毎年11月に実施される行政書士の試験。猛暑のなか、追い込みの勉強に熱が入っている人も多いだろう。ロングセラー『うかる! 行政書士 必修項目120』の最大の特徴は、最重要テーマを覚えるために特化した本であること。受験指導校に通っている人も、独学で勉強している人にも役立つ。そこで、伊藤塾・行政書士試験科主任講師で本書の編者でもある志水晋介さんに、行政書士試験に合格するために必要な「記憶法」と、『うかる! 行政書士 必修項目120』の効果的な活用方法を語ってもらった。
正答率50%以上の問題を落とさないこと
行政書士の試験に合格するためには「記憶」が鍵となります。伊藤塾では毎年、受験生の正答率を調べていますが、2023年度の試験は難しかったですね。特に法令等の「憲法」が難しかったと思います。2023年度の択一式の正答率を見ると、50〜60%の問題は累計148点しかありません。例年だと累計で160点ぐらいでした。ただ、一方で45~50%の正答率の問題は累計で168点になっていますから、正答率50%以上の問題を落とさず取るのが重要です。そのためには盤石な基礎固めが大事であり、本書を上手に活用してもらいたいと思います。
合格に必要な3ステップ
では、具体的に本書をどのように活用すればいいのでしょうか。
まず1つめは、重要項目が整理されている『うかる! 行政書士 必修項目120』の内容をしっかり記憶することに尽きます。ダラダラと読み進めるのではなく、まずは学習計画を立ててください。「範囲」と「時間」を定め、赤字で記述してあるキーワードを完全に覚えましょう。最終的には赤字部分を穴埋め問題にして、答えられるかどうか自分で小テストをするといいと思います。
赤字部分を覚えるときには、「音読」が効果的です。声に出して読み、音が耳から入ってくることによって、五感が刺激され、記憶が定着しやすくなります。
→学習計画は不可欠
・覚える際は、音読し、赤字箇所を書きながらやると効果的。
・時間が来たら(覚えたら)、赤シートで隠してテストをする(間違えはチェックしておく)。
・間違えたところを覚え直し、翌日、もう一度赤シートで隠してテストする。
2つめは赤シートの活用です。再受験生の人と話していると「『必修項目120』で勉強していました」と答える人がいますが、「赤シートを使った?」と聞くと、使っていなかった人が結構多いんです。
僕自身は中学生ぐらいのとき、せっせと穴埋め問題を自作していました。ですから、初めて赤シートを見たとき、「今までの自分の苦労は何だったんだ!」と衝撃を受けました。赤シートをしおりに使うだけではもったいないです。ぜひ活用してください。
赤シートの使い方は、(1)赤字部分をシートで隠して答えてみる。(2)間違いをチェックする。(3)間違えた部分は、当日か翌日に再度確認する──この繰り返しです。地味な作業ですが、このやり方が最も確実です。
どうしても覚えられない項目を覚えるには
勉強をしていくなかで「どうしても覚えられない」項目や表が出てくるはずです。苦手な分野を覚えるのはつらい作業ですが、それは合格する人も同じです。合格者が試験当日にどんな勉強をしているかというと、最後の最後まで覚えられなかった項目を頭の中にたたき込んで、試験に臨んでいるのです。
言葉は悪いですが、ひとまず試験の間だけ苦手分野を覚えていればいいわけです(もちろん、実際に行政書士として仕事をするときには理解していないといけませんが)。
僕も試験当日はぎりぎりまで苦手分野をたたき込み、頭からこぼれ落ちないように、そーっと試験会場の席に着きました。試験開始と同時に問題用紙の空白に覚えてきたことを書き出し、それから試験問題を解いたという記憶があります。
では、どうやって頭にたたき込むかといえば、ここでも赤シートが活躍します。苦手な部分を赤シートで隠して、自分でテストをします。そして間違いをチェックし、間違えた部分だけを答えるのではなく、項目全体を再テストします。
間違えた部分だけを答えるのなら簡単ですが、再テストをすると1度目は正解したところを間違えたり、2回続けて間違えたりという部分が出てきます。それを満点が取れるようになるまで、何回も解き直します。
満点を取ったとしても、また数日後に再テストをすると忘れているので要注意です。つらい作業ではありますが、何度も何度も地道に頭にたたき込んでいくしかありません。よく「年齢のせいか覚えが悪い」と言う人もいますが、5回で忘れるなら、10回でも解き直すぐらいの努力が必要です。
・赤シートで隠し、テストをする。
・1つでも間違えたら、もう一度覚え直す時間をとる。
・もう一度テストをする。
・すべてを正解できるまで続ける。
・それでも時間が経過すると忘れるが、忘れたときはもう一度同じようにする。
とはいえ、つらい作業なので、ちょっとしたご褒美を用意するといいですね。合格した暁(あかつき)には壮大なご褒美を用意しておき、日々の勉強では休憩時間にコンビニに行って好きなお菓子を買う、何か好きなことをするといったプチご褒美を用意しておくと乗り切れます。
記憶する作業は塾や学校ではできないため、自宅でコツコツ取り組むしかありません。ご褒美もうまく使いながら、頑張ってください。
択一式の準備不足は記述式では挽回不能
試験直前になると増えるのが、「択一式に自信がないので、記述式で何とかなりませんか」という質問です。択一式は1問4点。記述式は20点ですから、一気に点数を稼ぎたい気持ちは分かります。でも残念ながら、「何とかなりません」。
そもそも記述式は択一式の延長線上にあります。択一式は○×をつけるだけで解答できますが、記述式では主要項目を自分の言葉で語ることができるまで、理解を深めておく必要があります。記憶の定着度としてのレベルが違います。
ちなみに本当に主要項目を理解しているかどうかは、「セルフレクチャー」で確認するのがおすすめです。セルフレクチャーとは自分が勉強したことを自分に講義するように説明すること。意外に言葉に詰まると思います。
さらに効果的なのは、法律の勉強をしていない人を前に、例えば「権利能力」などの用語を説明してみること。分かりやすく、的確に説明するのはかなり難しいことが分かります。こうしたセルフレクチャーは後々、記述式の試験で役立つでしょう。
試験が迫ってくると、何とか合格したい、そのためのテクニックを知りたいという気持ちになるのも分かります。しかし、行政書士の試験に関しては重要項目の記憶が第一で、解法は二の次です。重要項目をしっかり記憶できていれば、解法なんて知らなくても合格できます。
基本に立ち戻り、みなさんの勉強に『うかる! 行政書士 必修項目120』を役立ててもらえたら、幸いです。
文/三浦香代子 写真/伊藤塾提供
行政書士試験合格にとって重要な学習テーマ120項目に知識を絞り込み、記憶しやすいよう表形式に整理してまとめました。知識の精度を高めて、合格を確実なものにしましょう。2024年度試験から適用される新試験制度にも対応。
志水晋介編、伊藤塾編/日本経済新聞出版/2200円(税込み)



