将来重要になるテクノロジーの多くはIT部門にとって縁遠い。とはいえ良くも悪くもブームのAI(人工知能)には関与すべきだ。技術にどう関わるか、IT部門の姿勢と能力を見直すことが急がれる。
2030年に重要となるテクノロジーの第1位は「光量子コンピューター」、第2位は「全固体電池」、第3位は「核融合」。日経BP 総合研究所が実施した『5年後の未来に関する調査【世界を変革する有望技術(2025年)】』の結果である。この調査では回答者のビジネスパーソンに2030年だけではなく今(2025年)重要なテクノロジーも挙げてもらった。2030年と2025年の双方について上位15件のテクノロジーを表にまとめた。見比べると2025年から2030年に向かって、どのようなテクノロジーが期待されているかが分かる。
調査の対象にしたテクノロジーは日経BPの技術系メディアの編集長や日経BP総合研究所のラボ所長らが未来をつくる可能性があるとして選んだ100件である。100件についてビジネスパーソンに「重要性が高いものはどれか」と問い、480人から回答を得てランキングを作成した。テクノロジー100件の解説と30位までのランキング結果は2025年9月22日に発行した書籍『 日経テクノロジー展望2026 未来をつくる100の技術 』(日経BP編、日経BP)に掲載されている。
将来の重要技術からIT部門は遠い
15位までをながめるとエネルギー関連の技術が5点と多く、次いでロボットや自動運転など自動化技術が3件、ディープフェイク対策も含めAI関連が3件、それぞれ入っている。このように15位までのテクノロジーは組織の情報システム部(IT部門)からすると直接関わるものではない。AIはITではあるが、製造業であれば製品に、流通業であれば店舗あるいは物流工程に、それぞれAIをどう使うかを検討するわけで、当事者は事業部門になる。
とはいえ情報システム部門あるいはIT部門は組織名にシステムやテクノロジーが付いており、技術に関係する部門であり、ITはもちろん、IT以外のテクノロジーにも関心を持っていたほうがよい。
この点について実は本欄でたびたび指摘してきた。例えば7年近く前の2018年11月8日号に『有望テクノロジーから遠いシステム部門は役割の確認を』と題し、「期待度の高いテクノロジーの大半が情報システム部門にとって縁遠いと分かる。(中略)今日の情報システム部門が普段使うテクノロジーの大半は多くのビジネスパーソンが注目し、期待する技術ではなくなっている」と書き、「情報システム部門の責任者は自部門の役割や運営方針を再考する必要がある」と述べた。
進む道はいくつかある
そしてシステム部門がとる道をいくつか提案した。再掲しつつ7年間で変わったことを付け加える。
業務改善の手法を身につけ、社内ビジネスコンサルティング部門を目指す 手法は何でもよい。ビジネスアーキテクトが重要という指針を経済産業省が出したのでそれを目指してもよい。何もないところから人を育てると時間がかかる。手法を身に付けた社外の人と一緒にプロジェクトを実施し、勉強させてもらう。
自身をデータマネジメント部門と再定義し、企業内の様々なデータの収集や維持、品質管理を担う 同じく経産省がデータマネジメントの重要性を指摘し、「データマネジャー」の国家試験を用意すると言っている。この人材は実際には事業部門にいる人を想定しているのだが、IT部門がテクニカルデータマネジメントを担ってデータマネジャーを支援する必要がある。AIを使うカギはデータであり、この役割は重要だ。
テクノロジー部門として力を付けていく 7年前の本欄では「AIやIoTの利用を支援する内製部門への転進を視野に入れ、システム子会社の増員、ソフト開発会社の買収といった手を打つ」と書いた。かなりの投資が必要でこの道を進める企業は多くはないが、手を打っている企業は出ている。人数を増やせなくてもやりようはある。ブームかもしれないが経営者がこれだけAIに注目している今、IT部門が率先して使い、何らかの成果を出す。仮に失敗したとしても教訓を残せば成果である。
事務計算の部門と割り切り、枯れたテクノロジーを使う コスト削減の圧力や現状の人員などを考えるとこれはこれで一つの道であるが若い人が加わりたい部門ではなくなる。
[日経コンピュータ2025年10月16日号の記事『IT部門は技術にどう関わる 早急に方針を決めよう』を改題して転載]
日経BP編、日経BP、2750円(税込み)


