「データ活用はITっぽい」ということで、データ活用業務を情報システム部門に任せようと考えてしまうケースがある。しかし、ビジョンや必要なスキルが明確に異なるため、注意が必要だ。どのように組織作りを考えていけばいいのだろうか? 『 データ分析のリアル まるごとQ&A 』(永田ゆかり著/日本経済新聞出版)から抜粋、再構成してお届けする。
データ分析の専門部署を作るべきか
データ分析の専門部署は作った方がよいです。SoE(System of Engagement)を推進する専門部署を設置するのがおすすめです。
「データだからITっぽい」ということで、データ活用の機能や業務を情報システム部門に任せればよいと考えてしまうケースがあります。しかし、旧来型の情報システム部門の仕事と、データにまつわる仕事は、ビジョンや必要なスキルが明確に異なるため、注意が必要です。
情報システム部門は、多くの場合、SoR(System of Records、情報を蓄積する)を主軸に考えることが多く、一方、データ活用はSoE(System of Engagement、つながりを強化する)を主軸に考える必要があります。
そのため、課題の質や、それらの解決方法も大きく異なり、扱う製品や発想、仕事内容が異なります。SoE側のテーマを支えるデータ/デジタルの専門組織・部署を設置することがおすすめです。
草の根的活動が重要
データ/デジタルの専門部署が担う仕事は企業によって異なります。しかし、データ活用を浸透させ、データを「使わせる」ための、草の根的で地道な活動をデータ/デジタル部隊に担当させられるのであれば、データ活用は加速度的に進みます。
また、データ活用はツールやハードウェアなど“目に見えるもの”を買って終わりではなく、組織文化の醸成こそが中核であり、それには専門部署が必要です。
草の根的活動とは、メンバーの知見共有・コミュニティ醸成などで、次のようなものが一例です。
- 社内データ活用/任意のツール類専門ポータルページの設置
- 各ツールやライセンスに関するユーザーディレクトリ(ユーザー情報を格納する場所)の管理
- FAQ作成
- データ分析に関する習熟度を上げるための学習プランを共有
- データにまつわる社内イベントや勉強会の企画、告知
疑問や意見を共有できるような環境(オフライン・オンライン両方)を作ることで、人は自然と自律的にコミュニティで学べるようになります。
また、コミュニティが成熟していくと、自分自身のスキルを伸ばすだけでなく、人に教えたり、自発的に共有したりするようになっていきます。
技術的なサポートや問い合わせを受けるサポートセンターのような機能は、多くの会社ですでにあることと思います。しかし、強いデータ分析組織を作り、データ活用度をさらに上げていこうと考えているならば、問い合わせに対して受動的に対応するだけでなく、問い合わせがない状態でも能動的にゴール達成に向けた動きをすることが大切です。
なぜなら、データ活用を盛り上げたり、強固なデータドリブン文化を作ったりすることは、現在ない世界観を作り上げることであり、それは既存の問題に受け身で対応するだけでは実現不可能だからです。
こういった仕事は、華々しく分かりやすい成果が見えづらい仕事です。しかし、継続しないとデータ活用自体が知らぬ間にフェードアウトしたり、組織全体でデータを使うという意識自体が薄くなったりします。
データ分析は実際、「使わせる」というフェーズに入らないと、その価値を発揮しません。ですので、データで課題を「解く」以外の「使わせる」フェーズまで見据えて、専門部署を作った方がよいでしょう。
専門部署をどう作るか
データ/デジタル領域の専門部署の担う役割は様々です。これらを設置する場合、横串的機能を持たせることが重要です。横串的機能は、部署・組織としては、CoE(Center of Excellence、センターオブエクセレンス)などと呼ばれます。
役割やタスクは企業によって異なりますが、CoEの主な役目としては、次のようなものがあります。役割やタスクは、企業によって異なります。
- データ活用のスピード・アジリティ(機敏性)を上げる
- データ分析の標準化を図る
- 事業ノウハウとデータや技術ノウハウを結集させる
- 組織のデータマネジメントを定義・整備する
- 社内のデータに関するコラボレーション、コミュニケーション量を上げる
- データに関する投資を最大化する
データ/デジタル領域の部署に、いわゆるコーポレートITのようなサポート的機能ではなく、このCoE的機能を持たせる場合、配置の仕方は主に3つのパターンがあります。
- 分権型
- 中央集権型
- 分権と中央集権のハイブリッド型
データ活用・DXは継続的で地道なサポート活動がものを言います。ツールやハードウェアなど“目に見えるもの”を買って終わりではなく、組織文化の醸成こそが中核だからです。
そしてそれらは片手間で行うと、知らない間に取り組みがなくなっていたりします。……というわけで、CoEを設置する場合でも、明確な役割や権限の設定が重要です。
特にデータ活用の初期フェーズであれば、フルタイムでコミットできる方を数名配置し、本業を持ちながら横串的活動を行うパッションのある方を募るような、いわゆるタスクフォース型で立ち上げるのがおすすめです。
タスクフォース型では、本業の実務的な課題を見据えながら会社の横串的活動を行うことができます。本業を持っているメンバーに具体的な課題がすでにあるので、話が具体的に早く進みやすいというメリットがあります。
注意点としては、本業とのかけもちになるため、どうしても「片手間感」が出てしまいます。責任・権限の所在が曖昧になってしまうため、コミットメントが薄くなってしまうリスクを含みます。
ベースとして、フルタイムの専任を数名配置することを前提として、各事業からタスクフォース的に配置するという形がおすすめです(組織内では「兼務」の形をとることが多くあります)。
本書はデータ分析プロジェクトの「攻略本」です。プロジェクトの検討段階から、社内への浸透・活用まで幅広くカバー! 企業内外で直面する78の課題に、Q&A形式で答えます。
永田ゆかり著/日本経済新聞出版/2750円(税込み)

