内容紹介

「本書のブランド論は、多くの実践経験に裏付けられていると同時に、データの実証にも基礎付けられた科学的なものでもあります。マーケティングの実務家がブランドを学ぶ上で、本書が参照されることを期待しています」

中央大学名誉教授/日本マーケティング学会 元会長 田中 洋氏


・ブランディングすれば売り上げが上がる
・広告賞を受賞するような先進的な広告をつくれば顧客が増える
・有名タレントを広告に起用すればブランド力が上がる
・アップルのようなデザインで統一すれば物が売れる
・テレビCMを大量投下すれば「ブランド」をつくれる
・ブランディングは莫大な投資がかかるため中小企業にはできない


これらは全て「ブランディング」にまつわる誤解です。

著者もこうした「ブランディングの誤解」に振り回され、ブランディングで数多くの失敗を経験したと言います。

ブランディング」という言葉ほど、多くの誤解をはらんでいるマーケティング用語はありません。

最大の誤解は「ブランディングをすれば売り上げが上がったり、業績が回復したりする」という過剰な期待にあります。ブランディングの成功例として必ず挙げられ、広告業界で伝説的と称される米アップルの「1984」や「Think different.」ですら、業績への影響はほとんどなかったことをご存じでしょうか。

そうした過剰な期待を抱きながら、ブランディングの成果を業績と直結する指標できちんと効果分析されているケースは非常に少ないのが現状です。

ブランディングが、事業成長のために行うマーケティング活動の一つであるならば、当然ブランディングの成功は、事業成果に反映されるべきです。「ブランドが強い」「ブランディング投資をした」と話す一方で、売り上げや利益につながらないという事態は本来あってはならないはずです。

にもかかわらず、ブランディングの領域は依然として評価が難しいとされ、まるで芸術分野のように扱われ、ビジネスへの直接貢献の議論が許されない聖域になりがちです。

ブランディングは効果測定ができない

これも、大きな誤解の1つです。

筆者もプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に所属していた20代のころに、「ブランディングの誤解」による数多くの失敗を経験しました。

ブランディングの測定指標にも悩みました。一般的にブランディングの指標としては認知度、好感度、NPS(ネット・プロモーター・スコア)などがよく使われます。ただ、これらの数値が高くなっても、必ずしも事業がうまくいくわけではありませんでした。ずっと「ビジネスの今後を予測できるような先行指標がほしい」と考えていました。

そうした、筆者が経験してきた数多くの失敗と成功の末に導き出した、「実務で使えるブランド論」や「ブランディングの測定指標」を分かりやすく説明し、すべてのマーケターが明日から使える知識として身に付けられるようにまとめたいと考えました。

本署の執筆に関連して、「ブランディング」に関する文献や記事を日本語と英語で調査したところ、158に及ぶ「ブランディング」や「ブランド」という言葉の付いた概念が、確認できました(2024年10月時点)。

それら全て一つ一つ筆者自身で確認しましたが、そもそもブランディングと呼ぶ必要の
ない概念や、マーケティングの支援会社がクライアントに追加投資を促すためにつくった
営業概念でしかないもの、同じ概念でも数多くの誤解が含まれていることが分かりました。

確実に言えるのは、これらの158の概念の学習から始めると、ブランディングはます
ます「きらびやかな未来をつくるふわっとした何か」という誤解が広がります。そのまま
ビジネスに活用すると確実に無駄な投資や活動につながります。

では、「ブランディング」は不要なのか?

そうではありません。ブランディングの誤解と罠を避け、明確なビジネス目的を設定して進めれば、大企業から中小企業まで、企業規模を問わず大きなビジネス効果を期待できるのです。

それを実現するには、ブランディングに関する概念を順番に学ぶことではなく、実務にとって、有効なブランディングとは何かを学ぶことが出発点です。

本書では、既存のブランディング論やブランド論に関する解説は最小にし、数々の有名な巨大ブランドがつくり出す誤解や罠の解説を含めて、具体的な事例を用いて、ブランディングの効果を最大化するための考え方を紹介。どのように目的を設定すべきか、中小企業が目指すべきニッチブランドとは何かなど、誰もが実務活用できる「ブランディング」を解説します。

◆米アップルの「伝説的広告」は業績的には失敗だった
◆「究極にブランディングされた状態」とは
◆独自性を考える上で注意すべき「差別化」の誤解
◆ブランディングの「3つの目的」で目標を定める
◆ブランディングの投資を正しく判断する
◆たどりついたブランディングの新指標
◆100人に1人でも熱狂的なファンがいればブランドは成立する
◆BtoBも根本的なブランディングの構造は同様


◎プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)、ロクシタンジャポン、ロート製薬、スマートニュースなどでマーケターの要職を務めた筆者が、実務経験で積み上げてきた数々の成功と失敗を基に編み出した「実務家向けのブランディング論」

◎『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)……。累計10万部を超えるベストセラー著者が、35年を超えるマーケターとしてのキャリアの中で100を超えるブランドに直接関わって得た経験を余すことなく収録


【目次】
はじめに
第1章 「ブランディング」の誤解――原因と結果の履き違えはなぜ起きたか
第2章 顧客が買うのは「便益」と「独自性」――高級食パン店はなぜ閉店ラッシュに追い込まれたのか
第3章 「ブランドエクイティ」の誤解――購入に影響を与える要素を発見する方法
第4章 正しい「ブランディング」の実践法――3つの目的で目標を定めて実行に移す
第5章 「ブランディング測定指標」の誤解――事業成長と密接なブランディングの指標とは何か
第6章 「リブランディング」の誤解――コーラ、ファンケルの失敗に学ぶ、リブランディングの本質
第7章 「マーケティング」と「ブランディング」の関係――顧客起点の発想に立ち返る
第8章 小規模企業でもできるブランディング――あらゆる事業はニッチから始まる
特別対談:中央大学名誉教授/日本マーケティング学会 元会長:田中 洋氏 × Strategy Partners 代表取締役社長 兼
Wisdom Evolution Company 代表取締役社長:西口一希氏
おわりに