起業、楽天イーグルスの立ち上げ、ヤフーでのPayPay立ち上げなど数々の事業を成功させてきた小澤隆生氏。スタートアップでも、大企業の新規事業立ち上げでも、投資家としても大きな成果を残してきた。作家・北康利氏の新刊『 小澤隆生 起業の地図 』から、小澤氏が薦める起業家の必読書を一部抜粋して紹介する。
起業家や投資家は人間としての総合力(小澤の言う「基礎体力」)が求められる。『小澤隆生 起業の地図』の「おざーんの法則」の項目「本を読み、人の話を聞こう」も一般論であり、どんなことを通じてでも「基礎体力」をつければいいのである。
だが確かに、本を読み人と会うのが一番手っ取り早い心のカンフル剤であるのは間違いないだろう。ビズシークの時の共同創業者である岡元淳に取材した際、
「昔から小澤君はよく本を読んでましたね」
と述懐していたのが印象的だった。小澤が立ち上げた古書探しのサービスも本好きから来ていたのかもしれない。

小澤にとっての「起業家の必読書」的な本も何冊か存在する。
ビジネス書では何はともあれ、ベン・ホロウィッツ著『
HARD THINGS(ハード・シングス)
』だ。小澤はこの本に惚れ込み、日本語版の序文を寄せている。そんな小澤は筆者にこう語った。
「起業や事業をやっていくにあたって嫌なことが大量に書いてある本。起業したての頃の記憶が甦って、読んでいて吐き気がするほど。しかし、これぞリアリティ。自分がやることはほぼうまくいかない。自信を喪失することはいつもだが、それでもなんとかあがいてあがいて前に進んでいくしかない。見せかけのノウハウ本ではなく、成功は地獄のようなプロセスの先にしかないという真実を教えてくれる」
「面白いこと」ばかりを選んだはずの小澤の人生にも、地獄のような「HARD THINGS」が何度もやってきた。経験済みの方には「実に嫌な本」だそうだが、起業する前に覚悟を決めるべく、若い人たちが一読しておいてもいいのではないだろうか。
吉田松陰からイーロン・マスクまで魅力的な人物から学ぶ
歴史や偉人に学ぶことも好きで、筆者とのインタビューで自分の愛読書についてこう語っている。
「小説では司馬遼太郎著『 世に棲む日日 』(文春文庫)ですね。(司馬遼太郎が描く)吉田松陰や高杉晋作の生き様が好きです。特に高杉晋作。異常な行動力、周囲を巻き込む力、そのために自分がまず動く。そしてすべてを人生の暇つぶし的に捉える少し醒めた感覚も非常に共感しています。僕はいつも迷ったら面白いほうにいく傾向があり、どこかでいつも笑いを求めているところがあります。高杉晋作にも、そういうところがある気がします。吉田松陰の影響力もすごいです。僕は吉田松陰のような狂気は持ち合わせていませんが、人に囲まれながらともに学び、切磋琢磨することでごく平凡な人でも大きなことを成し遂げることができると信じているところが似ています。幕末は本当に学ぶことが多いです。黒船によって人生や歴史が変わり、いつの間にかライトタイムライトプレイスになっている。黒船とは要するに、自分ではコントロールできない変化です。僕にとっては60億円の借金がそれでした。それに気づいてからは、黒船を意識的に迎えるようにしています」
ほかに好きな本は、『起業家 ジム・クラーク』『ヴァージン 僕は世界を変えていく』『ニュー・ニュー・シング』『 The Power Law ベンチャーキャピタルが変える世界 』。
そして最近の本としては『イーロン・マスク』を挙げていた。小澤はマルチタスクのできる先人としてマスクを大変尊敬しており、2013年にテスラが日本で発売開始すると、その1号車を購入している。
「今ならそこそこ値打ちものですが、どうしてあの時、車じゃなくて株買わなかったんですかね? 我ながら……」
と苦笑する。
最近、またテスラの新車と、今度は株も買ったそうだ。そう言えば、マスクはカメラを向けられるたび変顔をすることで有名だが、小澤もそうだ。妙なところが似ている。
小澤は酒を飲まないので、会食がない日は読書の時間になることが多い。それが彼のアンテナをさらに研ぎ澄ませている。
北康利 著/日経BP/1870円(税込み)



