーンがどのような問題を解決し、なぜこのような解決策が今すぐ必要なのかを正確に理解できるようになっているだろう。

 ここで提示する知見や洞察、考え方の枠組みは、私のインターネット業界での25年間のキャリア経験に基づくものだ。私はソフトウェア開発者として働きはじめ、2000年代に起業した。会社を2社立ち上げ、それぞれマカフィーとイーベイに売却している。その過程でキックスターターやピンタレスト、スタックオーバーフロー、ストライプ、オキュラス、コインベースなど、人気製品を展開する企業に初期から投資する機会を得た。私はコミュニティが所有するソフトウェアとネットワークを長年支持し、2009年からこのテーマやスタートアップと技術全般についてブログで発信している。

 ブロックチェーンネットワークに直接関わるようになったのは、RSSのようなプロトコルネットワーク、つまり発信や投稿に関連したオープンソースのプロトコルが、フェイスブックやツイッターのような競合する企業所有のネットワークに敗れたことについて考えていた2010年代初頭のことである。この経験で得た知見が、私の今の投資方針の基盤となっている。

 インターネットの未来を理解するには、その歴史を知る必要がある。だから、本書の第1部では1990年代初頭から現在までに起きた2つの時代に焦点を当て、インターネットの歴史を振り返る。

 第2部ではブロックチェーンを深く掘り下げ、それがどのように機能し、なぜ重要なのかを説明する。ブロックチェーンネットワークを構成するブロックチェーンおよびトークン、そしてそれを動かす技術的、経済的メカニズムを解説する。

 第3部では、ブロックチェーンネットワークがユーザーをはじめとする他のネットワーク参加者にどのように役立つかを説明し、「なぜブロックチェーンを使うべきなのか?」というよくある質問に答える。

 第4部では、政策や規制に関する難しい問題や、ブロックチェーンの周辺に発展した有害なカジノ文化にまつわる疑問に向き合おう。カジノ文化は大衆が持つブロックチェーンの印象を悪くし、その潜在能力を人々に伝わりにくくしている。

 最後に、第5部ではそれまでに紹介した歴史と概念に基づき、ソーシャルネットワーク、ゲーム、仮想空間、メディア事業、共創的な作品づくり、金融、人工知能など、ブロックチェーンと接点のある領域についてさらに深く掘り下げる。ブロックチェーンネットワークの力がどのようなもので、それらが既存のアプリケーションのよりよい基盤となる理由と、これまで不可能だった新しいアプリケーションを実現する方法について説明する。

 この本は、私がインターネット業界でのキャリアを通じて学んだことを凝縮したものだ。幸運なことに、これまで多くの優れた起業家や技術者と出会ってきた。ここで説明する多くのことは、彼らから学んだことである。開発者、起業家、企業の幹部、政策立案者、アナリスト、ジャーナリスト、あるいは単に今世界で何が起きているのか、世界はどこへ向かっているのかを理解したい人にとって、この本が未来を案内し、作り、参加する助けになることを願っている。


【目次】

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