その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は福田和宏さんの『 ラズパイ5 AI活用ガイド 電子工作×AIを楽しもう! 』です。

【はじめに】

 DALL-EやStable Diffusionといった画像生成AIの登場は、創作の在り方を大きく変えました。文章による指示だけで、写真と見まがう画像や高度なイラストが生成される技術は、従来の制作手法とはまったく異なる体験をもたらし、多くの人がAIの可能性を意識するきっかけとなりました。専門的な技能を持たなくても表現活動に踏み出せる環境が整ったことで、AIは創造の領域で欠かせない存在へと急速に定着していきました。

 その流れを決定的なものにしたのが、2022年11月に公開されたChatGPTです。公開からまだ数年しか経っていないにもかかわらず、自然な対話を通じて文書の作成や要約、プログラム生成に対応するその能力は、世界中に大きな衝撃を与えました。インターネット上では瞬く間に利用者が増加し、AIが一般のユーザーの手に届く実用的なツールとして広く認識されました。この短期間での急激な進化は、AI開発が極めて速いペースで進んでいることを示しており、技術の変化が日常の感覚よりもはるかに速いスピードで進行している現実を浮き彫りにしました。

 その後、GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeをはじめとして、多様なAIモデルが次々に登場しました。画像やテキスト生成にとどまらず、音声、動画、プログラムコードなど、多方面のタスクに対応するAIが開発され、用途に応じてモデルを選び分けるという新しい利用形態も確立されつつあります。研究用途だけではなく、一般の業務、学習、生活の場面で幅広く活用されるようになり、AI技術は社会全体に深く浸透してきました。

 現在では、AIは特別な技術ではなく、多くの人が日常的に使う身近な存在へと変わりつつあります。文書の校正、メールの下書き、情報の要約、画像の補正や加工など、日々の作業の多くがAIによって支えられています。時間のかかる作業を短時間で済ませられるようになったことで、AIは仕事の生産性を高める基盤となり、生活においても欠かせない役割を担うようになりました。今やAIは、私たちの日常を支える重要なインフラの一つと言ってよい存在になっています。

■ラズパイでAIを活用する

 Raspberry Piは、手のひらに収まるほど小型でありながら、本格的なコンピュータとして利用できるシングルボードコンピュータの代表格です。教育現場、趣味の電子工作、試作品の開発など、幅広い分野で活用されており、扱いやすさと拡張性の高さが多くのユーザーに支持されています。

 Raspberry Piにはデスクトップ環境が用意されており、Webブラウザーを利用したり、文書を作成したりといった一般的なPCと同様の操作が行えます。小型の基板でありながら、普段使いのコンピュータとして無理なく扱える点はRaspberry Piの大きな魅力です。

 また、Raspberry PiにはGPIO端子が搭載されており、この端子にセンサーやLED、モーターなどを接続することで、プログラムから直接電子パーツを制御できます。デジタルとフィジカルが直結する環境で、コンピュータと電子工作が自然に融合する学習体験を得ることができます。

 近年は、こうしたRaspberry Piの環境にAIを組み合わせる試みが注目されつつあります。生成AIのChatGPTを活用すれば、Raspberry Piの設定方法や電子パーツを動かすプログラムの書き方を相談しながら作業を進めることができ、製作や学習の負担を大幅に減らせます。必要な知識を対話的に得られるため、初心者が新しい分野に挑戦する際の強力な支援となります。

 さらに、Raspberry Pi上でAIモデルを実際に動作させる取り組みも増えています。RaspberryPiは高性能なマシンとは言えませんが、AI専用のプロセッサーであるAIアクセラレーターを追加することで、推論処理を高速化でき、より実用的なAI処理が可能になります。軽量モデルであれば、対話や簡易的な推論処理をRaspberry Pi単体で実現できます。

 また、カメラを接続し、AIによって映像を解析させることで、映っている物体の判別や人物の検出なども行えます。視覚情報の取得と解析をRaspberry Piに組み合わせることで、周囲の状況を理解し、必要な動作を判断する仕組みを自作できます。

 AIと電子工作を組み合わせれば、AIが分析した結果に応じてLEDを点灯させたり、モーターを動かしたりといった制御が可能になります。知的な判断と物理的な動作を結び付けることで、従来の電子工作では実現が難しかった新しい仕組みを構築できるようになります。Raspberry Piは、AIを身近な形で取り入れ、アイデアを実際の動作として表現するための魅力的なプラットフォームとなりつつあります。

■プログラムや電子工作の基本を理解してAIの活用につなげる

 本書では、Raspberry Piを用いてAIを活用するための具体的な方法を紹介します。RaspberryPiの操作方法や電子パーツを制御するプログラムの作成など、実践的な作業を進めるうえで生成AIを併用すると、疑問点をその場で解消でき、学習を効率的に進められます。AIに相談しながら作業を進める流れが自然に身につくことで、初心者でも無理なくステップアップできます。

 さらに、本書ではRaspberry Pi上で大規模言語モデル(LLM)を動作させる方法にも触れます。しかし、Raspberry Pi単体では高い性能を期待できませんが、AIアクセラレーターを追加することで、推論処理を高速に実行できるようになります。小型の装置でありながら、手元で質問に答えるAIを動かせるようになり、クラウドに依存しない対話システムの構築を体験できます。

 そのほか、音声を文字に変換する仕組みや、カメラ映像から物体を識別する方法など、Raspberry PiとAIを組み合わせることで実現できる多様な処理を取り上げます。単独で利用しても便利ですが、複数を組み合わせることで、より高度な仕組みへ発展させることも可能です。

 Raspberry Piを自在に扱うためには、プログラムや電子工作などの基本が重要です。本書ではPythonの基礎や電子パーツの扱い方など、土台となる知識を丁寧に解説します。基礎を理解していることで、生成AIに質問する際に内容を正確に伝えられ、AIから返される回答の質も高まります。

 また、電子工作そのものにAIを活用する方法も紹介します。生成AIに回路の作成方法やプログラム改善のヒントを尋ねながら進めることで、アイデアを素早く形にできるようになります。AIが作業の伴走者となり、創作のスピードと幅を大きく広げます。

 本書の最後には、AIと電子工作を組み合わせた作品づくりに挑戦します。AIが判断した結果をもとに電子パーツを動かす仕組みを実装することで、新しい体験が生まれます。Raspberry Piを中心に、AIとハードウェアの融合がどのような可能性をもたらすのか、実際の作品を通して確かめていきます。

 本書がラズパイとAIの活用について皆様のお役に立てれば幸いです。

2025年12月
福田 和宏


【目次】

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