その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は藤井俊逸さんの『 ドボク模型 大人にも子どもにも伝わる 最強のプレゼンモデル 』です。

【はじめに】

ドボク模型[名詞]【どぼくもけい】100円ショップやホームセンターで手に入る材料で、土木の仕組みを伝えるもの

 本書のタイトルである「ドボク模型」は、土木技術者向けの専門雑誌である「日経コンストラクション」(日経BP)で2014年1月27日号で始めたコラム「ドボク模型プレゼン講座」から取っています。一般の人への「土木」に対する理解を深めたいという思いから、スタートしました。

 理解を深めるには、地元説明会の場がよいと考えました(発注者や施工会社は、工事を行うときに、地元住民に対して説明会を行っています)。その際、一般の人に土木の面白さや難しさが伝われば、もっと土木への理解が深まるのではないかと考えました。

 ただし、一般の人に土木の面白さや難しさを伝えることは、簡単ではありません。興味を持ってくれるツールが必要となります。地元住民に「なるほど」と思ってもらえれば、土木に興味を持ってもらえるきっかけにもなります。

 そんな地元説明会での活用で始めた「ドボク模型」でしたが、その後、思わぬ用途の広がりを見せました。1つ目が、建設コンサルタント会社や建設会社での社員教育です。人手不足の影響もあり、大学などで土木を学んでいない新入社員が増えていると聞きます。そのような社員に土木の面白さや原理を知ってもらう目的で、ドボク模型の講習依頼が舞い込んできました。

 また中堅技術者にも好評でした。基準に沿って設計するケースが多くなり、設計の本質を再確認する際に効果があるようです。社員研修でドボク模型の動画を利用させてほしいとの相談もあります。

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 2つ目が、防災学習会での活用です。大規模な土砂災害は、毎年のように発生しているため、住民の意識が高まっています。しかし、土砂災害がどうして発生するのか、それを防ぐにはどうするのかを、分かりやすく説明している書籍は意外と少ない。そのため、地滑りや崖崩れのメカニズム、防ぐための対策を説明できるドボク模型が重宝されているようです。

 災害を防ぐための対策を説明すると、一般の人に土木施設の社会的な意義を知ってもらうきっかけとなります。その施設を造るために、測量や調査を行っていることも併せて説明しています。

 3つ目が学校授業での活用です。大学や工業高等専門学校でドボク模型を使った教育も行われるようになりました。例えば、土質力学では土粒子の動きを理解することが基本となります。ドボク模型では、小さな土粒子をナットやストロー、パスタで分かりやすく表現しています。土粒子の動きを見ながら理解できるため、支持力や土圧、アーチングなどの現象を理解しやすいようです。動きを理解すれば計算式への理解が深まり、応用が効くようになります。

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 そして4つ目がイベントでの活用です。土木学会では一般の人に土木を知ってもらうために、毎年オープンキャンパスを実施しており、そこでドボク模型が活躍しています。子どもには直観的に理解できると評判で、土木への親しみを持ってもらえています。

 5つ目が工法説明です。各メーカーやゼネコンでは、新しい工法が開発されています。それらの工法には“肝”になる部分があり、そこをきちんと伝えることが大事になるのですが、イラストや写真だけでは、理解しにくい部分があります。そんなときにドボク模型での説明が役立つことがあるのです。

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 このように、色々な分野でドボク模型が活用されてきています。私はデジタルが普及してきた今だからこそ、ドボク模型のようなアナログの良さが、より実感できる気がしています。

 最近は熟練技術者が現場の話をすると、若手の社員は基準に書いていないことは、関係ないようなそぶりを見せる一方で、若手技術者がパソコンで3D設計を行っていると、熟練技術者はなかなか口を出せなくなる──そんな話をよく聞きます。それが、熟練技術者も若手技術者もドボク模型を前にすると、自然とディスカッションができるようです。

 ドボク模型は身近で安価な素材を使い、短時間で作れる模型です。アイデアの素晴らしい人や素材選びにたけた人、加工が上手い人などが、「ああでもないこうでもない」と言いながら、形にしていくわけです。子どもの頃、自分で物を作るのが楽しかった記憶がよみがえるため、自然と歩み寄れるのではないかと思っています。

 年齢を超えて話をすると、それぞれの知識や経験を共有できて、一体感が生じます。発注者や施工会社とも、模型を通じて話すことで色々なアイデアが生まれ、楽しさを共有することができます。仕事が楽しいと思えることこそが、最も大事ではないでしょうか。本書がその環境を生み出す一助になれば幸いです。

 なお、2015年10月に日経BPが発行した書籍「模型で分かるドボクの秘密」では本書と異なる事例を紹介しています。併せて読むと、土木の面白さが倍増します。ぜひそちらもご一読ください。

2023年11月 藤井基礎設計事務所社長 藤井俊逸

(文中写真:藤井基礎設計事務所)


【目次】

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