企業が成長し続けるために事業のポートフォリオを見直し、変化させていくのと同様、読書もまたキャリアに応じて見直し、バランスを変えていく必要があるという三谷宏治さん。読書ポートフォリオ・マトリックスを基に、ビジネスパーソンはいつ、どんな本を読むべきか、社会人2~4年目の読書ポートフォリオとお薦め本を聞きました。
1回目
三谷宏治 読むべき本は「読書ポートフォリオ」で考える
2回目
三谷宏治 就活~社会人1年目の「読書ポートフォリオ」と読むべき本
から読む
社会人2年目、人と同じことを言う人間になっていた
私が、「人は読んだ本でできている」と気付いたのは、ボストン コンサルティング グループ(BCG)で社会人2年目のある日、職場で人と意見がかぶった経験からでした。第1回 三谷宏治 読むべき本は「読書ポートフォリオ」で考える でお話しした通り、内定を得て人事部から推薦図書が送られてきて以来、1年ちょっとの間にビジネス書やサラリーマン小説をそれこそ、百数十冊読みました。その結果、ふとした時に出てきたのは人と同じ発想、しかもごく凡庸な意見。人と同じことをしていたら、同じ思考や行動になってしまうのは当然です。
読書にも意識的な資源配分が必要だと気付いた私は、それまでビジネス系100%だった読書の比率を1対1にすることにしました。【ビジネス系】1に対し【非ビジネス】1です。子どもの頃から読み続け、私の個性をつくりだしていたSFや科学書など、好きな本を意識的に読むことにしたのです。やり方は単純で、本を買うときはビジネス系を1冊手にしたら、SFや科学書など好きな本も一緒に1冊買うことにしました。これなら忘れることもありません。
世の中が急激に大きく変化する時代には、新しいものを生み出す「発想力」が大切になってきます。限られた時間の中で、進化を続けるためには高密度の学びである「良い本」を読みこなすことが一番の近道。でも人と同じものばかりを読み続けるとつまらぬ人間になってしまう! 幅広いジャンルの本を読むことは、発想力を鍛えることにつながります。
そこで社会人2~4年目の戦略読書としてお薦めするのは、以下のポートフォリオです。量は年間100冊を維持。時間のかかる本も10~20冊は読みましょう。
セグメント配分は、【ビジネス系】と【非ビジネス】を1対1に。
【ビジネス系】では基礎は2~3冊にして応用を中心に。ビジネスモデルに関しての応用本を探すなら『 ビジネスモデル全史〔完全版〕 』(日経ビジネス人文庫)なんかを指南書として使ってもいいでしょう。ただ、お薦めとかに頼らず自分で選ぶ練習もしましょう。週に1回は書店か図書館の新刊コーナーに行って、自分自身でざっと目を通してみる。ピンとくれば読む、こなければパス。ビジネス誌も興味がある記事だけで構いません。自分の目で「取り入れるべき情報」を選ぶトレーニングを重ねましょう。
【非ビジネス】では、2つの目的を意識して本を読みます。1つはもともと持つ自分の強みを取り戻し、さらに強化することです。2つ目はそのままにしておくと狭まりがちな自分の視野を広げること。今、関わっているビジネスから離れた分野の学びを欠かしてはいけません。
【非ビジネス】に資源配分し強みを拡張する
社会人2~4年目、【非ビジネス・基礎】の分野で、私の個人的お薦めは、「SF・科学・歴史・プロフェッショナル」。食わず嫌いにならずに試してほしいです。
AI(人工知能)やロボットについての議論は、SFでは大昔から行われてきました。ハードSFの旗手ジェイムズ・P・ホーガンによって1979年に書かれた『未来の二つの顔』は、進化しすぎたAIとヒトが共存するための本質的問題と、その具体的な解決策が描かれています。SFは遠い未来を最も予見し、その答えを出し続けてきたジャンルなのです。
ただもう一つ、「近未来もの」と呼ばれるジャンルが最近盛んで、親近感がわく本が数多くあります。『 火星の人〔新版〕 』(アンディ・ウィアー著、ハヤカワ文庫SF、リンクは上巻)は、2035年の火星探索ミッションを舞台にしたサバイバルSFです。植物学者として探索に参加していた主人公のワトニー。火星に一人取り残され、残存食糧と助けが来るまでの日数を計算し、そのギャップに愕然(がくぜん)とします。それでも彼はめげません。火星での食糧増産に挑みます。研究用に持ち込んでいたジャガイモを種芋にし、水は酸素と水素を混ぜて作る、肥料は自身の排せつ物を使って…と孤軍奮闘します。考えて行動して、行き詰まったら寝る。前向きで行動力にあふれていて、ユーモアと楽天性こそが不撓(ふとう)不屈の精神を支えることを教えてくれる、とっても楽しいSFです。
