春夏秋冬、季節ごとにお届けしております「手前みそ」企画。2024年冬も、ぜひお読みいただきたい「日経の本」を全力でご紹介してまいります。推し担当は、「日経の本」の作り手が30人以上も所属する日経BOOKSユニット第1編集部を率いる赤木裕介部長。聞き手は日経BOOKプラスの常陸佐矢佳編集長が務めます。

自信を持って推したい「日経の本」、2024年冬もたっぷりご用意しました
自信を持って推したい「日経の本」、2024年冬もたっぷりご用意しました

赤木裕介(以下、赤木):今年も早いもので残りあと数日。2025年はなんと「昭和100年」なんですよ~と、昭和生まれならではの感慨を語ってみました。そんな昭和人間(および彼らの生態に日々驚いている若者)向けの一冊が、『 昭和人間のトリセツ(日経プレミアシリーズ) 』です。日経BOOKプラスの人気連載が、本にまとまりました!

常陸佐矢佳(以下、常陸):書籍の元になった連載「昭和人間のトリセツ~自分や周囲との付き合い方」は、公開するたびに大人気でした。著者の石原壮一郎さんは昭和人間には懐かしいベストセラー『大人養成講座』で30年前にデビューされましたが、今回は「中高年にとっての大人養成講座」を意識したそうですね。

赤木:本書の最初に、昭和人間度を測るチェックリストが掲載されているのですが、私は10個中5個に「YES」がついたので、昭和人間度70%。立派な「後期昭和人間」でした。常日頃からご迷惑をおかけしている若手のみなさんには、「許してチョンマゲ」とお詫(わ)びしておきたいと思います。

常陸:「OK牧場!」と返事をしたくなる私も立派な後期昭和人間です。そんな昭和ワードに出くわしたとき、世代間コミュニケーションのヒントがつかめる一冊ですよね。

赤木:21世紀に入ってからはや25年。ミレニアムや2000年問題なんてつい最近のこと、と思ってしまった方は、ぜひ本書を読んで、楽しい昭和人間ライフを送るコツをつかんでください。

『昭和人間のトリセツ(日経プレミアシリーズ)』(石原壮一郎著)。お薦めするポーズに、そこはかとない昭和感が出ておりますかね…
『昭和人間のトリセツ(日経プレミアシリーズ)』(石原壮一郎著)。お薦めするポーズに、そこはかとない昭和感が出ておりますかね…

年末年始にお薦め! コスパ最高の文庫本

赤木:クリスマスにお正月、冬休みといえばやっぱりワイン! たくさん種類があって選ぶのに困るし、ちょっとうんちくが語れると素敵(すてき)だな~、と思ったりしませんか。そんなニーズに応えるのが『 「家飲み」で身につける語れるワイン(日経ビジネス人文庫) 』です。古代エジプトやギリシャの時代からのワインの歴史について語りつつ、欧州各地のワインの特徴、格付けの読み解き方、チリや日本などワイン新興国の取り組みまで、幅広く教えてくれます。1000円台からのコスパのよいワインもたくさん紹介していますので、リカーショップで買う1本を選ぶときにも役立ちます。

常陸:この本を紹介する連載「飲みながら磨く『ワインの教養』」でも、「世界最古のワインは赤?白?」「ボジョレー・ヌーボーの由来は?」といった切り口で基礎教養を楽しく学ぶことができます。問題はアルコールが入った後、うんちく披露まで無事にたどり着けるかが心配です(笑)。

『「家飲み」で身につける語れるワイン(日経ビジネス人文庫)』(渡辺順子著)。お薦めするポーズに、ワインをたしなむマダム感を込めて…
『「家飲み」で身につける語れるワイン(日経ビジネス人文庫)』(渡辺順子著)。お薦めするポーズに、ワインをたしなむマダム感を込めて…

赤木:そうやって、ゆるんだ飲み会生活を続けていると、気がつけばお腹(なか)がふくよかになってベルトの穴が2つくらい移動していた、なんてことになりかねません。そこでお薦めしたいのが『 フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか(日経ビジネス人文庫) 』です。「1日4~5杯、水を多く飲みましょう」「市場(マルシェ)でお店の人との会話を楽しみながら、旬のものをバランス良く買いましょう」なんて、おしゃれですぐにできそうな体重のコントロール法がたくさん書かれています。おいしそうなレシピも入っていますので、冬休みにぜひチャレンジしてみてください。

