子どもから高齢者まで持っていることが当たり前となったスマートフォン。しかし、スマホを通じて家族が詐欺事件や犯罪などに巻き込まれないか心配という方も多いでしょう。子どものスマホ、シニア世代の親のスマホは、どのように見守ったらいいのでしょうか? 家族とスマホについて多数の著書を持つ増田由紀さんと高橋暁子さんのお二人に対談していただきました。

スマホを「ただ持っているだけ」のシニアが多い
高橋暁子さんは大学客員教授として、また、著書でも子どもや若者とスマホの使い方について多く発信されています。一方、増田由紀さんは、教室でシニア世代にスマホを教えながら、書籍やWebでも使い方を発信されています。スマホは、未成年の子を持つ親、高齢になってきた親を持つ子どもという立場の中間世代の私たちにとっては、いろいろと悩みのもとになっています。
増田由紀(以下、増田) スマホの世帯普及率がとうとう9割を超え、日本ではほとんどの人がスマホを持つようになりました。シニアも多くの方がスマホはすでに持っています。でも、シニア層は「ただ持っているだけで、どうすればいいのか分からない」という方もまだまだ多いというのが、地方での講習会・講演会で教えている側の実感です。
JA(農業協同組合)さん主催の講習会などにも行っているのですが、「スマホの操作が分からない」と農協の事務局に聞きに来る方もいらっしゃるんだそうです。その原因としては、お子さんが都市部に住まわれていて、身近に聞ける人がいないので、うまくスマホデビューのスタートが切れなかった方が多いのかなと思います。
高橋暁子(以下、高橋) 高齢になった親のスマホデビューで言えば、私も経験があります。親の世代の場合、スマホに関して最初は「何が分からないのかも分からない」ですよね。母親が何かスマホのことで聞いてきて、専門の私が電話で聞いても、母は基本的な単語も分からないわけです。そのため、はじめは基本の設定をしてもらったり、問題を解決する方法を伝えたりすることも難しく、世代間の知識のギャップの大きさを感じました。
増田 シニアの生徒さんからは「先生、カタカナは、1文に1回までにして! 3回でアウトよ!」と注意されています。私たちが当たり前に使っている単語も、シニア世代には通用しないのが常識です。「お母さん、ログインしておけば写真が自動的にクラウドにバックアップされるから安心だよ」なんて言ったら、もうスリーアウトです(笑)。
自分と同じ機種を使ってもらうと後が楽になる
高橋 ちょっとした操作も、電話では教えづらいというのは経験上、感じます。子どもはすぐに覚えてしまうけれど、大人はちょっと電話口で言ったくらいでは分からないですね。
増田 電話だけだと難しいですね。最初は、お子さんが目の前で教えてあげられるのが理想です。教えるといっても、まずは「タップ」が確実にできるように一緒に見てあげるだけでいいんです。スマホに慣れないシニアの方の手元を観察していると、画面を押しすぎてしまったり、爪の先で押してしまったりなど、“我流のタップ”をされている方が多いんです。それが後々の誤操作につながり、簡単な操作がどんどん複雑になっていってしまいます。
高橋 ほかの方にアドバイスするときも、親に自分と同じ機種を使ってもらうといいとお話ししています。これは子どもに教えるときも同じなのですが、自分と同じ機種を使っていれば、ちょっとした操作を電話で聞かれても正確に答えられるので、教えるコストも低くなります。購入時のコストが安い機種でも、教えるコストが高ければ、タイパ、コスパは悪くなってしまいますよね。
増田 私も、よほどスマホに詳しい方でなければ親も同じ機種で、かつ「ちょっといい機種」を選んでほしいとお願いしています(関連記事: 親のスマホは何を買うのが正解? シニアこそ良いものを )。
高橋 「あまり使わないから一番安いものでいい」と選ぶと、すぐに容量がいっぱいになってしまうこともあります。これも知識がある人なら判断できますが、シニアは買うときにリスクを判断できません。
ほかにも、使い始めるときのお膳立てもポイントです。遠隔で親に教えるときには、親のスマホの設定が見えないと、そもそも教えられない。そこで、ホーム画面に並べるアプリやインストールするアプリも、最初にヒアリングしながら行いました。
増田 『 家族みんなが楽になる!親にスマホをもっと使ってもらう本 』でも触れていますが、親御さんの好みを分かってあげられるのも子どもがスマホを教えるメリットです。講習会では、参加者それぞれの趣味が何かを一人ひとりお聞きしておすすめするのは難しいですから。
高橋 そこは親子での会話で、「写真が好きでしょ」とか「買い物が安くなるよ」など、インセンティブがあることを説明すると、食いついてくれますよね。そしておすすめのアプリを入れてあげて、自分たちが普段使うアプリも入れて、設定も済ませておく。そこまで準備をしておければ、遠隔で「右にあるのをポチってして」といった言い方でも比較的伝わりやすくなります。
増田 それから、スマホに興味を持ってもらう際、シニアには、やはり孫パワーですよね。あまりスマホを積極的に覚えたくない、という方でも、孫と交流したいからLINEも積極的にやるとか、写真共有の操作を覚えるという方はとても多いです。孫を絡ませるというのは、モチベーションアップのためにすごく効果的です。
高橋 孫とやりとりができるというのは、インセンティブとしてすごく大きいですね。「LINEを使えば孫と直接やりとりができるから」と操作を覚えてもらえます。また、PayPayのポイント還元のように、分かりやすく金銭的なインセンティブがあることも励みになります。そうした明らかなインセンティブを示してあげることでも、やる気が出ますよね。