アンディ・ウィアーの著作には他に『 アルテミス 』(ハヤカワ文庫SF、リンクは上巻)、『 プロジェクト・ヘイル・メアリー 』(早川書房、リンクは上巻)などがあります。
デビュー作である『火星の人』は、アンディ・ウィアーが個人サイトでWEB連載していたものが、あまりの人気にKindle版(当時99セント!)で発売され、最終的に紙の本が発売されました。
これと似た作家人生をたどっているのが藤井太洋です。セルフパブリッシングでKindle化した作品が評判となり書籍化されました『 オービタル・クラウド 』(ハヤカワ文庫、リンクは上巻)はスピード感がある面白い本、『 ハロー・ワールド 』(講談社文庫)はアニメにもなっています。その他、野崎まど、長谷敏司など、日本のSF作家の作品にも魅力的なものが数多くあります。
生命種の99.9%はすでに絶滅している!大絶滅の生命史
科学のジャンルでは、私が好きな生命史から「絶滅系」(笑)を紹介しましょう。『 大絶滅 』(平河出版社)は、生命の大絶滅(大量絶滅)を発見した、異端の古生物学者デイヴィッド・M・ラウプの著作。生命史に統計学をもたらした1冊です。過去5回の大絶滅の繰り返しの中で、地球に存在した生命種の99.9%はすでに絶滅しています。「絶滅」は、生命種の本質であることを教えてくれる本でもあります。
ヒトの絶滅では、『 絶滅の人類史 』(更科功著、NHK出版新書)がいいでしょう。人類と呼ばれるものがこれまでに25種見つかっていますが、なぜホモ・サピエンスは生き残り、同時期を生きていたネアンデルタール人は滅んだのでしょうか。人類史研究の最前線を知る本です。
もう1冊は、『 恐竜大絶滅 』(土屋健著、中公新書)。大絶滅の前には大繁栄があるわけで、ここではなぜ恐竜(だけ)が1.5億年以上を大繁栄できたのかなど、大絶滅前後を解き明かしています。恐竜たちは自らの弱点を克服するために巨大化し、巨大化したが故に環境変化に耐えられず大絶滅の憂き目に遭いました。企業は巨大な生物のようなものです。その生きざまはまさに生物の進化や絶滅に等しいでしょう。企業は勝ち残るためにこそ成長・巨大化し、それ故に硬直化してイノベーションに乗り遅れます。恐竜たちと同じなのです。
こうしたSFや科学書などから学べるのは、幅広い知識だけではありません。考え方や課題解決アプローチ、常識突破のパワーなどなど。フィクションでもノンフィクションでも、小説でもマンガでも構いません、自然や人の本質を描こうとしている本にぜひ手を広げてみてください。
この記事で取り上げた本
| 書名 | 著者 | 出版社・レーベル |
|---|---|---|
| ビジネスモデル全史〔完全版〕 | 三谷宏治 | 日経ビジネス人文庫 |
| 火星の人〔新版〕 | アンディ・ウィアー著、 小野田和子訳 |
ハヤカワ文庫SF |
| アルテミス | アンディ・ウィアー著、 小野田和子訳 |
ハヤカワ文庫SF |
| プロジェクト・ヘイル・メアリー | アンディ・ウィアー著、 小野田和子訳 |
早川書房 |
| オービタル・クラウド | 藤井太洋 | ハヤカワ文庫 |
| ハロー・ワールド | 藤井太洋 | 講談社文庫 |
| 大絶滅 | デイヴィッド・M・ラウプ | 平河出版社 |
| 絶滅の人類史 | 更科功 | NHK出版新書 |
| 恐竜大絶滅 | 土屋健 | 中公新書 |
取材・文/中城邦子、構成/市川史樹(日経BOOKプラス編集)、写真/鈴木愛子
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三谷宏治著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)
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三谷宏治著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)