常陸:お正月太りを防ぐ効果もありそうです! 気になる人は「はじめに:『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』」をご一読ください。

『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか(日経ビジネス人文庫)』(ミレイユ・ジュリアーノ著、羽田詩津子訳)。お薦めするポーズに、フランスっぽさを込めようとしましたが…そもフランスっぽさとは?
『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか(日経ビジネス人文庫)』(ミレイユ・ジュリアーノ著、羽田詩津子訳)。お薦めするポーズに、フランスっぽさを込めようとしましたが…そもフランスっぽさとは?

文庫を読んで、人生を豊かに

赤木:続いて、人生を豊かにしてくれる方法を教えてくれる文庫をご紹介します。

 まず『 メモをとれば財産になる(日経ビジネス人文庫) 』です。この本は、メモ術の最高峰といわれている「ツェッテルカステン」という手法を分かりやすく解説したものです。ただメモをとるだけでは、見返しもしない紙の山ができるだけ。「思いついたときに書くメモ」「永久保存用のメモ」「文献で気になるところを記録したメモ」などと分類してボックスに入れてきちんと整理するだけで、資料としての価値が何倍にもなる、というものです。斬新なアイデアを思いついたり、質の高いアウトプットをしたりするために、このメモがすごい威力を発揮します。まずは「1日3枚のメモをとる」ことで十分。すぐに試してみたくなる一冊です。

常陸:「ツェッテルカステン」とは舌がもつれそうな名前ですね! メモは書いて満足してしまいがちですが、私は読書をアイデアにつなげるメモ術が魅力的でした。まずは「はじめに:『メモをとれば財産になる』」の目次から気になるメモ術があるかどうか、探してみてほしいです。

『メモをとれば財産になる(日経ビジネス人文庫)』(ズンク・アーレンス著、二木夢子訳)。例えば、本の読みどころをメモしておくと、それがあなたの財産に
『メモをとれば財産になる(日経ビジネス人文庫)』(ズンク・アーレンス著、二木夢子訳)。例えば、本の読みどころをメモしておくと、それがあなたの財産に

赤木:今年1年を振り返ってみて、あまり結果を出せなかったな、周りと比べてうまくいっていないな、とヘコんだり、焦ったりしてしまう。そんな方に読んでいただきたいのが『 人生に、上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」(日経ビジネス人文庫) 』です。10万人を診た精神科医が、2500年の時を超える老子の言葉を使いながら、生きやすくなる考え方を教えてくれます。生きづらさの大半は、周りと比較したり、完璧な理想像を追い求めたりしてしまうことにある。そんな判断から自由になり、流れに任せて生きる「ジャッジフリー」の世界に至るための35の思考法を紹介します。日々のモヤモヤが晴れて、ちょっと心を軽くしてくれる本です。

常陸:「自分は損ばかりしている」とか「あの人は楽しそうでいいな」とか、2500年前を生きた人たちも同じようなことでモヤモヤしていたと思うと面白いですよね。読売新聞「人生案内」の回答者を17年も務めた医師の著者が書いた一冊なので、悩みがリアルで「あるある」と思いながら読めます。連載「焦りや不安がどうでもよくなる『老子の言葉』」も好評でした。

『人生に、上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」(日経ビジネス人文庫)』(野村総一郎著)。慌ただしい日々に、気持ちが疲れぎみのあなたに
『人生に、上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」(日経ビジネス人文庫)』(野村総一郎著)。慌ただしい日々に、気持ちが疲れぎみのあなたに

いまどきの教養を、文庫で身につける

赤木:世界中から注目を集める天才、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツ。彼らの独創の源泉には、豊富な読書体験があります。天才3人に直接取材した記者が、彼らの思考のベースとなった本を紹介するのが『 天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊(日経ビジネス人文庫) 』です。イノベーション、歴史、SF、科学、未来予測、テクノロジー、生き方など多岐にわたる名著のエッセンスをまとめた、まさに「21世紀の教養書」と呼べる一冊になっています。この本を読んで興味をもったら、ぜひそれぞれの原典にあたって、読み通していただければと思います。

