「ちゃんと頑張っているはずなのに、なぜかうまくいかない」——そんな焦りや疲れを、感じたことはありませんか。集中力が続かない原因は、意志の弱さでも、努力不足でもありません。問題は、私たちが気づかぬうちに“頑張りすぎて”いることにあります。電話、メール、SNS……絶え間ない刺激にさらされる現代人の脳は、休む間もなく疲弊しています。そんな状態から抜け出す方法を、神経心理学と実践知の両面から示したのが『 脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術 』(マルク・ティッヘラー、オスカル・デ・ボス著/児島修訳)です。オランダで10万部を超えるベストセラーの本書を翻訳した児島修さんは「休むことに罪悪感を覚えなくていい。むしろ、適切に休めば仕事も人生もうまくいく」と語ります。本書から「訳者あとがき」をお届けします。

現代特有の問題にスパッと解決策を提示

 「自分では頑張っているつもりなのに、最近、何もかもがぱっとしない」
 「なぜ私は、仕事や勉強にうまく集中できないのだろう」
 「集中力さえあれば、もっと多くのことが成し遂げられるはずなのに……」

 みなさまの中には、こんな思いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 本書はまさに、こうした私たちの悩みに対して、極めてシンプルで、かつ驚くほど効果的な解決策を提示してくれる画期的な1冊です。

 本書は2019年にオランダで刊行され、人口1800万人強の同国で10万部のベストセラーになり、2025年に英語版として刊行された『Focus On-Off: Fuel Your Attention, Get More Done』(フォーカス・オン/オフ:集中力を高め、多くを成し遂げる)の邦訳版です(オランダ版のタイトルは『Focus AAN/UIT: Dicht de 4 concentratielekken en krijg meer gedaan in een wereld vol afleiding』)。

 著者は、集中力と注意に関する第一人者のひとりである心理学者のマルク・ティッヘラーと、人々の生産性と集中力の向上を支援するサービスを提供する研修企業「フォーカス・アカデミー」の創設者であるオスカル・デ・ボス。

 マルクとオスカルの2人は、学術的な知見と実践的な手法の両方の観点から、現代人にとって大きな課題である集中力不足の問題への答えを、多角的な視点でバランス良く探っていきます。

 著者はまず、私たちの集中力が欠けてしまう要因を、①「刺激が少なすぎる」、②「内部刺激が多すぎる」、③「エネルギーが不足している」、④「外部刺激が多すぎる」の4つに分解して、わかりやすい図を用いてその仕組みを説明します。

 そこから、1つずつその要因を分析し、解決策を提示していきます。これによって私たちは、それまで漠然と考えてきたかもしれない「集中力」のメカニズムとその問題点を、それらへの解決策を、はっきりと頭に浮かべられるようになります。

 タスクが簡単すぎると、私たちは退屈さを感じて、集中しにくくなります(①「刺激が少なすぎる」)。このような場合、意識的にタスクの難易度を上げることが効果的です。また、ここで重要なのが、「マルチタスク」と「タスクスイッチング」を区別することです。世間一般で言われているのとは異なり、「マルチタスク」(集中すべきメインタスクと、無意識的にできるサブタスクの組み合わせ)はむしろ集中力を高めるのに役立つのです。

 また、私たちの頭の中で生じる雑念も、集中力の大きな妨げになります(②「内部刺激が多すぎる」)。著者は、「気になることを書き出すこと」などをはじめとする、ごく簡単な方法で、こうした心のざわめきを抑えられることを教えてくれます。

 本書ではまた、③「エネルギーが不足している」という問題を「十分な睡眠を取ること」などで、④「外部刺激が多すぎる」という問題を「通知オフ」や「集中タイム」などで解消する方法を説明します。

 さらに、「脱集中」によって創造性を高める方法や、オフィス全体で集中力アップに取り組む方法など、私たちが個人・集団として取り組める集中力アップの改善策も、網羅的に提供してくれます。

「深く集中できること」がもたらす価値

 本書を読めば、あなたはこれまでは漠然としかとらえていなかったかもしれない集中力の問題に、実に整然かつシンプルに取り組めるようになります。

 実践方法は簡単です。集中力が低下する4つの原因を頭に思い浮かべ、今の状況がどれに当てはまるかを特定して、適切な対策を講じていけばいいのです。

 また著者は本書全体を通して、「脳をオフにすること」の大切さも教えてくれます。本書をお読みになった読者は、この「オフ」の効果がとてつもなく大きなことを理解できたはずです。

 そのことを頭の片隅に置いておけば、これからは罪悪感を覚えることなく、作業の合間に散歩をしたり、頭を空っぽにして自然の風景を眺めたりすることができるようになるでしょう(休憩時間や隙間時間に、真っ先にSNSを覗いたりすることも減るはずです)。そしてその後に、びっくりするくらい作業が捗ることも実感できるにちがいありません。

 何より、こうした時間は、単なる「作業の合間の休憩時間」ではなく、私たちの人生を豊かにしてくれる、価値あるひと時として、積み重なっていくはずです。

 私たち現代人は、多忙で刺激の多い毎日を過ごしています。やらなければならないことは多く、私たちの注意を巧みに奪おうとするSNSやネットの刺激的な情報もますますあふれています。そんな中で、仕事や勉強、趣味にうまく集中できず、ストレスや不満を覚えている人は多いはずです。

 本書のアドバイスに従って集中力を取り戻すことで、私たちは生産性を高められるだけでなく、人生全体の充実感を味わえるようになるはずです。自分にとって大切な何かに、深く集中して取り組めること──私たちが日々を生きるうえで、これほど価値のあることも、そうはないでしょう。

 あなたが集中力を取り戻すことは、あなた自身の人生はもちろん、あなたの大切な人たちや、あなたと関わるすべての人たちにとって大きな恩恵をもたらしてくれるはずです。

 本書が、読者のみなさまが豊かで充実した人生を送ることの一助となることを心から願っています。ぜひ折に触れて本書を読み返し、この価値ある情報をあなたの血肉としていってください。

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