eBayなどのネット販売が普及する一方、その多くは個人間の取引であり決済に問題を抱えていました。すなわち、買い手は見も知らぬ相手にクレジットカード番号を教えたくなく、かといって銀行振込では先払いの不安が大きすぎます。この問題を解決したのがペイパルでした。その業績を『 マンガ ビジネスモデル全史〔新装合本版〕 』(三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画)から抜粋してお届けします。

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公開鍵暗号方式がセキュリティを与えた

 1990年代に入ると為替・決済システムの変化が加速します。その本質である情報ネットワークの構築・運用コストが劇的に低下し、さらに暗号化による信頼性が上がったからです。

 インターネット上のオンラインショップでもクレジットカードが使えるようになったのは92年のことでしたが、通信セキュリティの向上によって加速度的に普及し、日本でも半分がクレジットカードによって決済されています。

 それでも埋まらなかった問題を解決するため、98年、ペイパルが誕生しました。それに目を付け翌年、会社ごと買収したのがイーロン・マスク(Elon Musk、1971~)であり、彼は「クチコミキャンペーン」を成功させてペイパルのユーザー数を飛躍的に増大させました。その舞台こそが、世界最大のオークションサイトとなりつつあったeBay(1995~)でした。

 eBayでは多くが個人間、もしくは個人と中小・零細企業間の取引であり、利用拡大のためには2つの壁がありました。信用保証の壁と、少額決済の壁でした。

ペイパルが解決した2つの壁

 買い手は見も知らぬ相手(個人)に、クレジットカード番号などを教えたくありません。かといって銀行振込では、手数料がもったいない上に先払いの不安が大きすぎます。そしてそもそも、売り手側も零細すぎて(もしくは個人)、ほとんどクレジットカード会社の審査に通りませんでした。ペイパルはそれらを解決しました。

 サービス開始から25年。今やペイパルは、約200カ国の4億人、3000万店舗以上を結ぶ、国際的な為替・決済システムとなりました。

 eBayは、ペイパルが2002年2月に上場した直後に買収を決め、15億ドルを投じました。高額すぎると批判もありましたが、ペイパルは年間20億ドルの利益を生み出し、eBayを支える大きな柱となりました。

 そして同時に、この買収は世の中に「ペイパルマフィア」と呼ばれる若き「大金持ちの起業家」たちを飛び立たせました。シリアル・アントレプレナー(連続起業家)であるマスクは、さらにスペースX(2002~)を立ち上げ、テスラ・モーターズ(2003~)を引っ張ります。他にも多くの若者たちが被買収企業に安住することなく、次への挑戦に向かいました。そのこと自体が、シリコンバレーにおける「起業のスタイル」をも変えることになりました。

シナリオ/星井博文 画/飛高翔 編集協力/トレンド・プロ

『経営戦略全史』に続く第2弾

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三谷宏治・著/星井博文・シナリオ/飛高翔・画/日本経済新聞出版/2090円(税込み)