常陸:「『一冊入魂』著者が語る」では「古典だけでなく、教養のアップデートに役立つ最先端の本も100冊に取り上げた」と振り返っていたので、関心のあるジャンルから読み始めることができそうですね。天才3人の足跡を振り返るにもよい一冊です。

『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊(日経ビジネス人文庫)』(山崎良兵著)。ビジネス界の巨人たちはどんな本と向き合い、自らの血肉としてきたのか
『天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊(日経ビジネス人文庫)』(山崎良兵著)。ビジネス界の巨人たちはどんな本と向き合い、自らの血肉としてきたのか

赤木:ロシアのウクライナ侵略からもうすぐ3年、中東情勢も緊迫感を増し、国際情勢や軍事用語を目にする機会も増えました。『 教養としてのインテリジェンス エピソードで学ぶ諜報の世界史(日経ビジネス人文庫) 』では、外交や安全保障の陰で暗躍してきた情報機関の秘密やスパイの歴史といったエピソードを数多く紹介します。徹底的に存在を秘匿されてきた英国の情報組織、あえて毒物を使って暗殺の証拠を残すロシア工作員の思惑、驚くべきイスラエルのモサドの秘密工作、日露戦争の情報戦を担った明石元二郎の活躍など、映画「007」や「ミッション・インポッシブル」とは違った、本物の情報戦の舞台裏が描かれます。

常陸:この本では表になかなか出てこない秘密情報活動の実態を学べるところにワクワクしますね。抜粋連載「歴史に学ぶ『教養としてのインテリジェンス』」もたくさんの読者に読まれました。

『教養としてのインテリジェンス エピソードで学ぶ諜報の世界史(日経ビジネス人文庫)』(小谷賢著)。あのとき、裏側ではこんなことが…。ページをめくる手が止まりません
『教養としてのインテリジェンス エピソードで学ぶ諜報の世界史(日経ビジネス人文庫)』(小谷賢著)。あのとき、裏側ではこんなことが…。ページをめくる手が止まりません

赤木:今年ベストセラーになった『 ユニクロ 』の著者である日経の杉本貴司記者によるノンフィクションを文庫化したのが『 孫正義 300年王国への野望(上・下)(日経ビジネス人文庫) 』。柳井正氏とならぶカリスマ経営者である孫正義氏と、彼が「ストリートファイター」と呼ぶソフトバンクの同志たちによる冒険譚です。AI時代を先取りした巨額買収。後継者との別れ。規制への挑戦。裏切り、内部分裂、絶望と希望。さまざまなドラマを圧倒的な筆力で読ませます。たった45分間の会談でサウジアラビアの副皇太子から450億ドルを引き出し、ビジョン・ファンドにつなげた話など、これまで報じられなかった情報もたくさん入っています。ページ数は多いですが、読み始めたら止まらなくなるビジネスエンタメの傑作です。

常陸:45分間で450億ドル調達とは、びっくりです!「はじめに:『孫正義 300年王国への野望(上)(下)』」でも杉本記者の文体に一気に引き込まれます。2017年初版ということですが、文庫化する本には長く愛される理由がありますね。

『孫正義 300年王国への野望(上・下)(日経ビジネス人文庫)』(杉本貴司著)。丹念に深掘りされたノンフィクション。ベストセラー『ユニクロ』も合わせてどうぞ
『孫正義 300年王国への野望(上・下)(日経ビジネス人文庫)』(杉本貴司著)。丹念に深掘りされたノンフィクション。ベストセラー『ユニクロ』も合わせてどうぞ

年末年始、ビジネスセンスを磨くための解説書

赤木:ここまで文庫をメインに取り上げてきましたが、続いてビジネスセンスを磨くための本をご紹介していきましょう。

 長い間、日本はデフレだといわれ続けていたのに、ここ数年、いろいろな物の値段が上がって驚いている方も多いことでしょう。なぜ、デフレはあんなにも長く続いたのか。インフレはどうなるのか。そもそも、物価とは何なのか。こんな疑問に答えてくれるのが『 物価を考える デフレの謎、インフレの謎 』です。ベストセラーとなった『物価とは何か』(講談社選書メチエ)の著者である渡辺努教授が、データにもとづいて明快に解説してくれます。これからの日本の将来を見通す上でも、物価は重要なキーワードになります。まずは本書でそのメカニズムについて理解しておくとよいのではないでしょうか。なお、本書では2021年に刊行した『 安いニッポン 「価格」が示す停滞(日経プレミアシリーズ) 』の話も登場します。この機会にぜひ合わせて読んでみてください。