増田 孫と直接やりとりができるのもうれしいんですよね。最初は家族のLINEグループだったのが、直接、孫にだけLINEをして「お母さんには内緒だぞ」ってPayPayでこっそりお小遣いをあげたりする方もいて。そういうのが楽しいらしいんです。
高橋 家族のLINEグループはまず作っておきたいですね。LINEグループでは「何か連絡があるとき用」と考えず、何かスマホで困ったことや、何でもないことでも日ごろから共有していってほしいと思います。もちろん、普段からやりとりがあれば元気にしているかも分かりますし、コミュニケーションを通して、スマホについて知ってほしいことを、普段から話題にするように心がけていくといいですね。
「子どもに隠されない」関係性がトラブルを回避する
一方、ジュニア世代のスマホはどうでしょうか。小学生から大学生まで幅広く子どものIT利用を見ていらっしゃる高橋さんは、著書『 若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義 』も出版されました。若者のスマホ利用はブラックボックス化していて、不安に思っている親世代の方も多いのではないかと思います。
高橋 まず、未成年の子どもを持つ私たち世代が、まだ40歳、50歳なのに、あまりにもスマホやIT事情に暗すぎる人が多いことに驚きます。大前提として「XやInstagramなどのSNSは13歳未満禁止、LINEも推奨年齢12歳から」とされていることも知らないご家庭も多いのではないでしょうか。
子どもは学校や友達から、次々と情報を吸収して、またネットを検索してさまざまなことを知っています。「そんなことも知っているの?」と驚くくらいです。ちょっと悪いことも、やろうと思えば検索してすぐできてしまう。知識を持っていない親は歯が立たないでしょうね。
中学生・高校生の子どもにとってスマホは際限なく使えてしまうもの。そこは厳しく管理したり、時には禁止したりするようなルールも必要なのでしょうか。
高橋 禁止するのは推奨できません。なぜなら、禁止したりスマホを取り上げられたりすると、子どもは警戒して、隠すようになるからです。そして隠されるとトラブルになったときに後手に回って取り返しがつかなくなります。例えばLINEグループのいじめも、外からでは絶対に分かりません。ですから、まず親はいつでも「困ったことない?」「何かトラブルない?」と、聞いてあげることです。
増田 本当に、そこはシニアも共通ですよね。親には元気でいてほしいし、スマホも使って連絡がいつでも取れるようになってほしいと思っていても、ほったらかしで、質問や相談に答えないと「どうせあの子、忙しいから話しても無駄でしょ」となって、何かあっても話してくれなくなったり、小さなトラブルも隠すようになったりしてしまうんです。
高橋 そうですね。子どもに信用してもらうにしても「何を言っても、怒るとか、スマホを取り上げるということは絶対にしないから、あなたの安全が一番大事だから、絶対に何かあったら相談してね」と真摯に伝えることが大切です。
お子さんには「だってお母さん、スマホのこと何にも知らないのに頼りになんかならないよ」と言われるかもしれません。「それでも、私は大人だから、どこに相談すれば問題が解決できるか知っている。相談機関も知っている、だから信頼して必ず相談してね」と伝えてください。そのためには、親自身、スマホに関してどんな事件があってどんな相談機関があるかを、普段からアンテナを張って調べておいてほしいです。
普段から会話に出すことで話しやすい土壌をつくる
増田 思春期の子どもによっては、LINEの中身は見せたがらないし、とにかく不安になるという親御さんもいらっしゃるでしょうね。
高橋 私の場合は、息子が中学生のときに、一度私のスマホを渡してLINEの中身を全部好きに見せてあげました。そうしたら、相手から受けた行為に対して同じようにお返しをしなくては申し訳ないという返報性の心理が働くんでしょうね。「俺はね、学年LINEがあって、クラスLINEと部活LINEがあって、これは仲良しグループで…」といったふうに説明してくれました。そこで「何か嫌なことを送ってくる子はいる?」と聞いたら「それはいない」ということでしたが、「オープンチャットをやっている子が多い」とか「学校外の友達とつながっている子もいる」というようなことを言っていました。
親が気になることについては「それについて会話をする」こと、普段から「親は分かっているよ、知っているよ」という土壌をつくることで、何かトラブルがあったときも相談しやすくなるんです。「部活のLINEでは何かある?」「友達とはどうしてる?」「何か面白いの見てる?」など、いろんな聞き方で普段の会話にしていくことが重要です。NTTドコモの調査でも「普段から親子の会話が多いほど、オンラインでつながっている相手を親が把握している割合が高い」ということが分かっているんです。
増田 スマホのことやLINEのことなどを積極的に聞いてあげるのはシニアも一緒です。親御さんがどのように使っているかを知っていれば、何か危ない目に遭っていないかも気付きやすくなります。「質問されると長くなるから……」なんて言わずに、普段からスマホのことを話題にして、いろいろ相談に乗ってほしいですね。
家族の安全なスマホ利用の土台になるのは、リアルのコミュニケーションなのですね。
(次回へ続く)
取材・文/宮崎綾子 構成/西 倫英(第二編集部)、市川史樹(日経BOOKプラス編集) 写真/小野さやか




