データコンサルティングを行う会社、データビズラボを起業した永田ゆかりさんは、文系から独学でデータのスペシャリストの道に進んだ異色のキャリアを持ち、書籍『 データ分析のリアル まるごとQ&A 』(日本経済新聞出版)も執筆しています。永田さんに、これまでのキャリアとデータ分析の手法が学べる本を聞きました。
文系、理系という枠にとらわれない
私は現在、自分で創業したデータビズラボという会社の代表取締役を務めています。具体的な業務内容としては、データ分析や可視化、リアルタイムデータ集計を可能にする分析基盤の構築、品質の高いデータ分析・可視化を実現するためのデータマネジメントなど、事業上の課題をデータの課題に翻訳し、企業の持つ課題を総合的に解決するデータコンサルティングを行っています。
自らデータの会社を起業した──というと「バリバリの理系」と思われるかもしれませんが、大学時代は早稲田大学の政治経済学部で学んでいたので「文系」です。
実は「文系」「理系」なんて曖昧なもの。私は文系とされる学部出身ですが、大学時代に統計学や計量経済学の履修がありました。一方で、理系の大学院を修了した人でも統計学ですら履修科目に入っていない場合もあります。だから、文系、理系という枠組みにとらわれる必要はなく、データに興味があればデータ分析の分野で活躍できます。
大学を卒業後、コンサルティング業務などを経験しましたが、さまざまなお客様や社内の部署の人と接し、データを活用する中で、「データって面白いな」と。
表(おもて)に現象として見える課題は違ってもデータ自体の課題は似ていたり、業界は同じでもボトルネックとなるデータの課題は異なる部分にあったり、という発見がありました。事業の課題をデータの課題に翻訳し、解いていく、という流れが重要なのだと感じました。
現在も仕事を引き受けるときは、「業界の壁」を作らないことにしています。コンサルティング業界はセクター(業界)で組織がカットされていることがほとんどです。しかし、データやデジタルの世界ではセクターごとに切り分けているがゆえに解決できなかったり、機動性が落ちたりすることもままあります。また、柔軟性やクロスセクターの洞察、チームやスキルの多様性もデータ領域では重要であるため、弊社では業界をカットせず組織を作っています。クライアントは不動産、製造業、化粧品メーカー、メディア、IT、商社、巨大インターネット企業、放送・メディア業と多岐にわたります。
会社勤務を経て独立した後、仕事は順調だったものの、一人で引き受けられる仕事量や稼働量には限界がありました。また、後進の育成や社会にインパクトを与えるような仕事も一人では難しい。やはり、これはちゃんとした組織にしようと腹をくくり、2020年に個人から会社組織として起業という形をとりました。
今年は事業を拡大し、北海道支社も展開しています。なぜ北海道かというと、私が北海道出身だからというのも理由ですが、北海道には理系の優秀な大学が多いのに、そういう方たちが活躍する就職先が多くないと感じるからです。北海道の優秀な学生の就職先として、当社も選択肢の1つにしてもらえたらと思っています。農業や漁業などをデータでサポートしたいですし、それが地方創生につながればうれしいですね。
海外の教材で学ぶメリット
私がデータに触れ始めたのは社会人になってからで、独学で「習うより慣れろ」、OJT(職場内訓練)でスキルを習得してきました。データを扱うには言語やツールを使う必要がありますが、そういったスキルを習得する最初の入り口はオンライン教育サービスのUdemyなどで勉強し、そこからは主にアメリカ、イギリスの教材やリソースを使って理解を深めました。
なぜ、海外のリソースで学ぶかというと、情報量が圧倒的に多く必然的に選択肢も豊富で、質も高い傾向にあるからです。知りたい情報をざっとインターネットで検索すると、極端に言えば日本の10倍、100倍の質や量の情報があるイメージです。
今回紹介する『 #MakeoverMonday: Improving How We Visualize and Analyze Data, One Chart at a Time 』(Andy Kriebel、Eva Murray著/Wiley)は、X(旧Twitter)で展開されているデータ可視化のコミュニティ「Makeover Monday」を基にまとめた本です。このコミュニティでは、著者のアンディ・クリーベルさんとエバ・マーレイさんが毎週末に教材となるデータを提供し、世界中の人がそのデータをさらに「分かりやすく」「美しく」「ベターなものに」作り替えようと挑戦し、Xに投稿します。それらに対して、翌月曜日にアンディさんとエバさんの2人がフィードバックをくれるのです。
本書では、元データとデータ可視化後のビフォー・アフター、どうすればさらに改善できるかというアンディさんとエバさんのフィードバックが詳細に紹介されていて、非常に勉強になります。私は会社用と自宅用の2冊を購入して、日々見返しています。
「Makeover Monday」の活動は現在も続いていて、データ分析のスキルのレベルにかかわらず参加可能です。英語に抵抗がなければ、ぜひ参加してみてください。課題を提出したり、他の人の作品を見たりするだけでも、学びがあると思います。
もし、データに興味があるのに「文系だから」と諦めている人、やりたいことがあるのに「自分には無理」と尻込みしている人がいたら、「それは思い込みですよ!」とお伝えしたいです。
(後編に続く)
取材・文/三浦香代子 取材・構成/栗野俊太郎(日経BOOKSユニット) 写真/鈴木愛子
本書はデータ分析プロジェクトの「攻略本」です。プロジェクトの検討段階から、社内への浸透・活用まで幅広くカバー! 企業内外で直面する78の課題に、Q&A形式で答えます。
永田ゆかり著/日本経済新聞出版/2750円(税込み)



