光電融合を学びたいという読者に向けて、産業技術総合研究所 光電融合研究センターの高磊上級主任研究員が良書を推薦する2回目です。今回は、光電融合の基盤となる光学と半導体についてさらに理解が深まる書籍とともに、光電融合の概要が理解できる書籍を紹介します。
50年以上、参照し続けられている光学の名著
前回、光電融合とは、電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術のことを指し、それを学ぶためには半導体技術と光デバイス技術の両方が必要であると書きました。そのため、初心者向けに光学と半導体の概要が分かる書籍を推薦しました。今回の中級者向けでも2つの分野に分け、それぞれの分野でさらに突っ込んだ知識が習得できる書籍をまずは紹介します。
光学分野の良書として推薦するのが、『原書6版 ヤリーヴ-イェー 光エレクトロニクス 基礎編』(Amnon Yariv、Pochi Yeh 著、多田邦雄、神谷武志 監翻/丸善/2010年8月刊)および『原書6版 ヤリーヴ-イェー 光エレクトロニクス 展開編』(多田邦雄、神谷武志 監訳/丸善/2014年9月刊)の2冊です。著者の一人であるアムノン・ヤリーヴ氏は、カリフォルニア工科大学で先生を務めていたこの分野では著名な方です。本国において初版が出版されたのが1971年。以来、何度か改変を重ねながら50年以上販売され続けているベストセラーです。
基礎編においては、光の根源を成す電磁波や共振器、レーザー、光ファイバーなどの基本から、光と相互作用する半導体や誘電体材料の話題が、物理的な視点から丁寧に解説されています。光電融合においては半導体レーザーにより光を生み出すことが求められるため、半導体の光学物性やレーザー発振に至るまでの一連の流れを同書籍で学ぶことは非常に重要です。
展開編においては、光を操作するということに重点が置かれ、より実践的・応用的側面を意識した光デバイスについて説明されています。光通信に欠かせない技術として、光ファイバー中の偏光状態や分散効果といった重要な概念を取り上げるとともに、数百~数千キロメートルに及ぶ長距離伝送を実現するための光増幅器や光検出器、雑音の影響、さらには信号が劣化する非線形光学効果についても詳しく説明されています。この2冊は、必要に応じて模式図や数式、比較表なども用いて解説をしており、技術者の方でも応用が可能な書籍といえるでしょう。
半導体デバイスの動作原理や構造について数式を用いて解説
一方、中級者向けに半導体技術を学ぶためにお薦めするのが、『半導体デバイス: 基礎理論とプロセス技術 第2版』(S.M. Sze 著、南日康夫、川辺光央、長谷川文夫 翻訳/産業図書/2004年3月刊)です。こちらの書籍も原書は英文で書かれており、日本で発売されているものは第2版ですが、本国では頻繁に改訂されています。初版は1969年ですから、やはり50年以上の歴史があることになります。
前回、初級者向けに紹介した2冊の本との最大の違いは、数式やグラフを多く用いていることです。半導体によるトランジスタの動作を理解するうえでは、やはり数式やグラフは欠かせません。電圧のかけ方で電流はどのように変化するのか、不純物イオンを打ち込んだときにキャリア密度がどのように変わるのかなど、パラメータ同士がどのように関与するかを理解することは半導体技術を学ぶためには必須です。同書では、半導体材料の実サンプルデータなどを使用しながら、各種パラメータに関する解説がされており、重要な数式に対応した概要図やグラフを多用しているので頭の中で各現象をイメージしやすくなっています。また、光電融合に欠かせない加工プロセスや集積回路技術についても物理的な背景に沿って書かれており、本分野の技術者から大きな信頼を得ている書籍です。
私は、学部生時代に応用物理学を学んでいましたが、同書籍を電子工学の授業で推薦されたことをきっかけに購入しました。いまだに研究を進める際に参照することもあるため、半導体技術を本格的に学ぼうとする際には、非常に役立つものだと思います。
基盤技術の応用から最先端の応用事例までを網羅
これまでは、光エレクトロニクス技術と半導体技術に分け、書籍を紹介してきましたが、中級者向けに最後にお薦めするのは、光電融合に関して正面から紹介した書籍である『Optronics Edge 光電融合』(オプトロニクス社編集部 著/オプトロニクス社/2025年11月刊)です。本書籍においては最新の光技術を中心として、基盤技術の解説から最先端の応用事例、さらには将来展望までを体系的に解説しています。
本書籍は、光電融合の分野で活躍する学術界・産業界の専門家が、各パートを担当する形で執筆を行っています。シリコンフォトニクスと呼ばれる光集積回路技術やCo-Packaged Optics技術による応用展開に加えて、多くの分量を割いて紹介しているのが、NTTグループの次世代ネットワーク構想である「IOWN(アイオン、Innovative Optical and Wireless Network)」についてです。IOWN構想は、光技術を軸に据えて通信と計算基盤を刷新することを目指すNTTの長期的な戦略ビジョンです。光電融合デバイスは、その実現を支える中核技術の一つであるため、日本企業が有する関連技術基盤の開発が米国や台湾をはじめとして、各方面から期待されています。同書籍を通してその要素や背景を知ることは、今後のビジネスを考えるうえで参考になると予測できます。
また、巻末には私の所属する産業技術総合研究所 光電融合研究センターのセンター長である天野建さんへのインタビュー記事が掲載されています。光電融合研究センターは、光電融合の近年の広がりを受け、昨年4月に新設されました。その研究の責任者を務めている天野さんが、我々の組織の成り立ちや日本の立ち位置などについて語っていますので、ぜひ、目を通していただけると幸いです。
今回は、光電融合を学ぶ書籍を、中級者向けに4冊紹介しました。次回は、光電融合の最終回として、私が最も影響を受けた書籍を紹介します。
産業技術総合研究所 光電融合研究センター 上級主任研究員
(取材・構成:木村 知史=CocoSmile 編集者)