常陸:『物価を考える デフレの謎、インフレの謎』は400ページのボリュームなので、年末年始の時間のあるときにこそ挑戦したいですね。入り口として「まえがき」のリンクをどうぞ。『安いニッポン』はその半分ほどで気楽に手に取れそうです。抜粋連載もよく読まれました。

『物価を考える デフレの謎、インフレの謎』(渡辺努著)。物価を切り口に経済の大転換を読み解く、圧巻の400ページです
『物価を考える デフレの謎、インフレの謎』(渡辺努著)。物価を切り口に経済の大転換を読み解く、圧巻の400ページです

赤木:人気の経営学者、楠木建さんは、世の中をどう見て、どのように考えをめぐらせているのか。これまで各所で書きためてきた文章をまとめたのが『 楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考 』『 楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記 』です。

 「戦略と経営についての論考」は、ワークマンやアイリスオーヤマといった独自の強みを確立している企業の分析や、「日本はダメだ」論への疑問、GAFAへの向き合い方など、さまざまなトピックから持続的な競争優位について考察します。「仕事と生活についての雑記」は、クルマや音楽といった趣味の話から時事ネタ、日々の仕事で気づいたことなどを軽妙に扱いながら、さすがの視点と語り口で世の中を切り取っていきます。2冊あわせると700ページの大部となりますが、どこから読んでも気づきが得られる、ユニークな構成になっています。

『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』と『楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記』(楠木建著)。どちらから読んでも、どこから読んでも、きっといろいろな気づきが
『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』と『楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記』(楠木建著)。どちらから読んでも、どこから読んでも、きっといろいろな気づきが

常陸:「楠木建 社会人1年目が意識すべき3つのこと」と「楠木建 やる気があって優秀な人がハマる落とし穴」の視点もそうですが、若手からベテランまでハッとする要素が満載ですよね。

赤木:ほぼ毎日お世話になっているコンビニ。もはや生活の重要インフラといっても過言ではないでしょう。そんなコンビニはどのように生まれ、進化して、いまの姿になったのか。日経MJの元編集長が解説するのが『 コンビニ全史 日本のライフスタイルを変えた50年の物語 』です。セブンイレブン1号店から50年。ATMもあるし、公共料金の支払いもチケットも買える。24時間365日営業で、困ったときにはトイレも貸してもらえる。もちろん、食品を中心に、ひととおりの買い物もできる。そこにはさまざまな「あくなき挑戦と失敗と、改善の歴史」がありました。年表付き、オールカラーで写真もたくさん入った本書で、その半世紀に思いをはせてみるのもいいのではないでしょうか。

『コンビニ全史 日本のライフスタイルを変えた50年の物語』(中村直文著)。新たな業態が人々の生活に浸透する道のりは挑戦の連続。たくさんのカラー写真とともに振り返ります
『コンビニ全史 日本のライフスタイルを変えた50年の物語』(中村直文著)。新たな業態が人々の生活に浸透する道のりは挑戦の連続。たくさんのカラー写真とともに振り返ります

 ところで、実はコンビニの第1号はセブンイレブンじゃないんですよ。答えは本書で確認してみてください。

常陸: 私も本書を読むまでは、第1号はセブンイレブンだと思っていました。答えを探しながらページをめくると読書が進みそうですね。最後になりましたが、2025年も読み応えのある本をたくさんご紹介できればと思います。それではみなさま、良いお年をお迎えください!

年末年始のお供に、どうぞ。2025年も面白い本をお届けできるよう精進してまいります
年末年始のお供に、どうぞ。2025年も面白い本をお届けできるよう精進してまいります

写真=長野洋子 構成=坂巻正伸 (日経BOOKプラス 手前みそ班)