消費税の減税政策が議論されているが、その使い道を詳しく説明するのは案外難しい。国民の多くは消費税の増税を国の財政当局の政策と認識しており、反発は財政当局に集中する。実際のところ、消費者が支払った消費税の4割近くは地方自治体の収入に充てられている。この錯覚が地方自治体の歳出の増大につながっている。『人口半減ショック 地域の新戦略 賢く縮み乗り越える』(田中秀明編著)から抜粋・再構成してお届けする。

消費税の約4割が地方自治体の収入に

 地方消費税は、1997年に導入されたが、これは消費税導入の際に創設された消費譲与税を置き換えたもので、消費税(国税)と地方消費税を合わせた5%の税率のうち、1%分が地方消費税分であった。その後、消費税(国税)と地方消費税を合わせた税率(ここでは仮に「合計消費税率」と呼ぶ)が8%、さらに10%(標準税率)と引き上げられた際に、地方消費税の税率も1.7%、さらに2.2%に引き上げられた。国税の消費税も、その一定割合は、地方交付税に充てられる。

 合計消費税率が5%→8%→10%(標準税率)の期間に、消費税の交付税率も改正されてきたが、合計消費税率のうち、交付税額が何%に当たるかを計算すると、1.18%→1.40%→1.52%となる(*1)。したがって、地方消費税と地方交付税分を合計した額は、合計消費税率のうち、2.18%→3.10%→3.72%と大きく増加していることになる。現在、消費者が消費税の標準税率の対象品を購入した際に、10%の税金を払うが、実はそのうち、4割近くは、地方自治体の歳入となっているわけである。

 地方消費税および消費税の地方交付税分は、地方財政にとって非常に重要な財源となっているが、地方消費税の改正も基本的には消費税(国税)の導入や税率引き上げに伴う改正であり、地方消費税のみの増税ではなかった。このため、国民も、消費税増税を国の財政当局の政策と認識しており、国民の反発も国の財政当局に集中した。

 実際、店頭で10%の税率を支払う国民は、そのうち3.72%分が地方財政に充当されていることを認識している消費者は少ないと思われる。国民が地方自治体のための増税だと認識していなければ、自治体が限界的財政責任(編集注:少なくとも地方公共財の限界的な供給増加につき、地方の住民が自らに対する税負担増をもって賄わなければならないということ)を負っていることにはならない。

消費税への誤解が地方の歳出を増やす

 税制改正当時、地方自治体の首長も消費税増税の必要性に言及してはいたが、岡本(*2, p.163)が強調したような「地方団体が結束して、地方税増税を訴え、国会を動かさねばならないし、住民の理解を得るべく、地方団体が相当の努力をする」状態ではなかった。こうした状況は、地方交付税等のもたらす「財政錯覚」と呼ぶことができよう。

 ブキャナンの強調した本来の財政錯覚とは、赤字国債で資金調達した歳出につき一般の国民が後の税負担が伴うことを認識しないことだが、地方交付税等の財政錯覚では、交付税分に対応する税負担につき、国の歳出に用いられると誤解することで、地方自治体の歳出の真のコストを低く認識してしまう。こうした交付税の財政錯覚により、地方自治体の過大で非効率な歳出について、住民による歯止めがかからなくなる。

増税政策では財政当局が批判されがち(写真:smile/stock.adobe.com)
増税政策では財政当局が批判されがち(写真:smile/stock.adobe.com)
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 さらに、現在の国と地方の財政状況の違いに鑑みれば、直近の消費税増税に伴う国と地方の税源の配分が適当であったかという疑問も生じる。仮に、地方交付税に占める消費税(国税)の交付税率が、19.5%ではなく、10%まで引き下げられていれば、地方消費税と地方交付税分を合計した消費税換算の税率が、現行の3.72%でなく、2.98%となる。2022年度決算で消費税(国税)と地方消費税の税収合計が23.1兆円なので、3.72%と2.98%の差に相当する4兆円程度が、国の歳入に新たにもたらされ、その結果、地方のPB(プライマリーバランス)の名目GDP比率は、0.5%という十分な黒字を維持しつつ、国のPBの名目GDP比率は、4.7%の赤字が4.0%まで圧縮されていただろう(*3)。

 このように、日本の過去の地方税の基幹税の増税においては、住民の理解を得るべく、地方自治体が相当の努力を行って、自主的に増税を実現したというよりは、国が前面に立って税制改革を進める際に、付随的に増税がなされることが多かった。こうした地方税増税は、限界的に財政責任を住民に求めるものでなく、地方自治体による非効率的な地方公共財の提供につながり得る。

*1 交付税の(消費税額に対する)法定率自体は、29.5%→22.3%→19.5%と低下しているが、消費税率自体が倍増しているので、交付税法定率×消費税率に等しい「交付税額が合計消費税率の何%に当たるかに換算した率」は増加することになる。
*2 岡本全勝(2002)『地方財政改革論議 地方交付税の将来像』ぎょうせい
*3 2022年度は、コロナ禍の影響が残り、国から地方へ過度な財政移転が行われていたため、国のPB赤字および地方のPB黒字が特に過大だったと考えられるが、コロナ禍後においても、地方PBは黒字が続いている。
地方創生の効果もむなしく、今後30年間で地方の人口は半減すると予想される。現実的な対応を取らなければ、行政サービスの安定供給すら危うい。経済学、財政学、政治学などの多面的な視点から真の改革案を提示する。

田中秀明編著/日本経済新聞出版/3630円(税込み)