エンジニアリングマネジャーとして成長し、活躍し続けるための秘訣を解き明かした『 エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか 』。著者のウィル・ラーソン氏は前作『 スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ 』でソフトウエア開発者の新たなキャリアパスのあり方を示して大きな反響を呼びました。本書はファン待望の新刊です。その読みどころと生かし方について、本書の翻訳を手掛けた岩瀬義昌氏の「訳者あとがき」をご紹介します。

【訳者あとがき】

 本書は、ウィル・ラーソン氏による最初の本『An Elegant Puzzle :Systems of Engineering Management』(Stripe Press)の邦訳です。同書は、世界中で広く参考にされており、米アマゾンでは1100以上のレビューおよび4.5という高い評価(2024年4月現在)を獲得しています。日本では、同氏による2冊目の本が『スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ』(日経BP)として先に翻訳・出版されており、こちらも日本のアマゾンで4.3という高い評価(同)を得ています。

 本書『エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか』の稀有な点は、米Uberや米Stripeといった名立たる企業の急成長期に行われていたエンジニアリングマネジメントの実践知が共有されていることです。日本のソフトウェアエンジニアリング業界に身を置いていると、海外のユニコーン企業のノウハウを豊富に獲得できるわけではありません。そうしたなかで本書は、組織設計(ハード)から文化(ソフト)、採用や業績管理といった業務プロセスまで、さまざまな切り口からの貴重な知見を惜しむことなく紹介しています。

 読者のなかには、もしかしたら、「自分が所属している日本企業とは環境が違うので、ユニコーン企業のノウハウを共有されても参考にならない」と思われている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、私の経験から述べさせていただくと、「確実に参考になるし、実務で応用できる」と断言します。と言うのも私は、いわゆる日本型企業とスタートアップ企業の両方に関与しており、いずれのエンジニアリング組織においても、本書のノウハウをフルに活用できているからです。

 たとえば、分かりやすい例に目標設定があります。おそらく、ほとんどの企業で目標設定はプロセスとして組み込まれていることでしょう。目標設定の内容は会社ごとに異なりますが、大企業であってもスタートアップであっても、何らかの形でプロセスとして仕組み化していると思います。どの組織にも不可欠といえる目標設定ですが、「チームや組織が成長するために効果的な目標設定の作り方」について問われると、悩まれる方も多いのではないでしょうか。目標設定は、上手に活用できれば非常にパワフルなツールになります。効果的な作り方を理解できれば、チームとして、あるいはより大きな組織としてのパフォーマンスが高まります。具体的な方法は本文に譲りますが、すぐに応用できる知見が実在するのです。

 身近なところでは、勉強会があります。「勉強会を開催してみた、あるいは参加してみたものの、大して議論が盛り上がらなかった」といった経験はありませんか? そうであれば本書に記載されている勉強会の開催方法がとても有用です。私にも社内外で勉強会を多く開催してきた経験があり、うまくいかなかったこともたくさんあります。そうしたなか数年かけて最終的に行き着いたベストプラクティスが、本書と全く同じ内容であったことに大変驚きました。

 このような体験から、たとえユニコーン企業の急成長期の知見であっても、日本の企業(成長期でなかったとしても)で確実に役立つと断言できるのです。

 ただし、本書の内容をやみくもに信頼して、そっくりそのまま使ったからといって、読者のチームや組織で100%うまくいくわけではありません。人の集まりで構成されるチームや組織に、完全に同じものは存在しないからです。チームや組織ごとに適切なアプローチは異なります。そのため、自らを取り巻く文脈に合わせてアプローチを適宜修正して、検査と適応を繰り返す必要があります。本書は、エンジニアリングマネジメントの課題と解決法を数多く紹介しています。そのため、スタート地点として大いに役立つでしょう。

 本書を通じて、読者の皆様のエンジニアリングマネジメントがより洗練されたものとなり、強靭なチームや組織が増えることを願っています。ひいては、日本からすばらしいプロダクトが生まれることに少しでも貢献できれば幸いです。

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