その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は竹内謙礼さんの『 売り方の正解 小さなお店が生き残る50のヒント 』です。
【はじめに】
本書は、「人も金も時間もない」小さなお店や小さな会社が、すぐに実践できる集客・販促手法を集めたマーケティング指南書である。
マーケティングの手法は昭和、平成、令和と時代を下るにつれ、大きく変わってきた。まずはその経緯から整理してみよう。
昭和の時代、集客や販促の手法はとても単純だった。
特売情報の載ったチラシを近所に撒き、駅にポスターを貼り、メガホンを片手に店頭で叫べば、モノは飛ぶように売れた。呼び鈴を押して各家に飛び込み訪問すれば、高額な英語教材が売れたし、電話一本かけるだけで高級羽毛布団が売れた。
人口が増え続け、景気が良く、競合店も少なかった昭和のビジネスは、商売人にとって天国のような世界だった。
状況が一変したのは、平成以降である。
全国展開する大手チェーンやコンビニが地域の商圏に参入、高度なマーケティング戦略と圧倒的な商品力によって、地域密着型の個人商店は次々に駆逐されていった。駐車場を完備した豊富な品ぞろえの大型ショッピングモールの進出によって、消費者の流れが変わり、小さなお店はどんどん姿を消していった。
そんな厳しい状況下で、唯一の勝ち筋として登場したのがインターネットビジネスだった。ホームページでお客を呼び、ネットショップで商品を売り、SNS(交流サイト)やアプリで情報を発信する手法は、小さなお店にとってコストのかからない優れた集客方法だった。
リアル市場を追い出された小さなお店は、一斉にデジタル販促へ舵を切った。ネットやスマホを使ってお客を集め、商品を売る施策に力を入れていったのである。
ところが令和になると、厳しい現実が待ち受けていた。
2020年にはコロナ禍がやってきた。消費者は家に閉じこもり、お店に人がやってこなくなった。
非接触の商売を強いられるようになった大企業は、本気でデジタル販促に力を入れ始めた。デジタルに強い若手人材を高給で雇い、高度な情報システムを導入し、ネット広告に予算を投下、アナログ戦略からデジタル戦略へと一気に移行していった。
チャットやオンラインアプリによるデジタル接客。インスタグラムやXなどのSNSを活用したお客の囲い込み。ショート動画でファンを集め、生成AIに考えてもらったセールストークによる接客。本来であれば10年ぐらいかけて少しずつ進むはずだったデジタルの売り方が、たった数年で、あっという間に普及していった。
小さなお店のオーナーが片手間でホームページやSNSを更新し、お客を呼べる時代は終わってしまった。ネットを活用した売り方は、年間予算に数千万円以上もかけられる、限られた企業だけができるものへと変わってしまった。
手ごわくなったのは大企業だけではない。デジタルツールを使いこなし始めた消費者は、小さなお店を選別するようになった。
SNS経由でお店や商品の情報を集める。来店の前にグーグルマップで口コミをチェックする。ネットの動画で店内の様子を確認する。そして、「絶対に失敗しないはず」という確証を持った後で、お店に足を運ぶようになった。
昭和、平成、令和と時間がたって、小さなお店がたどり着いた現在は、手ごわい大企業と、財布の紐を緩めない消費者たちを相手にする、地獄絵のような社会となった。
では、果たして小さなお店は、令和の時代に生き残れるのか?
結論を言えば「YES」である。
小さなお店の最大の強みは柔軟性にある。組織が小さいから売り方を自由に変えられる。商品も客層も臨機応変に変えられるし、組織も仕事のやり方も一新できる。
大企業がやっているようなデジタル戦略は捨て、小さなお店に向いているネットの売り方に資源を集中する。商圏のお客を徹底的に囲い込んで新規客を集め、優良顧客に育てる方法を仕組み化する。
情報発信の際には、「売り手の顔」を前面に出す。お店のファンになってもらい、値段が高くても買ってもらえるビジネスに変える。
時代遅れと思われていたポスティングや、看板を使った販促を再評価する。お金のあまりかからないアナログの集客法にあえて取り組むことによって、新規客と優良顧客を同時に集める。
さらには、少人数でも商売を回せる組織に変える。少ない投資額で利益を最大化させる策を講ずれば、小さなお店は令和の時代でも勝ち抜けるはずである。
本書ではこうした小さなお店に合った売り方を、わかりやすいメッセージ性のある言葉と、イラストを駆使して解説していきたい。
第1章では、即効性のある集客、販促ノウハウ。
第2章では、新規客やリピーターを増やす集客術。
第3章では、最新のキャッチコピーやネーミング手法。
第4章では、インフレ時代における客単価向上策。
第5章では、小さな会社のための経費削減と経営改善の方法。
本書で取り上げる50の手法は、読者がこれまで抱いていたマーケティングの常識とはちょっと違うかもしれない。しかし、本書を参考に小さなお店や小さな会社の方々が、新しい方法に挑戦して結果を出し、元気になっていただけるならば、著者としてはうれしい限りである。
【目次】



