その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は庭山一郎さんの『 法人営業は新規を追うな 重要顧客と最高の関係を築くABM 』です。
【はじめに】
世界のエンタープライズBtoBは、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)一色です。それは圧倒的な成果を出せるマーケティング戦略だからです。
しかし、日本企業はこの戦略を使いこなせるナレッジを持っていません。最も成果を出せる条件が備わっているのに、それを生かすことができないのです。これが本書を書いた理由です。
私が2013年にABMの途方もなく素晴らしい未来に気づいてから、もう12年になろうとしています。それから3年間にわたりABMを研究・実践し、2016年には国内初のABM専門書『究極のBtoBマーケティングABM』(日経BP)を上梓しました。当時、世界でも3冊目のABMの専門書でした。
それから9年あまりたって、今や世界のエンタープライズBtoB企業が採用するマーケティング戦略はABM一色になりました。
私は長らくBtoBマーケティングに特化したコンサルティング業を営んでいます。1990年にシンフォニーマーケティングを設立して代表に就任し、数多くのBtoBマーケティング案件に携わってきました。累計では600社を超えるクライアントと一緒に仕事をしています。
その経験から、日本企業はABMに関して大きなアドバンテージを持っており、近い将来最も多くの成功事例を出すと確信しています。それはABMに欠かせないいくつかの重要な要素を既に保有しているからです。これについては第3章で詳しく説明します。
少し悲しい日本の現状
5年ほど前から日本でも、ABMという言葉を耳にする機会が増え、ABMに関連する相談や勉強会に呼ばれる機会も多くなりました。それは私にとってうれしい半面、複雑な気持ちにもなる瞬間です。
ABMはデマンドジェネレーションの進化形です。デマンドジェネレーションを担当するデマンドセンターとその運用ノウハウがなければ始められないし、始めてはいけないものです。
なぜならば、ABMのターゲットアカウントは多くの場合、既存顧客、つまり大口のお得意さまだからです。関係性を損なうと被害が甚大です。社内にステークホルダー(利害関係者)が多いので、その調整やリスク管理も大切な要素になります。マーケティングに使うコンテンツとして、非常にレベルの高い専門性を尖らせたものが必要になります。そのコンテンツを重要顧客のターゲット部署に送って反応をトレースする、というとてもレベルの高いナレッジが求められます。
しかしご相談いただく企業には、マーケティングの部署も、ナレッジを持った人も組織もないことが少なくありません。そもそもABMをマーケティングキャンペーンくらいに考えている場合すらあります。これではABMを始められないし、始めたら成果を出すより先に事故を起こすでしょう。
ABMの経験を踏まえて本書を執筆
ABMはすでに効果を疑う必要がないほどに検証され、世界中に成功事例が多い強力なマーケティング戦略です。ただし成果を出すには、正しいナレッジを持った組織が絶対に必要です。世界を見ればABM関連の書籍は数え切れないほど出版されていますが、ほぼ日本語版にはなっていません。日本人が日本語でABMを学ぶ機会は限定されています。
読者のみなさんがABMを正しく理解して導入し、企業を成長させられるように、新たなABMの本を書くことにしました。
2016年に1冊目のABMの本を書いてからの9年間で、世界のABMは大きな進化を遂げ、私の会社シンフォニーマーケティングも多くの経験を積んでいます。大成功したプロジェクトもあれば、成果が期待を超えなかったものもあり、途中で消滅してしまったプロジェクトもあります。それらの経験を踏まえて、これからABMに取り組む企業にとっての正しい道しるべを書くべきだと考えたのです。
ABM導入に必要なナレッジとプロセスを解説
ABMの導入にはナレッジとプロセスの両方が必要です。そこで本書は「ナレッジ編」とプロセスを解説する「実践編」の2部構成にしました。ここでは、第1部と第2部それぞれの内容について簡単に紹介します。
まずは第1部のナレッジ編からです。ABMはとても強力なマーケティング戦略ですが、その分正しく理解しないで始めると成果が出ないばかりか、思わぬ落とし穴に驚くことになります。
確実に成果を出すために必要なナレッジとして、第1章で世界のABMの状況を、第2章ではABMの定義と正しい理解、その応用範囲などを解説します。第3章では、なぜ日本のエンタープライズ企業は世界のどの国よりもABMで成功できる条件を持っているのかについて、根拠を示して詳しく書いています。
第2部は実践編です。導入のプロセスを4つのフェーズに分けて解説します。
第4章はフェーズ1として、ABMを始める前の「事前準備」を解説します。チェックリストに沿って充足度を確認し、必要条件をそろえていく方法です。チェックリストの各項目は成功の必要条件です。これによってABMをスタートできる時期が分かります。すべてクリアになる前にスタートすれば、暗礁に乗り上げてしまうでしょう。
第5章はフェーズ2「戦略立案」です。ABMの種別の選択、ターゲットアカウントの選定などを具体的に解説します。
第6章ではフェーズ3「組織編成」として、整えるべき組織とナレッジ、そして社内での情報共有レベルについて説明します。ABMは全社戦略です。関係者の理解度を深める努力と、その確認には万全を期さなくてはなりません。その理由と方法を書きました。
第7章はフェーズ4「実行・評価」です。ABMを実行したら、必ずといっていいほど起こる事象や問題があります。想定外の問題が起きたときの対処も重要です。ターゲットアカウントは既存の大口顧客です。万が一にも失うことがあってはいけないのです。ABMはお金もリソースも時間もかかる大規模な戦略的マーケティングです。効果測定ができなければ、投資を継続することは難しいでしょう。その指標を具体的に書いています。
本書を最後まで読めば、あなたはABMの正しい知識を持って準備を進められます。何をチェックし、補い、それがどこまで整ったらスタートできるのかが分かっている状態です。
さあ、この本をガイドにABMの旅に出かけましょう。
2025年1月吉日 庭山一郎
【目次】






